売れ残った服は、服ではなく掃除道具になる|捨てるはずのものを価値に変えた11の話

売れ残った服は、服ではなく掃除道具になる|捨てるはずのものを価値に変えた11の話

「捨てるものを、もう一度使う」と聞くと、多くの人は元の姿に戻すことを想像します。割れたガラスはガラスに、売れ残った服は服に、古い建物は元の用途に。

ところが、Shikisaiのインタビューとラジオ記事から捨てるはずだったもの・使われなくなったものに出番をつくった話を11本選んで並べてみると、いちばんはっきりしたのは逆のことでした。

続いている取り組みは、ほとんどが元の用途に戻していないのです。服は服に戻らず掃除道具の材料になり、廃棄ガラスは板ガラスに戻らずアクセサリーと壁のタイルになり、廃校は学校に戻らず犬の施設になっていました。「元に戻す」のではなく「行き先を変える」。それが、思いつきで終わらずに事業として成立している側の共通点でした。

今回並べたのは、東京のガラス器メーカー、名古屋のガラス工事会社、東京のガラスびん商、高知の生姜卸、岡山のジビエ業、茨城の廃校を使った動物施設、静岡の工務店、沖縄の建物メンテナンス会社、長野の建機修理業、千葉の農業法人、そして関東で服を回収するIT企業。業種はまったくそろっていません。それでも、判断の形はよく似ていました。

この記事では、11本から見えたことを5つの型に整理します。自社に「値がつかないまま出ていくもの」がある人には、考える材料になるはずです。

型① 素材は、元と違うものにしたほうが行き先が決まる

いちばん徹底していたのが、株式会社Transire Pontamの五十嵐拓巳さんと小田拓夢さんの取り組みです。IT事業を軸にする同社が5年半前に始めた環境保全事業は、テーマがはっきりしています。アパレルの焼却を阻止することでした。

仕組みはこうです。アウトレットに並び、そこでもさらに売れ残った服——五十嵐さんの言葉では「本当に最終在庫、どうしようもないもの」——を同社が仕入れる。それをバングラデシュの工場へ送り、糸一本、繊維の状態まで戻す。そして繊維になったものを、材料として再び日本に輸入します。

ここが今回の記事の出発点になった部分です。

もう一度洋服には戻さない。

戻した繊維の行き先は、掃除グッズの材料でした。フロアワイパーの替えシートの中身に加工されたり、そのままモップの材料になったりする。つまり、アウトレットでも売れ残った服が、各家庭の掃除道具として使われています。

服に戻そうとすれば、色・風合い・強度の条件が一気に厳しくなります。行き先を掃除道具に変えたことで、条件は「繊維であること」だけで足りるようになった。用途を下げるのではなく、条件が緩む場所まで用途をずらすという判断です。

同じ発想を、素材の側から実践しているのが東京都墨田区の廣田硝子株式会社です。明治32年創業、従業員9名。2021年に廃棄ガラスの再活用研究を始めた同社が掲げた問いは、そのまま社内の言葉でした。

割れてしまったガラスや、製造過程で生まれる廃棄ガラスを、新しい美に変えられないだろうか。

ここでも、板ガラスや食器に戻す道は選ばれていません。窯の端に残ったガラス片が熱で偶然「まん丸で透明な粒」になったことから生まれたのがリサイクルガラスのアクセサリー「白雫(hakuRe)」で、いまは廃棄ガラスを建築用のガラスタイルとして使う取り組みが進んでいます。2025年12月にオープンした自社1階では、熱で角を丸めたガラス片を壁面タイルとして活用。江戸切子の破片も混ざった意匠になっているそうです。

同社がすみだSDGsアワード2025で評価されたのは、この「本業の中から生まれた問い」でした。製造過程のロスを仕方のないものとせず、しかも人の目に触れる場所に出したことが評価点に挙がっています。

名古屋市で創業67年のガラス工事会社津田硝子株式会社の三代目・津田慎介さんは、使用されなかった新品のガラスをアクセサリーやアート作品として再生し、オリジナルブランド「gl+」として展開しています。子どもも参加できるワークショップや、新しく開設したDIYコミュニティスペースを通じて、ガラスの魅力と建設業の現場を伝える活動にもつなげています。

ガラス工事会社が、ガラス板ではなくアクセサリーを出す。ここでも行き先は変わっています。

なお、それぞれの技術の中身や職人の世界の話は職人の世界の「中の人しか知らない事実」まとめで扱っています。この記事では、素材の行き先の決め方に絞って読み直しました。

