もちにお金を使う街と小麦粉を買う街は、まるで重ならなかった もち1位は福井市、小麦粉1位は長野市【家計調査】

もちにお金を使う街と小麦粉を買う街は、まるで重ならなかった もち1位は福井市、小麦粉1位は長野市【家計調査】

家計調査の穀類の欄には、米・パン・麺類のうしろに「他の穀類」という、ふだん誰も読まない区分があります。金額は全国平均で6,155円。穀類91,820円の6.7%しかありません。

ところがこの6,155円を小麦粉・もち・その他の3つに割って52市ぶん並べ直すと、はっきりした発見がありました。小麦粉をよく買う街ともちにお金を使う街は、ほとんど重ならないのです。金額どうしの相関係数は−0.04。プラスでもマイナスでもなく、無関係でした。

同じ「粉と餅」の棚にありながら、上位の顔ぶれは別々でした。小麦粉の1位は長野市の1,025円、もちの1位は福井市の3,057円。両方のTOP10に入った街は、52市のうち宇都宮市と岐阜市の2市だけです。

まず、「他の穀類」6,155円の中身

全国平均「他の穀類」に占める割合
他の穀類(計)6,155円100%
小麦粉651円10.6%
もち1,787円29.0%
他の穀類のその他3,717円60.4%

もっとも大きいのは小麦粉でもなく、もちでもなく、「その他」でした。6割です。公表資料ではこの区分がこれ以上細かく分かれていないため、何が入っているかはこの表からは特定できません。ここでは小麦粉ともち以外の穀類ぜんぶとして扱います。

ちなみに「他の穀類」が穀類全体に占める割合は、全国で6.7%。52市でいちばん高いのは大津市の8.0%で、宇都宮市・水戸市が7.8%、富山市・金沢市が7.6%、松江市が7.5%と続きます。どの街でも穀類の1割には届かない、小さな区分です。

もち代ランキング:1位は福井市の3,057円

順位市もち(金額)
1福井市3,057円
2富山市3,026円
3金沢市2,672円
4水戸市2,366円
5岐阜市2,278円
6新潟市2,212円
7大津市2,085円
8名古屋市2,025円
9宇都宮市2,007円
10東京都区部1,951円
11松江市1,948円
12奈良市1,894円

全国平均は1,787円なので、福井市は1.7倍です。TOP3が福井市・富山市・金沢市=北陸3市でそろい、そこに新潟市(6位)が続きます。

そして福井市には、52市でただ1市だけの特徴があります。「他の穀類」のうち46.3%がもちで、「その他」の46.1%をわずかに上回り、もちが最大の内訳になっているのです。残る51市はすべて「その他」が最大でした。

もちの比率が高い順に見ると、福井市46.3%、富山市40.9%、新潟市38.5%、金沢市38.2%、水戸市37.5%、岐阜市35.6%、山形市35.0%。全国平均は29.0%です。日本海側と、そこから内陸に入った街が並びます。

小麦粉ランキング:1位は長野市の1,025円

順位市小麦粉(金額)
1長野市1,025円
2津市849円
3大分市758円
4広島市757円
5宇都宮市753円
6岐阜市745円
7奈良市735円
8浜松市733円
9熊本市733円
10千葉市728円
11鳥取市720円
12松江市713円

全国平均651円に対し、長野市は1.57倍で、2位の津市に176円の差をつけた独走です。数量でも長野市が3,649gで1位、2位の津市が2,700gですから、金額と重さの両方で頭ひとつ抜けています。

比率で見るとさらにはっきりします。「他の穀類」に占める小麦粉の割合は、長野市16.3%、秋田市14.1%、福島市13.4%、青森市13.4%、津市13.3%、大分市13.3%、鳥取市12.7%、高松市12.5%。全国平均は10.6%です。粉を買って家で何かを作る習慣が残っている街が、東北から中国・九州まで散らばって並びました。

2つの地図は、なぜ重ならないのか

小麦粉ともちは、どちらも「穀類を粉や塊のまま買う」買い方です。だから同じ街に集まりそうに思えます。実際の相関係数はこうでした。

組み合わせ相関係数
小麦粉 × もち−0.04
小麦粉 × 他の穀類のその他0.02
もち × 他の穀類のその他0.16

3つの内訳は、どれも互いにほとんど無関係でした。つまり「他の穀類」という区分は、性格の違う3つの買い物が同じ欄に同居しているだけで、ひとまとまりの食習慣ではないということになります。

