主食に使うお金の総額は52市で1.25倍しか違わなかった 差がつくのは米・パン・麺の「配分」【家計調査】

主食に使うお金の総額は52市で1.25倍しか違わなかった 差がつくのは米・パン・麺の「配分」【家計調査】

パンの街、米の街、麺の街——食の地域差の話は、たいてい「どの街が何をいちばん食べるか」で語られます。けれど家計調査の表を、品目ごとではなく街ごとの合計から眺め直すと、まったく別の景色が出てきます。

総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯・2023〜2025年平均)で、家庭が主食=「穀類」に使った年間支出額を52市で比べると、いちばん多い堺市が100,291円、いちばん少ない街でも80,090円。その差は約2万円、倍率にして1.25倍しかありません。

ところが同じ表の中の「米」だけを取り出すと、最大と最小の差は1.88倍に広がります。

つまり、主食に配る財布の大きさは、日本中どの街でもだいたい同じ。違っているのは、その財布の中身の配分だけ、ということです。この記事では、52市それぞれの主食予算を100%に直して、その配分がどう入れ替わっているのかを読み解きます。

主食に使うお金の総額は、52市で1.25倍しか違わない

まず、穀類(米・パン・麺類・他の穀類の合計)の年間支出額です。全国平均は91,820円。上位15市を並べます。

順位都市穀類の年間支出額
1堺市100,291円
2浜松市100,053円
3名古屋市99,555円
4新潟市99,111円
5さいたま市98,523円
6大阪市98,250円
7神戸市97,912円
8富山市97,001円
9相模原市96,733円
10京都市96,287円
11福井市95,688円
12大津市95,083円
13長崎市94,520円
14静岡市94,386円
15前橋市94,004円
—全国平均91,820円

対象は都道府県庁所在市と政令指定都市の52市です。「県」ではなく「街」の数字である点にご注意ください。

全国平均の91,820円は、52市の中では26位の岐阜市(91,824円)とほぼ同じ位置。平均がきれいに真ん中に来るのも、この指標の分布がなだらかであることを表しています。最も少ない街でも80,090円で、1位との差は約2万円。月あたりにすれば1,680円ほどの違いです。

食費全体で見れば街ごとの差が2倍3倍になる品目はいくらでもあるのに、主食という大きなくくりでは、驚くほど揃っている。これが出発点です。

品目ごとに見ると、ばらつきは一気に2倍近くまで広がる

ではその内訳はどうか。穀類は「米」「パン」「麺類」「他の穀類」の4つに分かれます。それぞれについて、52市の最大・最小と、ばらつきの大きさを並べたのが次の表です。倍率と変動係数は編集部が公表値から算出しました。

品目全国平均最大の市最小の市最大÷最小変動係数
穀類(主食の合計)91,820円堺市 100,291円80,090円1.25倍5.8%
米30,111円浜松市 39,473円20,994円1.88倍12.8%
パン34,242円神戸市 41,967円26,785円1.57倍9.9%
麺類21,311円山形市 26,372円17,306円1.52倍9.0%
他の穀類6,155円大津市 7,603円4,287円1.77倍11.2%

変動係数は、ばらつきの大きさを平均に対する割合で表した数字です。金額の大小に関係なく散らばり具合を比べられるので、単位も桁も違うものを横に並べるときに使います。

結果ははっきりしています。合計の変動係数5.8%に対し、内訳の4品目はいずれも9〜12.8%。散らばりが2倍前後に広がっています。

とくに米は12.8%と最も大きく、最大と最小で1.88倍。パンは1.57倍、麺類は1.52倍です。総額の1.25倍と比べれば、どれも明らかに大きい。

合計は揃っているのに、中身はばらついている。これは、4品目が互いの分を打ち消し合っているということを意味します。米が多い街ではパンか麺が引っ込み、パンが多い街では米が引っ込む。足し算した結果だけが、どの街でもほぼ同じ場所に着地しているわけです。

