パン代のうち食パンは3割だけだった 52市ぜんぶで「他のパン」が上回り、比率1位は高知市の38.3%【家計調査】

パン代のうち食パンは3割だけだった 52市ぜんぶで「他のパン」が上回り、比率1位は高知市の38.3%【家計調査】

「パンをよく食べる街」と聞いて思い浮かぶのは、たいてい朝の食パンだと思います。ところが家計調査のパンの欄を、合計ではなく食パンと「他のパン」の2つに割って並べ直すと、絵はずいぶん変わりました。

総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯・2023〜2025年平均)で、家庭が1年間にパンに使った金額を内訳2区分で52市ぶん比べたところ、52市すべてで「他のパン」が食パンを上回りました。しかも食パンの比率がいちばん高い高知市でさえ38.3%で、4割に届きません。

全国平均パン代に占める割合
パン(計)34,242円100%
食パン10,713円31.3%
他のパン(菓子パン・惣菜パンなど)23,530円68.7%

家庭のパン代は、食パン1に対して他のパンが2以上という配分で動いていました。そしてこの配分は、街によって38.3%から27.3%まで開きます。以下、金額・配分・重さの順に見ていきます。

まず全国平均から パン代の68.7%は食パン以外だった

家計調査の「パン」は、食パンと「他のパン」の2つに分かれます。「他のパン」は菓子パン・惣菜パン・ロールパン・フランスパンなど、食パン以外をまとめた区分です。

全国平均では、パン34,242円のうち食パンが10,713円、他のパンが23,530円。2つを足すと34,243円で、公表されているパンの金額と1円だけずれますが、これは丸めによる差です(52市でも差は±1円に収まりました)。

以前のパンにお金を使う街ランキング1位は神戸市では、パン代の合計が米代(30,111円)を上回ったことを書きました。今回はその34,242円の中身です。「パンにお金を使う」の実態は、その7割近くが食パン以外ということになります。

ついでに位置づけも確認しておくと、穀類(米・パン・麺類・他の穀類)の全国平均は91,820円で、パンはその37.3%。穀類の中でパンの比率がいちばん高いのは神戸市の42.9%、次いで岡山市42.5%、徳島市41.3%、広島市41.0%、京都市40.9%でした。穀類の配分そのものは主食に使うお金の総額は52市で1.25倍しか違わなかったで扱っています。

食パンにお金を使う街 1位は神戸市の14,550円

まず食パンの金額から。全国平均10,713円に対する上位10市はこうなりました。

順位都市年間支出額全国平均比
1神戸市14,550円1.36倍
2奈良市12,998円1.21倍
3京都市12,914円1.21倍
4堺市12,703円1.19倍
5大阪市12,669円1.18倍
6高知市12,576円1.17倍
7富山市12,520円1.17倍
8松江市12,415円1.16倍
9高松市12,410円1.16倍
10広島市12,085円1.13倍

1位は神戸市の14,550円。2位の奈良市に1,552円の差をつけていて、上位の中でも一段抜けています。この「神戸市の食パン1.36倍」は、街ごとに「全国平均から一番離れている食べ物」で神戸市の一番として出てきた品目でもあります。パンの街として名前が挙がることの多い神戸ですが、数字の上でも食パンが看板だったわけです。

近畿の5市(神戸・奈良・京都・堺・大阪)が上位に固まる一方で、6位以下には高知市・富山市・松江市・高松市と、日本海側と四国の市が入ってきます。神戸で生まれた学びの場を取材した感覚ではなく、学びとしてのコーヒーへ(UCCコーヒーアカデミー)では、コーヒーアカデミーが2007年に神戸で誕生したことが語られていました。朝の食卓の話として、食パンとコーヒーが同じ街で厚いのは面白い符合です。

なお、52市の幅は最大14,550円(神戸市)から最小8,498円(宮崎市)まで1.71倍、変動係数13.4%。あとで見るように、これはパン代の内訳2区分のうち大きいほうの差です。

「他のパン」にお金を使う街 1位も神戸市 パン代の大きさを決めているのはこちら

続いて「他のパン」。全国平均23,530円に対する上位10市です。

順位都市年間支出額全国平均比
1神戸市27,417円1.17倍
2さいたま市27,220円1.16倍
3堺市26,713円1.14倍
4大阪市26,529円1.13倍
5京都市26,433円1.12倍
6大津市26,398円1.12倍
7岡山市26,297円1.12倍
8広島市25,995円1.10倍
9東京都区部25,932円1.10倍
10長崎市25,713円1.09倍