型② 弾かれていたのは品質ではなく「形」だった

食べものの側で共通していたのは、外されていた理由が味ではないという点です。

高知県で昭和25年から生姜の卸売を手がける株式会社あさのの浅野社長は、自社ブランド「クラフトジンジャー」が生まれた理由をこう説明しています。

弊社の強みは「使い切る」という点でした。卸先に販売する際には形が悪くて製品化できないものも多いのですが、それを活用して何か新しいものを作れないかなと。

同社の記事によれば、高知県は生姜の生産量が国内1位。長年その卸を担ってきた会社が、卸の規格からは外れるものを自社加工に回しました。浅野社長は表面に傷がついている生姜でも味は変わらないため自社加工に使い、食品ロスにも配慮していると語っています。

この判断には、もう一段の狙いがありました。

農家さんが苦労して育ててくれた生姜を出来るだけ廃棄することなく商品化することも大事にしています。廃棄ロスを減らすことで、農家さんにも還元ができるためです。

形で弾かれるものに用途をつくると、その分が仕入れ側の手取りとして戻る。「もったいない」の話ではなく、取引の話として説明されているのが特徴的でした。

岡山県新見市の有限会社ミナミ(おかやまジビエみなみ)の南社長がジビエ事業を始めたきっかけも、似た構造です。父と交友があった地元猟師から聞いた話が出発点でした。

地元で獲れる猪肉が味が良いにもかかわらず商売として成り立っていない。

そこで南社長は、自分が得意としていたインターネットを使い、地元の食材をビジネスにできないかと考えます。新見は石灰岩質の風土で気候も涼しく、ストレスが少なく育って脂も乗った猪が獲れる。解体も自社で行い、どう解体すればより新鮮に届けられるかを日々研究していると語っています。

南社長が挙げたやりがいも、素材の話だけではありませんでした。狩猟・解体は年配者、加工や製造・販売は若い世代と、幅広い年代が関われること。値がついていなかった資源に用途がつくと、その周りに仕事の階層ができていました。

型③ 建物は、用途を変えれば残せる

建物になると、「元に戻さない」が効く度合いはさらに大きくなります。

株式会社メニコンが2022年に茨城県笠間市に完成させた動物のための施設「&HAUS」は、廃校を活用したものです。校庭にはドッグラン、教室部分は犬たちが安心して過ごせるよう設計した空間。飼い主に万が一のことがあったり、急な海外出張や入院で世話ができなくなったときに愛犬を預かる「犬のみらい保障」というサービスの舞台になっています。

場所の決まり方について、いきいき動物事業部&Dビジネス推進部の今枝部長はこう話しています。

文科省が「みんなの廃校プロジェクト」というものを行っていて、そこに応募したのがきっかけです。

ここで面白いのは、内装の扱いです。学校時代の黒板や張り紙がそのまま残っているのはなぜか、という問いに対する答えがこうでした。

学校は地域住民の皆様にとって、思い入れのある場所です。動物の保護施設なので内装はそのままで問題なかったという理由もありますが、地域の皆様がフラッと訪れてコミュニケーションを取れる場として維持したいという思いはありましたね。

用途が変わったのに、内装を変えなくて済んだ。しかも残した内装が、地域交流ルームやマルシェといった地域向けの施策とかみ合っている。用途を変えたことが、かえって元の記憶を残す理由になっているわけです。

静岡県富士市の有限会社アスカ工務店が力を入れる「性能向上リノベーション」は、住宅で同じことをしています。取締役で設計士の遠藤鉄弥さんによれば、一般的なリフォームが中を綺麗にし水回りを交換するものだとすると、性能向上リノベーションは耐震性能・断熱性能・劣化対策を全部調べたうえで、一から新築同然にやっていくもの。1981年に始まった新耐震基準、2000年の壁量計算などの基準を、そうなっていない中古住宅に後から入れ直す仕事です。

工事費は新築の6〜8割ほどかかると遠藤さんは率直に話していました。打ち合わせも「下手をすると新築以上」になる。理由は今ある構造に合わせなければならないためで、「この柱は上からの荷重が高いので抜けません。ここはプランを変更しましょう」というやりとりが実際に起きるそうです。

それでも遠藤さんの立場ははっきりしていました。空き家について、ただ壊して更地にするという発想ではなく——

できるものは性能向上リノベーションをして、次の世代に使ってもらう。

相続などが絡む場合には弁護士や司法書士といった専門家とも組みながら提案していきたい、とも話しています。建物を残すかどうかの判断が、設計の話だけでは終わらないことがよく分かる答えでした。

型④ 壊さずに、中身だけ入れ替える

同じ「残す」でも、外側に一切手をつけない方法がありました。

沖縄で建物メンテナンス事業を手がける株式会社サンゴ装設の矢野恭平さんが力を入れているのが「ライニング工法」です。矢野さんの説明はこうです。

古い建物では排水管や水道管が鉄製のパイプで作られていることが多く、築30年ほど経つと内部が錆びて流れが悪くなったり、穴が開いて漏水することがあります。ライニング工法は、その古い鉄管を撤去するのではなく、内部に新しい管を作る技術です。