なお、内訳4品目の全国平均を足すと91,819円で、公表されている穀類の91,820円と1円ずれます。これは各品目が円単位に丸められているためで、52市すべてでも、ずれは最大2円に収まっていました。

100%に直すと、街ごとの「配分」が見えてくる

金額のままでは比べにくいので、各市の穀類支出を100%として、4品目の構成比を出しました。全国平均の配分は、米32.8%・パン37.3%・麺類23.2%・他の穀類6.7%です。

代表的な街の配分を並べます。

都市穀類総額米パン麺類他の穀類
全国平均91,820円32.8%37.3%23.2%6.7%
那覇市86,257円40.1%33.3%20.1%6.5%
浜松市100,053円39.5%33.5%20.8%6.3%
札幌市91,994円39.1%31.9%22.9%6.1%
神戸市97,912円30.2%42.9%20.6%6.4%
岡山市87,967円26.8%42.5%23.7%7.0%
高松市89,369円26.0%40.6%27.1%6.3%
秋田市82,086円30.2%32.6%31.3%5.9%
山形市89,965円33.7%31.1%29.3%5.9%
大津市95,083円29.7%39.8%22.5%8.0%
堺市100,291円32.2%39.3%22.0%6.6%

米の構成比は那覇市の40.1%から高松市・鳥取市の26.0%まで、14ポイントの幅があります。パンは神戸市の42.9%から秋田市の32.6%まで10ポイント。

同じ約9万円の予算を、街ごとにまったく違う割り方で使っている——それがこの表の意味するところです。

米とパンは押し合っている。相関係数は−0.735

配分の入れ替わりを、数字でも確かめてみます。52市それぞれの「米の構成比」と「パンの構成比」の相関係数を計算すると、−0.735。かなり強い逆方向の関係です。米の割合が高い街ほど、パンの割合は低い。

ところが面白いのはここからで、同じ組み合わせを構成比ではなく「金額そのもの」で計算すると、相関係数は−0.054。ほとんど無関係、という結果になります。

この二つの数字の食い違いが、今回いちばん大事なところです。

つまり、米をたくさん買う街が、パンを買っていないわけではない。金額で見れば、米が多い街のパン代は、他の街とさして変わりません。変わっているのは、限られた主食予算の中でどちらに重みが寄っているかという配分のほうだけなのです。

なお、構成比は4品目を足すと必ず100%になるため、片方が上がればもう片方が下がりやすいという性質を構造的に持っています。−0.735という数字にはその分も含まれます。だからこそ、金額での−0.054と並べて読む必要がある、というのが編集部の考えです。

総額の大小を動かしているのは米とパン。麺類は「別枠」で乗っている

もうひとつ、穀類の総額と各品目の金額との相関も出してみました。

組み合わせ相関係数
穀類総額 × 米0.647
穀類総額 × パン0.634
穀類総額 × 他の穀類0.488
穀類総額 × 麺類0.176

米とパンはどちらも0.6台で、総額の大小とよく連動しています。主食にたくさん払う街は、米もパンもそれなりに多い、ということです。

ところが麺類だけが0.176と、ほとんど連動していません。麺をよく買う街かどうかは、その街が主食全体にいくら払うかとは、ほぼ無関係に決まっている。

麺類は、米やパンの代わりに増えたり減ったりする調整弁ではなく、その街固有の分量として別枠で乗っている——そう読めます。麺の支出については、家で買う分と外で食べる分に分けて比べた麺代の外食率の記事でも、外でよく食べる街ほど家でもよく買うという「置き換え合わない」関係が出ていました。今回の0.176は、それと地続きの結果です。