ここでも1位は神戸市です。神戸市はパン代の合計(41,967円)・食パン・他のパンの3つすべてで52市の1位でした。3冠は今回の集計でこの1市だけです。

面白いのは、パン代の合計との結びつきの強さが2区分で違うことでした。編集部で相関係数を計算すると、パン代の合計と「他のパン」の相関は0.936、これに対して食パンとの相関は0.822。金額そのものが大きく、かつ合計との連動も強い「他のパン」のほうが、その街のパン代の大きさを決めています。

そして食パンと他のパンの相関は0.570。ゆるく同じ方向を向いてはいますが、「食パンをよく買う街=菓子パンもよく買う街」と言い切れるほどではありません。この0.570のすき間が、次に見る配分の差になって出てきます。

パン代の配分 食パン比率1位は高知市の38.3%(52市ぜんぶ)

各市のパン代を100%に直して、そのうち食パンが占める割合を出しました(構成比は公表値ではなく、公表されている金額から編集部が算出したものです)。

全国平均は31.3%。これを上回ったのは52市のうち28市でした。

順位都市食パン比率食パン他のパンパン代
1高知市38.3%12,576円20,222円32,798円
2松江市37.3%12,415円20,839円33,253円
3鳥取市35.6%11,699円21,154円32,853円
4岐阜市35.4%11,821円21,615円33,436円
5富山市35.1%12,520円23,101円35,620円
6神戸市34.7%14,550円27,417円41,967円
7奈良市34.6%12,998円24,519円37,517円
8高松市34.2%12,410円23,881円36,291円
9横浜市33.6%11,844円23,438円35,282円
10和歌山市33.3%12,050円24,137円36,188円
11山口市33.2%11,069円22,276円33,345円
12水戸市32.9%9,800円19,982円29,783円
13京都市32.8%12,914円26,433円39,347円
14青森市32.8%9,621円19,671円29,292円
15相模原市32.6%11,606円23,991円35,597円
16山形市32.6%9,119円18,846円27,965円
17金沢市32.5%11,794円24,442円36,236円
18大阪市32.3%12,669円26,529円39,198円
19堺市32.2%12,703円26,713円39,416円
20宇都宮市32.2%10,398円21,906円32,304円
21名古屋市31.9%11,807円25,222円37,029円
22静岡市31.9%10,351円22,069円32,419円
23仙台市31.9%10,030円21,414円31,443円
24札幌市31.9%9,366円19,957円29,323円
25秋田市31.9%8,532円18,253円26,785円
26那覇市31.8%9,129円19,571円28,700円
27広島市31.7%12,085円25,995円38,080円
28東京都区部31.3%11,806円25,932円37,737円
29川崎市31.3%11,112円24,340円35,451円
30千葉市31.2%11,055円24,404円35,459円
31長野市31.2%9,985円22,048円32,033円
32新潟市31.1%11,101円24,613円35,713円
33甲府市30.6%9,410円21,334円30,744円
34大分市30.5%9,275円21,166円30,441円
35大津市30.3%11,451円26,398円37,850円
36北九州市30.2%9,902円22,914円32,817円
37盛岡市30.2%8,716円20,144円28,861円
38浜松市30.1%10,063円23,409円33,472円
39さいたま市29.9%11,636円27,220円38,856円
40岡山市29.7%11,096円26,297円37,393円
41徳島市29.6%10,766円25,557円36,323円
42津市29.5%10,231円24,412円34,643円
43佐賀市29.3%9,376円22,657円32,034円
44福島市29.1%8,618円21,048円29,666円
45熊本市29.0%8,983円22,007円30,990円
46福岡市28.8%9,702円23,944円33,647円
47鹿児島市28.6%9,134円22,777円31,910円
48松山市27.9%9,715円25,111円34,826円
49宮崎市27.8%8,498円22,074円30,571円
50福井市27.5%9,334円24,631円33,964円
51前橋市27.4%9,075円24,000円33,075円
52長崎市27.3%9,654円25,713円35,367円

表の下のほうは「食パンが少ない街」ではなく、パン代が菓子パン・惣菜パンの側に寄っている街です。金額そのものを見ると、長崎市の他のパンは25,713円で52市の10位、松山市は25,111円で13位、福井市は24,631円で14位。パンは買っているけれど、その配分が食パン以外に向いている、という読み方になります。

もうひとつ押さえておきたいのは、この配分と、パン代の大きさはほとんど関係がないことです。食パン比率とパン代合計の相関係数は0.130。パン代1位の神戸市が比率でも6位に入る一方で、比率1位の高知市はパン代では34位、2位の松江市は30位でした。パンをたくさん買う街が食パン寄りとは限らないわけです。

