家で買う麺を7種類に分けたら、1位が7つの街に分かれた 生うどん・そばは高松市、カップ麺は青森市【家計調査】

家で買う麺を7種類に分けたら、1位が7つの街に分かれた 生うどん・そばは高松市、カップ麺は青森市【家計調査】

「麺の街はどこか」という問いには、たいてい一つの街の名前で答えが返ってきます。ところが家計調査の麺類の欄を、合計ではなく中身の7品目まで割って並べ直すと、答えは一つになりませんでした。

総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯・2023〜2025年平均)で、家庭が1年間に買った麺の支出額を、生うどん・そば/乾うどん・そば/パスタ/中華麺/カップ麺/即席麺/他の麺類の7品目に分けて52市で比べたところ、7品目の1位が、7つの別々の街に分かれました。同じ街が2冠を取ることは一度もありません。

品目1位の街年間支出額全国平均
生うどん・そば高松市6,472円3,777円
乾うどん・そば秋田市3,943円2,325円
パスタ東京都区部1,924円1,517円
中華麺盛岡市6,475円4,716円
カップ麺青森市8,326円5,833円
即席麺(袋麺など)鳥取市3,493円2,412円
他の麺類横浜市1,049円732円

「麺の街」は一つではなく、麺の種類の数だけある——というのが、この記事でいちばん言いたいことです。以下、品目ごとに中身を見ていきます。

まず全国平均から 麺代21,311円の27.4%はカップ麺だった

品目別の話に入る前に、全国平均の内訳を確認します。家庭が1年間に麺類に使うのは21,311円。その割り方はこうなっていました。

品目全国平均麺類に占める割合
カップ麺5,833円27.4%
中華麺4,716円22.1%
生うどん・そば3,777円17.7%
即席麺2,412円11.3%
乾うどん・そば2,325円10.9%
パスタ1,517円7.1%
他の麺類732円3.4%

いちばん大きいのは、うどんでもそばでもラーメン用の生麺でもなく、カップ麺でした。麺類の予算の4分の1以上が容器入りの麺に向かっていることになります。カップ麺と即席麺を足すと8,245円で、麺代全体の38.7%。ここは麺代の47.5%は外で食べた分だったでも触れた数字ですが、今回はその「38.7%」の中身が、街によってカップ側と袋側に割れることが見えてきます。

なお、7品目を足した金額は21,312円で、公表されている麺類の21,311円と1円だけずれます。これは丸めによる差です。

生うどん・そば 1位は高松市の6,472円 52市でいちばん差が大きい品目

生うどん・そばは、7品目のうち名前のついた品目としては最も街ごとの差が大きい項目でした。最大と最小の倍率は3.18倍。全国平均3,777円に対して、上位はこう並びます。

順位都市年間支出額全国平均比
1高松市6,472円1.71倍
2長野市4,865円1.29倍
3山形市4,861円1.29倍
4前橋市4,751円1.26倍
5名古屋市4,599円1.22倍
6京都市4,439円1.18倍
7堺市4,337円1.15倍
8松江市4,224円1.12倍
9甲府市4,192円1.11倍
10福井市4,185円1.11倍

高松市の6,472円は、2位の長野市を1,600円以上引き離しています。7品目のどれを見ても、これだけ1位が抜けているのは生うどん・そばだけでした。数量で見ても高松市は17,369gで1位(全国平均9,802g)。金額でも重さでも、2位以下と桁が違うのが生麺の世界です。

上位に並ぶのは、うどんの産地として知られる街に加えて、そば処と呼ばれる長野市・山形市・甲府市、そして名古屋市・京都市といった大都市。「生の麺を買って家でゆでる」という習慣が、麺の種類を問わず残っている街が浮かびます。

乾うどん・そば 1位は秋田市 上位は雪の多い街に集中した

乾麺は保存がきく麺です。1位は秋田市の3,943円で、全国平均2,325円の1.70倍。

順位都市年間支出額
1秋田市3,943円
2高松市3,902円
3山形市3,558円
4富山市3,180円
5奈良市2,934円
6長野市2,893円
7新潟市2,843円
8徳島市2,774円
9青森市2,771円
10福島市2,718円

秋田・山形・富山・長野・新潟・青森・福島と、上位10市のうち7市が雪の多い地域の街です。冬にまとめ買いのきく乾麺と、雪が積もる土地の買い物のしかたは、素直に結びつくように見えます。気候が商売や暮らしのかたちを決めていく話は雪の多い土地では、夏の仕事が生まれるでも13社ぶん集めました。

面白いのは2位の高松市です。生うどん・そばで1位、乾うどん・そばでも2位。生と乾の両方で上位に入った唯一の街でした。

中華麺 1位は盛岡市 東北の4市がそのまま並んだ

中華麺は全国平均4,716円で、カップ麺に次ぐ2番目に大きい品目です。

順位都市年間支出額
1盛岡市6,475円
2山形市6,445円
3秋田市6,331円
4青森市6,192円
5富山市5,682円
6新潟市5,620円
7金沢市5,469円
8那覇市5,314円
9仙台市5,185円
10名古屋市5,180円

1位から4位までを東北の4市が占め、5位から7位は富山市・新潟市・金沢市。日本海側と東北で、そのまま1位から7位までが埋まりました。

8位に那覇市が入っているのが目を引きます。中華麺はかんすいを使った麺の総称で、沖縄そばもこの分類に入ります。地理的にはいちばん離れた街が、東北・北陸と同じ列に並ぶ——分類の定義を知っていると腑に落ちる並びです。外で食べる中華そばの側についてはラーメンに一番お金を使う街はどこかにまとめています。