麺がいちばん多い街は、52市にひとつもなかった

配分がこれだけ動くなら、「麺型の街」もあってよさそうなものです。各市で構成比が最大の品目を調べたところ、結果はこうなりました。

  • パンが最大の街:41市
  • 米が最大の街:11市
  • 麺類が最大の街:0市

麺の構成比が52市で最も高い秋田市でも、麺類31.3%に対しパンが32.6%。1.3ポイント届きません。2位の山形市は麺類29.3%・パン31.1%、3位の青森市は麺類28.4%・パン33.3%。

麺の構成比上位10市を挙げます。

順位都市麺類の構成比その街のパンの構成比
1秋田市31.3%32.6%
2山形市29.3%31.1%
3青森市28.4%33.3%
4盛岡市28.1%33.2%
5高松市27.1%40.6%
6鳥取市26.4%40.6%
7仙台市25.9%36.3%
8松江市25.7%38.1%
9福島市25.5%32.0%
10宇都宮市25.1%37.4%

「うどん県」「ラーメンの街」と呼ばれる土地であっても、家庭が主食に払うお金の配分で見ると、麺がパンを追い越すところまではいかない。外食まで含めれば話は変わり得ますが、家で買う主食の予算配分という物差しでは、麺はどの街でも三番手以内に収まるのです。

ただし、麺類が米を上回った街は3つありました。高松市(麺27.1%・米26.0%)、鳥取市(麺26.4%・米26.0%)、秋田市(麺31.3%・米30.2%)です。瀬戸内・山陰の2市と東北の1市という、性格の違う並びになりました。

米が最大になる11市と、0.1ポイントの接戦

米が最大だった11市を、構成比の高い順に並べます。

都市米の構成比米の年間支出額
那覇市40.1%34,632円
浜松市39.5%39,473円
札幌市39.1%35,984円
宮崎市38.8%34,346円
福島市37.2%34,504円
静岡市37.1%35,031円
福井市36.3%34,718円
前橋市36.3%34,083円
熊本市35.7%31,103円
山形市33.7%30,284円
青森市33.4%29,339円

北海道・東北・北陸・東海・九州・沖縄と、地方がきれいに散らばります。「西は米、東はパン」といった単純な東西の線では引けません。

注目したいのは、1位の那覇市です。米の構成比は40.1%で52市の最高値。ところが穀類の総額は86,257円で44位と、平均より少なめです。金額そのものが飛び抜けているのではなく、他の3品目が控えめなぶん、米の比重が上がっている。構成比のランキングは、こういう成り立ちの違いを含んでいます。

一方、2位の浜松市は米39,473円が52市の最高額で、穀類の総額も100,053円で2位。こちらは金額でも比率でも米が強い、素直な「米の街」です。同じ上位でも、そこに至る道筋は2通りあるということです。

そして接戦が3市。青森市は米33.4%・パン33.3%、熊本市は米35.7%・パン35.6%と、わずか0.1ポイント差で米が上回りました。盛岡市は米33.0%・パン33.2%で、0.2ポイント差でパンが上回っています。この3市は、どちらが主役とも言い切れないほど拮抗しています。

見落とされがちな第4の主食「他の穀類」

最後に、ふだん話題にならない4番目の区分を見ておきます。「他の穀類」は全国平均6,155円。内訳は小麦粉651円、もち1,787円、それ以外が3,717円で、合計はぴったり6,155円になります。

金額としては穀類全体の6.7%にすぎませんが、ばらつきは1.77倍・変動係数11.2%と、パンや麺類より大きい。小さいけれど、街ごとの個性がよく出る区分です。

構成比の上位5市は次のとおりです。

順位都市他の穀類の構成比金額
1大津市8.0%7,603円
2宇都宮市7.8%6,740円
3水戸市7.8%6,314円
4富山市7.6%7,395円
5金沢市7.6%6,997円

1位の大津市は7,603円で金額でも最高。内訳は小麦粉625円・もち2,085円・それ以外4,894円(丸めの関係で合計は1円多くなります)で、もちが全国平均の1,787円を大きく上回っています。品目ごとの突出度をまとめた街ごとの「全国平均から一番離れている食べ物」の記事では、福井・富山・金沢の北陸3市がそろって「もち」を一番に挙げていました。今回の上位にも富山市・金沢市が入っており、同じ傾向が別の角度からも確認できます。