上位の重なりで見ても同じです。小麦粉TOP10ともちTOP10に両方入るのは宇都宮市と岐阜市の2市だけ。3区分すべてで15位以内に入ったのは、奈良市(小麦粉7位・もち12位・その他8位)と宇都宮市(5位・9位・14位)の2市でした。

編集部の見立てとしては、もちは年中行事と結びついた買い物で、小麦粉は日常の調理の道具だからではないかと思います。前者は「いつ買うか」が決まっていて、後者は「何を作るか」で決まる。決め方が違えば、地図も違ってきます。

「他の穀類」の総額を決めているのは、もちと「その他」

「他の穀類」の合計金額のランキングはこうなりました。

順位市他の穀類(金額)
1大津市7,603円
2富山市7,395円
3名古屋市7,359円
4金沢市6,997円
5さいたま市6,927円
6川崎市6,889円
7東京都区部6,850円
8奈良市6,764円
9宇都宮市6,740円
10福井市6,608円

合計との相関係数を取ると、「その他」が0.81、もちが0.70、小麦粉は0.13でした。合計のTOP10のうち、「その他」のTOP10と重なるのは6市、もちのTOP10と重なるのは7市、小麦粉のTOP10と重なるのはたった2市(奈良市・宇都宮市)です。

この欄の大きさを決めているのは「その他」ともちで、小麦粉は金額が小さいぶん、合計をほとんど動かしていません。1位の大津市は「その他」で1位・もちで7位・小麦粉は27位。合計上位の街は、だいたいこの形をしています。

「その他」の比率がいちばん高いのは那覇市の70.8%で、高知市68.3%、仙台市66.8%、徳島市66.6%、さいたま市65.5%と続きます。地域でまとまるというより、大都市圏と、もちの比率が低めの街が混じって並びました。

重さで1位の街と、金額で1位の街が入れ替わる

もちを数量(g)で並べると、1位は新潟市の3,027g。金額1位の福井市は8位の2,602gです。順位が入れ替わります。

金額を数量で割った1kgあたりの単価を出すと、理由が見えます(この単価は公表値ではなく編集部の算出です)。

もちの単価小麦粉の単価
全国平均838.6円/kg321.0円/kg
福井市1,174.9円/kg(52市中1位)389.0円/kg
富山市1,148.4円/kg(2位)378.5円/kg
新潟市730.8円/kg343.8円/kg
長野市705.8円/kg280.9円/kg

福井市のもちは1kgあたり1,174.9円で52市の最高値、新潟市の730.8円の1.6倍です。福井市は「量」ではなく「単価の高いもち」で金額1位になっているわけです。逆に長野市は、小麦粉を52市で最も多い3,649g買いながら単価は280.9円/kgで、大きな袋で買っている姿が浮かびます。

同じ品目でも、金額のランキングと重さのランキングは別の話を語ります。主食の1kg単価をまとめて比べた回(主食は1kgいくらか 米507円・パン808円・カップ麺1,364円)と合わせて読むと、単価の差が街ごとに出る品目・出ない品目の輪郭が見えてきます。

もち代は52市で2.86倍ひらいた

ばらつきの大きさを、他の主食と並べてみます。

品目最大/最小変動係数
穀類(計)1.25倍5.8%
麺類1.52倍9.0%
パン1.57倍9.9%
他の穀類(計)1.77倍11.2%
米1.88倍12.8%
他の穀類のその他1.89倍13.1%
小麦粉2.03倍14.7%
もち2.86倍22.9%

もちは米(1.88倍)より大きく開き、穀類合計(1.25倍)とは比べものになりません。 主食の総額はどの街もほぼ同じという話は以前の回(主食に使うお金の総額は52市で1.25倍しか違わなかった)で書きましたが、その中の小さな区分には、これだけの差が残っていました。

ただし「穀類でいちばん差が大きい品目」ではありません。同じ表を細かく見ると、麺類の内訳には「他の麺類」4.08倍、生うどん・そば3.18倍、乾うどん・そば2.64倍と、もちより開きの大きい品目があります(麺の内訳は家で買う麺を7種類に分けたら、1位が7つの街に分かれたで詳しく扱いました)。もちは「主食の3大区分よりずっと差が大きい品目のひとつ」という位置づけになります。