具体的には、パイプ内部を洗浄したあとエポキシ系の塗料を流し込み、均一に塗布して硬化させることで新しい管を形成する。マンションや商業ビルでは配管交換のために壁や床を壊すと大規模工事になりますが、この工法なら建物を壊さずに配管を再生できるといいます。

矢野さんが自分の仕事をどう定義しているかも印象に残りました。

当たり前に使えていたものを、もう一度当たり前に使えるようにする。それが私たちの役割だと思っています。

長野市で建設機械の修理を専門にする有限会社小宮山建機の小宮山正樹さんの話は、この型の現場側のリアルでした。油圧ショベル(ユンボ)、クレーン、アスファルトフィニッシャーを扱い、林業の顧客が多く山の中の現場にも入っていく会社です。

仕事の入り方は、作業中に機械が壊れて「助けてください」と呼ばれる形が多い。その場で直せるものは直し、応急処置で対応することもある。しかし、どうにもならないケースもあります。そこで小宮山さんが大事だと語ったのは、修理の腕前ではありませんでした。

直すか入れ替えるかの判断を、早くしてあげることです。現場は止まっているのだから、直せないと分かった時点で早く伝えることも仕事のうち、という考え方でした。

「使い続ける」を仕事にしている人が、いちばん価値を置いていたのが「使い続けられないと早く言うこと」だった。ここは並べてみて意外だった部分です。

型⑤ いちばん徹底した形は「つくらない」だった

1916年から東京・墨田でガラスびんを手がける株式会社大川硝子工業所の大川岳伸さんの話は、5つの型のなかで最も遠くまで行っています。同社は使用済みガラスびんを原料としたガラスコップ「BINKOP」を手がけていますが、大川さんが語ったのは、リサイクル素材を使うこと自体への注意でした。

元々、リサイクル素材で出来た一部製品には不満や疑問があって。新たな素材を使用することで、生産システムの変更で工場に負担がかかったり、製品の耐久性が下がったり、それって全然サステナブルじゃないよね(笑)って。

だからBINKOPは、工場に負担をかけないようあくまで既存のシステムの範疇で生産し、製造上できてしまうディテールもそのままデザインに落とし込んで製品化したといいます。再生素材に切り替えることで別の負荷が増えるなら足し引きが合わない、という見方です。

そしてもう一つ。オリジナル商品を持とうと考えたときの判断がこれでした。

ガラスびんでオリジナルの形状で作ろうとすると、金型に莫大な費用がかかるんです。(中略)ならばモノはそのままで、価値の部分を再構築し、パッケージをリデザインしようと考えたんです。そうすれば、同じモノだったとしても新商品だ!と。

こうして生まれたのが、手さげびんや地球びんの「Familiarシリーズ」です。新しい型を起こさないという選択そのものが、いちばん材料を使わない方法でした。捨てるものを活かす話を集めていくと、最後は「そもそも新しくつくらない」に行き着く。この順番は、並べてみるまで気づきませんでした。

番外 同じ土地を、二重に使う

素材でも建物でもなく、土地を二重に使っていたのがJAL Agriport株式会社です。成田空港の近くで2020年2月から事業を本格開始した農業法人で、代表取締役社長の花桝健一さんが挙げた4つの柱のうち、4つ目が「環境」=カーボンゼロ農業でした。

農地に太陽光パネルを設置し、その下でさつまいもを栽培します。そこで発電した電力を小型蓄電池に貯め、夏季のいちご栽培時に必要な冷房電力として活用し、いちごの周年栽培の実証実験をしています。

同じ一枚の農地で、上は発電し、下は作物を育てる。しかも敷地内の民家をリノベーションした店舗で地産地消レストランを運営し、自社で生産したさつまいもは芋焼酎に加工して機内ビジネスクラスで提供するところまで持っていっています。

余っているのは素材だけではない。空間も、時間も、余っていれば材料になるという例でした。

発見その2 きっかけは「素材」ではなく「空いている受け皿」から来ていた

11本を並べて、もう一つはっきりしたことがあります。始まりの合図が、捨てるものの側ではなく、受け皿の側から来ているのです。

Transire Pontamの場合、五十嵐さんがユニフォーム製造会社に持ちかけたのは「作る」話ではなく「残った洋服をどうにかできないか」という相談でした。そこで返ってきた答えが、この事業の起点です。

工場がちょっと余ってるんで、やってみない?