食パン比率が高い街には3通りの成り立ちがある

比率の上位を、食パンと他のパンそれぞれの順位と並べると、同じ「食パン寄り」でも成り立ちが分かれていました。

ひとつめは、パンそのものが大きくて、そのうえ食パン寄りの街。 神戸市がこれで、食パン1位・他のパン1位・比率6位。奈良市も食パン2位・他のパン16位・比率7位で近い形です。じつは食パン比率の上位10市のうち、他のパンの金額でも上位10市に入るのは神戸市だけでした。

ふたつめは、食パンが上位で、他のパンが控えめな街。 高知市(食パン6位・他のパン45位)、松江市(同8位・44位)、鳥取市(同17位・42位)がこのタイプです。3市ともパン代の合計は30位台にとどまるのに、比率では1〜3位に立ちます。高知といえば、老舗の生姜屋が挑む自社ブランド商品で「高知県は生姜の生産量が国内1位」と紹介したように食材の個性が語られる土地ですが、パンの配分にも個性が出ていました。松江市のある島根県では、株式会社ファバラが発芽玄米から32種類の商品を広げています。米の側にも動きがある県で、パン代の配分は食パンに寄っている——というのは、単純な「パンか米か」では説明しにくい形です。

みっつめは、金額では目立たないのに比率で上位に来る街。 水戸市(食パン34位・他のパン47位・比率12位)、青森市(同38位・49位・14位)、山形市(同46位・51位・16位)がそうでした。パン代そのものは大きくないぶん、食パンの占める割合が相対的に上がっています。比率だけを見て「食パンをよく買う街」と読むと行きすぎになる例で、表を金額と一緒に載せているのはこのためです。

菓子パン・惣菜パン寄りの街 比率1位は長崎市の72.7%

裏返して、「他のパン」がパン代に占める割合で並べ替えた上位10市です。

順位都市他のパン比率他のパン金額の順位
1長崎市72.7%25,713円10位
2前橋市72.6%24,000円22位
3福井市72.5%24,631円14位
4宮崎市72.2%22,074円33位
5松山市72.1%25,111円13位
6鹿児島市71.4%22,777円30位
7福岡市71.2%23,944円24位
8熊本市71.0%22,007円36位
9福島市70.9%21,048円43位
10佐賀市70.7%22,657円31位

10市のうち5市が九州でした。長崎市・松山市・福井市は金額でも10〜14位に入っていて、菓子パン・惣菜パンの棚が厚いタイプ。前橋市・宮崎市・熊本市・福島市は金額では中位以下ですが、そのぶん配分が寄っています。

福井市のある福井県では、身体はよろこび、心は満たされる野尻ケイクのケーキで、白砂糖を使わず自家製の甘酒やてん菜糖で作る洋菓子店を取材しました。甘いものを買って帰る習慣と、菓子パンの棚の厚さがどこかで地続きなのかどうかは、この統計だけでは決められません。ただ、配分の地図を見てから地域の店の話を読むと、見え方が少し変わります。

なお、食パン比率の幅は38.3%(高知市)から27.3%(長崎市)までの1.40倍、変動係数7.7%。金額(食パン1.71倍・他のパン1.50倍)よりも、配分のほうが街ごとの差は小さくまとまっていました。

ばらつきの大きさ 内訳2区分では食パンのほうが差が出る

今回使った数字のばらつきを、1か所にまとめます。倍率は52市の最大÷最小、変動係数は標準偏差÷平均です(どちらも編集部の算出)。

項目最大最小倍率変動係数
穀類(計)100,291円80,090円1.25倍5.8%
パン(計)41,967円26,785円1.57倍9.9%
食パン14,550円8,498円1.71倍13.4%
他のパン27,417円18,253円1.50倍10.0%
米39,473円20,994円1.88倍12.8%
食パン比率38.3%27.3%1.40倍7.7%

金額の大きさは他のパンのほうが2倍以上ありますが、街ごとの散らばりは食パンのほうが大きい(1.71倍・13.4%)という結果でした。米の1.88倍・12.8%に近い水準です。菓子パン・惣菜パンはどの街でもある程度まとまった額が使われていて、差がつくのは食パンの側、という構図になります。

主食全体のばらつきが1.25倍しかないことは主食に使うお金の総額は52市で1.25倍しか違わなかったで書いたとおりで、財布の大きさは揃っていて中身の配分が入れ替わる、という傾向はパンの内側でも同じでした。

