パンにお金を使う街ランキング1位は神戸市 52市中41市で「パン代」が「米代」を上回った【家計調査】

パンにお金を使う街ランキング1位は神戸市 52市中41市で「パン代」が「米代」を上回った【家計調査】

日本人の主食は米——。長くそう言われてきましたが、家庭が実際に払っている金額を見ると、風景はかなり違って見えます。

総務省統計局の家計調査には「パン」「米」「麺類」といった品目ごとの支出額が、都市別に公表されています。2023〜2025年平均の全国値を並べると、パンが年間34,242円、米が30,111円。家庭で買う主食にかけるお金は、すでにパンの方が4,000円ほど多いのです。

そして都市別に見ると、対象52市のうち41市でパン代が米代を上回りました。パン代のトップは神戸市の41,967円です。

この記事では、パン・米・麺類の3つの主食について都市別ランキングを並べ、そこに浮かぶ「主食の勢力図」を読み解きます。

パンにお金を使う街ランキング【2023〜2025年平均】

家計調査(二人以上の世帯)の「パン」年間支出額、上位15都市です。対象は都道府県庁所在市と政令指定都市の52市。「県」ではなく「街」のランキングである点にご注意ください。

順位都市年間支出額
1位神戸市41,967円
2位堺市39,416円
3位京都市39,347円
4位大阪市39,198円
5位さいたま市38,856円
6位広島市38,080円
7位大津市37,850円
8位東京都区部37,737円
9位奈良市37,517円
10位岡山市37,393円
11位名古屋市37,029円
12位徳島市36,323円
13位高松市36,291円
14位金沢市36,236円
15位和歌山市36,188円
(参考)全国平均34,242円

上位10市のうち8市が、近畿と瀬戸内沿岸の街でした。神戸市・堺市・京都市・大阪市・大津市・奈良市と近畿の主要都市が6つ並び、そこに広島市と岡山市が加わります。

なお全国平均の内訳は、食パンが10,713円、菓子パンや惣菜パンを含む「他のパン」が23,530円。金額ベースでは、パン代の約7割は食パン以外が占めています。「パンにお金を使う」とは、朝の食パンだけの話ではないということです。

「パン代-米代」の差が最も大きいのは岡山市

パンと米、どちらに多く払っているか。同じ表の2品目を差し引くと、街ごとの主食の重心が見えてきます。編集部で計算した「パン代-米代」の上位10市が次の表です。

順位都市パン代-米代パン代米代
1位岡山市+13,835円37,393円23,558円
2位高松市+13,044円36,291円23,247円
3位神戸市+12,405円41,967円29,562円
4位鳥取市+11,859円32,853円20,994円
5位広島市+10,989円38,080円27,091円
6位徳島市+10,764円36,323円25,559円
7位東京都区部+10,657円37,737円27,080円
8位松山市+10,213円34,826円24,613円
9位山口市+10,149円33,345円23,196円
10位大津市+9,569円37,850円28,281円

面白いのは、パン代そのものの1位(神戸市)と、差の1位(岡山市)が一致しないことです。岡山市はパン代が10位ですが、米代が23,558円と控えめなため、差では首位に立ちます。

上位10市を地図に置くと、岡山・高松・広島・徳島・松山・山口・鳥取と、瀬戸内海を囲む街がそろって並びます。パン代の絶対額では近畿が強く、パンへの傾き具合では瀬戸内が強い。同じ「パンの街」でも、二つの顔があるわけです。

米にお金を使う街・米をたくさん買う街

一方、米代が多い街の顔ぶれは、パンとはっきり入れ替わります。

順位都市米の年間支出額
1位浜松市39,473円
2位札幌市35,984円
3位静岡市35,031円
4位福井市34,718円
5位那覇市34,632円
6位福島市34,504円
7位宮崎市34,346円
8位前橋市34,083円
9位相模原市33,708円
10位新潟市33,619円
(参考)全国平均30,111円

金額ではなく購入量(kg)で見ると、順位はさらに動きます。1位は福島市の81.47kg、2位が福井市の73.76kg、3位が浜松市の73.55kg。全国平均は59.39kgですから、福島市は平均の1.37倍を買っている計算です。4位以降は新潟市69.67kg、札幌市67.08kg、岐阜市66.53kg、和歌山市66.11kg、熊本市66.04kgと続きます。

米どころとして知られる街が、実際に量でも上位に来ているのが分かります。金額と数量で顔ぶれがずれるのは、産地や銘柄によって単価が違うためです。「安く買えるから多く買える」街もあれば、「良いものを選んでいる」街もある、と読むのが自然でしょう。

