地域で愛されるしょうゆ豆を全国へ!3代目社長の挑戦


有限会社黒川加工食品 代表取締役 平山 雄希 HIRAYAMA YUKI

創業以来、地元の人に愛されるしょうゆ豆。今年8月、35歳の若さで3代目となった平山社長は伝統の味を守りつつ、さらなる販路拡大へ日々挑戦する。「酒のつまみによく合う」と人気のしょうゆ豆の魅力や地元に対する思いなど平山社長にお聞きしました。

—まず、御社のご創業の経緯をお聞かせください。

平山社長:弊社は、祖父が58年前に創業した会社です。祖父はもともと貧しい生活をしていました。戦後、現在の会社の近くに引っ越して本当にいろいろな仕事に挑戦しては、失敗しての繰り返しだったと聞いています。祖父の苦労話は何十回も聞かされましたね。祖父が40歳くらいの時に、今のしょうゆ豆を地元で作ったら売れるのではないかと、知り合いからアドバイスをもらい作り始めました。最初は家庭で作るような少量を、量り売りする形で会社がスタートしました。そして、段々と軌道に乗っていきました。

—もともと家業を継ごうという思いはあったのでしょうか?

平山社長:全くありませんでした。大学4年生の時は普通に就活してましたね。食品や自動車、住宅などに興味があり、なかでも営業職を中心に受けていました。ただ、なかなか入りたいと思える企業に出会えなかったんです。仮に入社しても企業の歯車になってしまうのかとの不安もありました。いろいろ考えているうちに、だったら家業に入ってもいいんじゃないかと思い新卒で入社しました。

—入社してからは主にどのような業務をされてきたんですか。

平山社長:今年で入社13年目になるんですけど、これまでに工場での製造や商品の配送など一通りのことは経験しました。創業58年になり、昔からお取り引きいただいているお客様への配送が多いですね。

—58年もの歴史がある会社を継ぐというのはプレッシャーも大きいように感じます。会社の舵取りを任されるようになって心境の変化はありましたか?

平山社長:35歳での承継だったので、周りからも早いと言われますね。ただ、父には早めに社長を譲りたいとの思いがあって、実は2~3年前から代替わりの話はでていました。父は自分で畑をするのが好きなので、そちらに集中したかったのだと思います。代替わりについて準備を進めて行き、8月というタイミングになりました。やはり、いざ就任してみるとプレッシャーを感じることはありますね。引き継ぎをしていたので、業務についてはあまり変化はなかったのですが、責任やプレッシャーはすごくありました。

ソラマメを美味しく食べるために生み出された「しょうゆ豆」

—昔からしょうゆ豆というのは香川で有名だったのでしょうか。

祖父の世代はソラマメの兼業農家が多かったと聞いています。夏は米を作り、冬は裏作で小麦やソラマメを作っていました。多くの家庭でソラマメを保存用に乾燥させていて、どうにかおいしく食べる方法はないか探していたみたいです。試行錯誤を繰り返すうちに、しょうゆ豆がおいしいということになり「家庭の味」へと定着していったと聞いています。

—つまり、しょうゆ豆は郷土料理といっても過言ではないですね。

平山社長:そうですね。ただ、現在では自宅に畑のある家庭も減っており、個人で作る人はほとんどいなくなりました。みなさんスーパーなどで購入するようになりましたね。

酒のつまみに合う甘じょっぱい味。製造方法は「企業秘密」

—他のしょうゆ豆を作っている企業と比べ、御社のしょうゆ豆の特徴はどこにありますか。

他の商品と比べ「味付けがおいしい」とお客様によく言われます。味付けに使っている材料がシンプルなんですね。添加物も使用していないので、自然な味がするんだと思います。あとは、製造方法も結構特徴があるんですが、これは企業秘密ということでお願いします(笑)

—企業秘密と言われると、すごく気になってしまいますね(笑)。味としてはどのような特徴があるのでしょうか。

しょうゆという名前からしょっぱい味を連想するお客様もいるんですが、結構甘いです。どちらかというと甘じょっぱい味ですね。だからよく、酒のつまにに丁度いい!なんてことも言われます。他にもお茶と一緒に食べたり。カレーやラーメン、うどんなどと一緒に食べる人もいて、その人の好みに合わせて自由に食べてもらいたいですね。実は食感にも特徴があって、少し硬くて、噛むとくだけるような食感がします。甘栗を食べた時の感じに近いです。

—ますます、食べてみたくなりますね。今後のビジョンについて教えて下さい。

やはり、地域に根ざしてやってきた会社ですので、まずは地元の素材を使った商品をどんどん広げていきたいです。しょうゆ豆は古くから地元の人に愛されてきた料理なので、その文化を絶やすことなく、むしろ自分の代で広げていきたいと考えています。それが結果的に地元の農家さんや、地元の経済への貢献になると良いなと思っています。あとは海外への販路拡大にもチャレンジしていきたいですね。

編集後記

香川の郷土料理として愛され続けてきたしょうゆ豆。話を聞けば聞くほど興味がわいてきませんか?甘みと塩味が混ざって、ソラマメのほくほく感を味わえる、ヘルシーなおつまみです。平山社長の素材にこだわり、昔ながらの製法にこだわる姿勢からも、おいしいものを作りたいとの強い思いが伝わってきます。お酒を飲まれる方もそれ以外の方も、香川の郷土の味をぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。

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平山 雄希 HIRAYAMA YUKI