重さで見ると1位が入れ替わる 食パンも「他のパン」も堺市が2冠

家計調査には購入量(g)も載っています。金額ではなく重さで並べ替えると、1位が変わりました。

順位食パン(数量)他のパン(数量)
1堺市 24,190g堺市 24,173g
2奈良市 23,833g大阪市 23,895g
3大阪市 23,814g大津市 23,824g
4神戸市 23,739g京都市 22,938g
5相模原市 23,258g松山市 22,869g

金額では3冠だった神戸市が、重さでは食パン4位・他のパン6位。かわりに堺市が食パン・他のパンとも数量1位の2冠でした。金額で見るか重さで見るかで、街の姿は入れ替わります。

理由は単価です。金額÷数量で1kgあたりを出すと、神戸市の食パンは612.9円/kgで52市の3位、堺市は525.1円/kgでした。同じ重さのパンでも、支払っている額が違います。単価の全国平均は食パン556.1円/kg、他のパン1,154.3円/kgで、このあたりは主食は1kgいくらかに詳しく書きました。

数量の散らばりは食パン1.60倍・変動係数14.0%、他のパン1.58倍・11.0%。金額と数量の相関は食パンで0.920、他のパンで0.921と、どちらも強く連動しています。

パンと米の関係 綱引きがあるとすれば食パンの側だった

最後に、パンと米の関係も見ておきます。「パンの街」と「米の街」は対立するもののように語られがちですが、52市の金額で相関係数を取ると、パン代と米代の相関は−0.054。ほとんど無関係でした。

内訳に分けると、少しだけ様子が変わります。

組み合わせ相関係数
パン(計)と米−0.054
食パンと米−0.224
他のパンと米0.061

弱いながら負の向きが出たのは食パンだけで、菓子パン・惣菜パンと米のあいだには関係が見えません。朝ごはんの器がご飯か食パンかという場面では入れ替わりが起きても、おやつや昼の惣菜パンは米と競合していない——と読むこともできますが、相関は−0.224と小さく、断定できる強さではありません。

品目どうしが押し合うのではなく、それぞれ別の場面に乗っている、という見立ては家で買う麺を7種類に分けたら、1位が7つの街に分かれたでも出てきました。麺の街の話と同じで、パンも「どちらか」ではなさそうです。

小麦そのものの話をすれば、香川でしょうゆ豆を全国へ届ける3代目を取材したとき、「夏は米を作り、冬は裏作で小麦やソラマメを作っていました」という話を聞きました。米と小麦は、もともと同じ土地で季節をずらして作られてきたものでもあります。京都でチーズケーキ専門店ソラアオを営む方が、パン屋でパンやピザを作った経験を経てお菓子に進んだ話もそうですが、パンと菓子と米のあいだの線は、現場ではもっとゆるやかです。

出典と注記

注記は5つあります。

  1. 「県」ではなく「街」の数字です。 対象は都道府県庁所在市および政令指定都市の52市で、都道府県全体の平均ではありません。県内の他の市町村を含めれば結果は変わり得ます。
  2. 家庭で購入した分だけの集計です。 外食で出てきたパンや、弁当・サンドイッチなどの調理食品に含まれるパンは、この品目には入りません。
  3. 「他のパン」は食パン以外のパンをまとめた区分です。 菓子パン・惣菜パンなどが含まれますが、この表では内訳までは公表されていないため、記事でも区分としてしか扱っていません。
  4. 構成比・倍率・変動係数・相関係数・1kgあたり単価は、いずれも統計局の公表値ではありません。 公表されている金額と数量をもとに、Shikisai編集部が算出しました。
  5. 金額と数量では検算の結果が違います。 金額は食パンと他のパンを足すとパンの公表値と最大1円しかずれません(全国も1円)。いっぽう数量は、食パン19,265gと他のパン20,384gを足しても39,649gで、公表されているパンの42,398gとは2,749gの差があります(52市でも583g〜5,233gの差)。理由が公表資料から確認できないため、この記事では数量を食パンと他のパンのあいだで比べるにとどめ、パン全体に占める重さの割合は出していません。

パンの話は「パン消費量1位はどこか」という形で語られがちです。けれど52市ぶんの数字を食パンと「他のパン」に割ってみると、出てきたのはどの街でも主役は食パン以外で、その配分が38.3%から27.3%まで静かに入れ替わっているという地図でした。あなたの街のパン売り場は、どちらの棚が厚いでしょうか。

この記事を書いた人

Shikisai編集部

Shikisai編集部

「ありのままの想いが地域と未来を紡ぐ」をコンセプトに、地域で働く経営者の想いと取り組みを取材・発信しているWebメディアです。補助金・認証制度などの記事は、行政機関の公表情報(一次情報)を編集部が確認のうえ執筆しています。

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