米が主役の土地では、つくり手の側にも独自の工夫が積み重なっています。北海道三笠市で100年以上続く床岡農園は5代目がゆめぴりか・ななつぼし・ふっくりんこの3品種を育て、有機農法の考え方を取り入れた栽培に取り組んでいます。米代2位の札幌市は、まさにこうした産地を足元に持つ街です。

島根県の株式会社ファバラのように、発芽玄米を出発点に食品からコスメまで32種類の商品へ広げた会社もあります。米は「炊いて食べるもの」だけではなくなりつつある、という変化もまた、この数字の背景にあります。

麺類は北日本と日本海側に集まる

3つ目の主食、麺類を見ると、パンとも米とも違う第三の地図が現れます。

順位都市麺類の年間支出額
1位山形市26,372円
2位秋田市25,669円
3位青森市25,005円
4位盛岡市24,387円
5位高松市24,222円
6位新潟市24,035円
7位富山市23,877円
8位福島市23,642円
9位長野市22,859円
10位仙台市22,485円
11位川崎市22,429円
12位松江市22,419円
(参考)全国平均21,311円

上位10市のうち9市が東北・北陸信越の街です。そこに、うどんで知られる高松市が5位で割って入る構図になっています。

内訳の「中華麺」に絞ると、1位は盛岡市の6,475円、2位が山形市の6,445円、3位が秋田市の6,331円(全国平均4,716円)。生めん・ゆでめんとして家で食べる中華麺も、やはり北日本が強いことが分かります。

「生うどん・そば」では、1位が高松市の6,472円で全国平均3,777円の1.7倍。2位が長野市の4,865円、3位が山形市の4,861円と続きます。うどんとそば、それぞれの土地の名前がきちんと上位に出てくるのが、この品目の面白いところです。

パンの上位が近畿・瀬戸内、麺類の上位が東北・北陸信越。主食のお金の使い方は、東西というより「日本海側・北日本=麺」「瀬戸内・近畿=パン」という形で分かれている——これが、3つの表を並べて見えてくる勢力図です。

もちは北陸、パスタは大都市圏

主食の脇に置かれる品目にも、はっきりした地域性が出ます。

もちの年間支出額は、1位が福井市の3,057円、2位が富山市の3,026円、3位が金沢市の2,672円。全国平均は1,787円ですから、北陸3市が突出しています。4位以降も水戸市2,366円、岐阜市2,278円、新潟市2,212円と、日本海側と北関東が並びます。

対してパスタは、1位が東京都区部の1,924円、2位が横浜市1,784円、3位がさいたま市1,772円、4位が川崎市1,756円、5位が千葉市1,676円(全国平均1,517円)。上位5市すべてが首都圏という、他の品目では見られないきれいな並び方をしています。

米や小麦をどう加工して食べるかという部分に、その土地の年中行事や食卓の習慣が残るのでしょう。浅草で創業130年以上を数える紀文堂総本店は、瓦煎餅と人形焼を門外不出の製法で作り続けています。5代目が語る「継ぐとは、ただ次の代に渡すこと」という言葉は、粉の食文化がどう受け継がれてきたかを教えてくれます。

1912年創業の和菓子店新正堂の3代目は、小豆の品種改良に合わせて炊き方そのものを変えてきたと語ります。伝統は「変えないこと」だけで続くわけではない、という視点です。

京都産の食材にこだわるソラアオのように、丹波栗や落花生を使ったチーズケーキで新しい市場をつくった会社もあります。粉と米をめぐる商いは、いまも動き続けています。

この数字を読むときの3つの注意

最後に、このランキングを引用・共有していただく際の注意点をまとめます。

  1. 「県」ではなく「街」の数字です。 対象は都道府県庁所在市と政令指定都市の52市。「兵庫県が1位」ではなく「神戸市が1位」が正しい書き方になります。
  2. 家庭で購入した分だけの集計です。 外食や、弁当・おにぎり・調理パンなどの調理食品に含まれる主食は、この品目には入りません。「外で食べる分」を足せば地図は変わり得ます。
  3. 金額は3か年(2023〜2025年)の平均値です。 単年の順位ではなく、価格の変動もならされた数字である点にご留意ください。

その上で、「パン代が米代を上回る街が52市中41市」という事実は、家庭の食卓の重心が動いていることを示す、かなり分かりやすい指標だと言えます。あなたの街は、パンの街でしょうか、米の街でしょうか。

出典

本記事の数値はすべて上記の公表データに基づき、Shikisai編集部が集計・作表しました。「パン代-米代」の差は、同じ表の2品目から編集部が算出した値です。

この記事を書いた人

Shikisai編集部

Shikisai編集部

「ありのままの想いが地域と未来を紡ぐ」をコンセプトに、地域で働く経営者の想いと取り組みを取材・発信しているWebメディアです。補助金・認証制度などの記事は、行政機関の公表情報(一次情報)を編集部が確認のうえ執筆しています。

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