なぜ総額はそろうのか——編集部の見立て

ここからは数字そのものではなく、編集部の解釈です。

主食が他の食品と決定的に違うのは、毎日、ほぼ決まった量を食べるという点です。おかずは増やしたり減らしたりできますが、主食は世帯人数と食事の回数でおおよその必要量が決まってしまう。しかも米・パン・麺・小麦粉は、どれも同じ「炭水化物の主食」という枠を分け合う関係にあります。

必要量がだいたい決まっていて、その枠を4品目が分け合う。だとすれば、合計額が揃い、中身だけが入れ替わるのは自然な結果です。変動係数5.8%という小ささは、その構造をそのまま映した数字だと考えられます。

では、何が配分を決めるのか。ひとつの手がかりが、土地の作りものです。香川県で3代続くしょうゆ豆メーカーの取材記事では、社長がこう話しています。

祖父の世代はソラマメの兼業農家が多かったと聞いています。夏は米を作り、冬は裏作で小麦やソラマメを作っていました。

夏は米、冬は小麦。同じ田畑が季節で二つの主食を生んでいたわけです。高松市が米26.0%・パン40.6%・麺類27.1%という、米が最も低く麺が米を上回る配分になっていることと、この土地の記憶は無関係ではないでしょう。

米の側にも長い蓄積があります。奈良県で1861年創業の柿の葉ずしの店を取材した平宗の記事では、もとは「あゆ寿司」を作っていたこと、当時の寿司は米の乳酸発酵を利用して熟成させる「熟鮓(なれずし)」だったことが語られています。米が保存食の技術と結びついて土地に根を張ってきた歴史です。

もちろん家計調査の数字は、いま店で何が買われたかの記録であって、産地や歴史をそのまま表すものではありません。ただ、配分の違いが数十年・数百年かけて作られてきたものだとすれば、総額が揃っていることと配分が動かないことは、同じコインの裏表なのだと思います。

麺の構成比2位だった山形市には、山寺で祖父の商店をリノベーションして始まったジェラート専門店の取材記事もあります。主食の配分は動かなくても、その周りで新しい商いは生まれ続けている。街の食を数字だけで語り切れないのは、そのためでもあります。

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出典と注記

注記は4つあります。

  1. 「県」ではなく「街」の数字です。 対象は都道府県庁所在市および政令指定都市の52市で、都道府県全体の平均ではありません。県内の他の市町村を含めれば結果は変わり得ます。
  2. 家庭で購入した分だけの集計です。 外食や、弁当・おにぎり・調理パンなどの調理食品に含まれる主食は、この品目には入りません。
  3. 構成比・倍率・変動係数・相関係数は、いずれも統計局の公表値ではありません。 公表されている金額をもとに、Shikisai編集部が算出しました。
  4. 丸めによる誤差があります。 内訳4品目を足した金額は、公表されている穀類の金額と最大2円ずれます(全国平均では1円)。本文の構成比は、各市の穀類の公表値を分母として計算しています。

主食の話は、どうしても「うちの街は何が一番か」に向かいがちです。けれど52市ぶんの数字を並べて見えてきたのは、どの街も主食にはほぼ同じだけ払っていて、違うのはその割り方だけという、ずいぶん静かな事実でした。あなたの街の財布は、どんな割り方をしているでしょうか。

この記事を書いた人

Shikisai編集部

Shikisai編集部

「ありのままの想いが地域と未来を紡ぐ」をコンセプトに、地域で働く経営者の想いと取り組みを取材・発信しているWebメディアです。補助金・認証制度などの記事は、行政機関の公表情報(一次情報)を編集部が確認のうえ執筆しています。

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