メニコンの&HAUSも、犬を預かる施設の構想が先にあり、動物保護団体へのヒアリングで「みんな場所がなくて困っている」と分かったところから、文科省の廃校の公募に応募する形で場所が決まりました。廣田硝子の白雫は、窯の端に残ったガラス片が偶然まん丸になった瞬間から生まれています。

つまり、順番はこうです。「捨てるものがある」→「どうしよう」ではなく、「空いている受け皿がある」→「ここに入るものは何か」。余っている工場、公募に出ている廃校、窯の端。受け皿の形が決まると、入れるものの条件も自動的に決まるので、行き先を変える判断がしやすくなります。

自社に値がつかないまま出ていくものがあるなら、探すべきは処理方法ではなく、すでに空いている誰かの設備・場所・工程なのかもしれません。

発見その3 捨てるコストは、たいてい二重にかかっている

最後に、津田硝子の津田さんの話をもう一度置いておきます。会社の倉庫にやたらとガラスが多いことに気づいた津田さんが見つけたのは、これから現場に出ていくガラスではありませんでした。多かったのは、建設途中で仕様変更になり、発注済みなのに「もう要りません」と言われて戻ってきたガラスだったといいます。

そこで津田さんが指摘したのが、費用の構造でした。会社の側から見ると、材料代を払ったうえに、さらに廃棄業者にお金を払って処分してもらうことになる。作ったのに何も果たさないまま役目を終えたものに、二重の支払いが発生しています。

この二重構造は、今回の11本のどこにでも顔を出していました。形の悪い生姜も、錆びた鉄管も、空いたままの建物も、置いておくだけで費用がかかります。だから「行き先を変える」は、環境の話である前に、すでに払っている費用を回収する話でもあるわけです。

廣田硝子の記事の言葉を借りれば、目指しているのはこういうことになります。

「捨てない」という選択を、産業として成立させる。

11本の一覧:何を、どこへ持っていったか

会社・団体もともとの行き先変えた先
Transire Pontam(関東)アウトレットでも売れ残った服繊維に戻して掃除グッズの材料へ
廣田硝子(東京・墨田)割れたガラス・製造過程の廃棄ガラスアクセサリー「白雫」/建築用ガラスタイル
津田硝子(愛知・名古屋)仕様変更で使われなかった新品ガラスアクセサリー・アート作品「gl+」
株式会社あさの(高知)形が悪く卸に出せない生姜自社ブランド「クラフトジンジャー」
おかやまジビエみなみ(岡山・新見)商売として成り立っていなかった猪肉ネット販売・催事・飲食店への卸
メニコン(茨城・笠間)廃校になった学校動物のための施設「&HAUS」
アスカ工務店(静岡・富士)更地にされる中古住宅・空き家性能向上リノベーションで次の世代へ
サンゴ装設(沖縄)撤去される古い鉄製配管ライニング工法で管の内側から再生
小宮山建機(長野)壊れて止まった建設機械現場で修理、または早い判断で入れ替え
大川硝子工業所(東京・墨田)新しい金型・新しい素材つくらずに価値を再構築(Familiar/BINKOP)
JAL Agriport(千葉・成田)農地の上の空間、敷地内の民家太陽光発電と栽培の二階建て、地産地消レストラン

まとめ:戻す先を探すより、次の行き先を探す

11本から見えたことを、もう一度並べます。

  1. 元の用途に戻そうとすると条件が厳しくなる。 行き先を変えると、満たすべき条件が減る(服→繊維→掃除道具)
  2. 弾かれていた理由は品質ではないことが多い。 形・規格・仕様変更といった、味や強度とは関係のない理由で外れている
  3. 建物は用途を変えれば残せる。 しかも用途が変わったからこそ、黒板のような元の記憶を残せる場合がある
  4. 外側を壊さずに中身だけ入れ替える方法がある。 配管のライニング工法はその典型
  5. いちばん材料を使わないのは「つくらない」。 新しい型を起こさず、価値の部分を組み替える
  6. きっかけは受け皿の側から来る。 余っている工場、公募中の廃校、窯の端
  7. 捨てるものには二重の費用がかかっている。 材料代と処分代。だから回収の話にもなる

地域の会社にとって、この話は環境への取り組みというより、手元にある「値がついていないもの」の棚卸しに近いのだと思います。倉庫にあるもの、畑で外したもの、使われていない建物。そのどれかに、条件が緩い行き先が見つかるかもしれません。

Shikisaiでは、こうした地域の会社の取り組みを一社ずつ伺っています。土地の条件が商売のかたちを決めていた話は地域の気候・地形が商売のかたちを決めた話まとめに、職人の世界で外からは見えない事実については職人の世界の「中の人しか知らない事実」まとめにまとめてあります。

この記事を書いた人

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「ありのままの想いが地域と未来を紡ぐ」をコンセプトに、地域で働く経営者の想いと取り組みを取材・発信しているWebメディアです。補助金・認証制度などの記事は、行政機関の公表情報(一次情報)を編集部が確認のうえ執筆しています。

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