米やパンとの関係も、ほとんどない

「他の穀類」を他の主食と突き合わせると、こうなりました。

組み合わせ相関係数
他の穀類 × パン0.64
他の穀類 × 穀類(計)0.49
他の穀類 × 米−0.00
他の穀類 × 麺類−0.14
小麦粉 × パン0.08
小麦粉 × 麺類−0.00
もち × 米0.09

意外だったのはもちと米の相関が0.09しかないことです。どちらも米の買い物なので連動しそうですが、街の単位ではつながっていませんでした。パン代と米代の関係が薄いことはパンにお金を使う街ランキング1位は神戸市の回で触れましたが、米ともちのあいだにも同じことが言えます。

小麦粉も同じで、パンとの相関は0.08、麺類とは−0.00。家で粉を使う量は、買ってくるパンや麺の量とは無関係でした。パンの中身を食パンと「他のパン」に割った回(パン代のうち食パンは3割だけだった)では、内訳どうしの相関が0.570ありました。それに比べると、「他の穀類」の3区分はずっとばらばらです。

数字の裏側にある、街の手仕事

もちの上位にそろった北陸と、小麦粉で独走した長野市。この並びを見ていると、Shikisaiで取材してきた会社の顔が浮かびます。

もち代・もち比率ともに2位の富山市では、自動車ガラスでシェア7割を持つ松井板硝子店が100年かけて商いの形を変えてきました。同じ富山県では100年続く印刷会社の田中印刷が紙とデジタルの両方に足を置いています。もちの数量1位の新潟市には、柔らかいソケットを作る義足の専門店P.Oコンセプト。年中行事の食が残る土地に、長く続く手仕事の会社が残っているのは、たぶん偶然ではないのだと思います。

小麦粉1位の長野市からは、建設機械の修理を手がける小宮山建機と、松代で子どもの思考力を育てる個別指導「思考道場 楠塾」。小麦粉ともちの両方でTOP10に入った岐阜市では、丸島工務店の二代目が地域の花火大会を立ち上げ直した話を伺いました。

粉やもち米を加工する仕事そのものでは、横浜で150年続く小泉麹屋、浅草で130年以上、瓦煎餅と人形焼を作り続ける紀文堂総本店、和菓子の伝統と革新に取り組む新正堂の話が、この統計といちばん近い場所にあります。家庭の買い物としては6,155円の小さな欄でも、その先には何代も続く商いがつながっています。

街ごとに全国平均から最も離れている品目を出した回(街ごとに「全国平均から一番離れている食べ物」を出したら19品目に分かれた)も、あわせてどうぞ。

出典と注記

  • 出典:総務省統計局「家計調査」品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2023年〜2025年平均)「穀類」 https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html
  • 集計対象は都道府県庁所在市および政令指定都市の52市です。都道府県の数字ではありません(「福井県」ではなく「福井市」の数字です)。
  • 二人以上の世帯・1世帯当たりの年間支出金額および年間購入量。2023年〜2025年の3年平均です。
  • 家庭で購入した分だけが入ります。外食や調理食品に含まれる分は入りません。
  • 構成比・倍率・変動係数・相関係数・1kgあたり単価は、いずれも公表値ではなく公表値からShikisai編集部が算出したものです。
  • 検算:金額は内訳3区分の合計が公表されている「他の穀類」の金額と、丸めによる最大1円差で一致します(全国はぴったり一致)。いっぽう数量は内訳3区分の合計が公表値と一致しません(全国で14gの差、52市で−660〜+695gの差)。理由が公表資料から確認できないため、本記事では数量は内訳どうしの比較にとどめ、「他の穀類」全体に占める重さの割合は算出していません。
  • 本記事の表・比率・相関はすべて、上記の公表ファイル(rank01.xlsx・シート「穀類」/2026年9月24日取得)を読み込んで52市ぶん集計したものです。

この記事を書いた人

Shikisai編集部

Shikisai編集部

「ありのままの想いが地域と未来を紡ぐ」をコンセプトに、地域で働く経営者の想いと取り組みを取材・発信しているWebメディアです。補助金・認証制度などの記事は、行政機関の公表情報(一次情報)を編集部が確認のうえ執筆しています。

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