カップ麺 1位は青森市の8,326円 52市中48市で「いちばん買われている麺」だった

カップ麺の1位は青森市の8,326円。全国平均5,833円の1.43倍です。

順位都市年間支出額
1青森市8,326円
2福島市7,723円
3新潟市7,647円
4秋田市7,215円
5仙台市7,189円
6盛岡市7,023円
7大阪市6,795円
8山形市6,781円
9富山市6,531円
10札幌市6,428円

そしてこの品目には、もう一つ大きな特徴があります。52市それぞれで「7品目のうちいちばん金額が大きいのはどれか」を出すと、48市でカップ麺が1位になりました。中華麺が最大になるのが3市、生うどん・そばが最大になるのが1市で、それ以外はすべてカップ麺です。

つまり冒頭の表で「1位の街が7つに分かれた」と書いたのは品目ごとの比較の話で、街の側から見ると、ほとんどの街の麺の主役はカップ麺ということになります。同じ表を縦に読むか横に読むかで、見える景色がまるで違う品目でした。

即席麺 1位は鳥取市 カップ麺との相関はほぼゼロだった

即席麺(袋麺など)の1位は鳥取市の3,493円。ここで上位の顔ぶれが、カップ麺とはっきり入れ替わります。

順位都市年間支出額麺類に占める割合
1鳥取市3,493円16.4%
2熊本市3,410円17.9%
3佐賀市3,321円17.0%
4高知市3,033円15.3%
5堺市2,993円13.6%
6山口市2,915円14.7%
7松江市2,871円12.8%
8大阪市2,842円12.9%
9広島市2,755円13.0%
10大分市2,734円15.3%

上位10市がすべて中国・四国・九州・近畿の街です。カップ麺の上位10市が東北・北陸・北海道に偏っていたのと、きれいに裏返しになっています。

これを数字で確かめると、52市のカップ麺の金額と即席麺の金額の相関係数は0.094。ほぼ無関係です。さらに、即席麺と麺類総額の相関係数は−0.087で、7品目のうち即席麺だけが「麺全体をよく買う街ほど多い」という関係から外れていました。ちなみに乾うどん・そばは0.791、中華麺は0.753、カップ麺は0.689と、いずれも総額としっかり連動しています。

同じインスタントの麺でも、容器に入った麺と袋に入った麺は、まったく別の地図を持っているということです。

パスタ 1位は東京都区部 7品目でいちばん差が小さい

パスタは全国平均1,517円と金額そのものは小さい品目ですが、別の意味で特徴的でした。

順位都市年間支出額
1東京都区部1,924円
2横浜市1,784円
3さいたま市1,772円
4川崎市1,756円
5千葉市1,676円
6名古屋市1,638円
7松山市1,637円
8長野市1,632円
9仙台市1,616円
10新潟市1,592円

上位5市はすべて首都圏の街です。そのうえで、最大と最小の倍率は1.62倍、変動係数は10.5%で、7品目のうちいちばん街ごとの差が小さい品目でした。生うどん・そばの3.18倍・17.3%と比べると、ばらつきは半分程度です。

麺類の総額との相関も0.222と弱く、パスタは「麺をよく買う街だから多い」わけでもありません。地域性がいちばん薄い麺、と言い換えてもよさそうです。輸入・量産型の乾麺で、どこのスーパーでも同じ棚に同じように並ぶ商品だから、と考えると説明はつきます。

カップ麺が首位にならなかった4つの街

52市のうち、カップ麺以外が最大になった4市を並べます。この4市の顔ぶれが、そのまま麺の地域性の見本になっています。

都市最大の品目金額麺類に占める割合カップ麺
高松市生うどん・そば6,472円26.7%5,265円
金沢市中華麺5,469円25.6%5,411円
横浜市中華麺4,791円23.9%4,719円
那覇市中華麺5,314円30.7%4,997円

高松市だけが1,200円以上の差をつけていて、あとの3市は中華麺とカップ麺が数十円〜百円台の僅差です。金沢市は58円差、横浜市は72円差。「カップ麺の国」の中で、はっきり別の麺が主役だと言えるのは高松市だけでした。

那覇市は麺類に占める中華麺の割合が30.7%で、これは52市で最も高い比率です。ひとつの品目にここまで寄っている街は他にありません。

麺類の総額で見ると、上位は東北と北陸に集まる

最後に、7品目を合計した麺類全体の金額です。

順位都市麺類の年間支出額
1山形市26,372円
2秋田市25,669円
3青森市25,005円
4盛岡市24,387円
5高松市24,222円
6新潟市24,035円
7富山市23,877円
8福島市23,642円
9長野市22,859円
10仙台市22,485円

全国平均は21,311円。上位10市のうち8市が東北・北陸で、そこに高松市と長野市が割って入るかたちです。ただし、総額の上位に来る街と、各品目の1位の街は必ずしも一致しません。総額1位の山形市は、7品目のどれでも1位を取っていない(中華麺2位、生うどん・そば3位、乾うどん・そば3位)。まんべんなく上位に入ることで総額1位になった街です。

なぜこうなるのか 編集部の見立て

ここから先は、数字から読み取れることと、その解釈を分けて書きます。以下は編集部の見立てです。

① 麺の品目は「保存のしかた」で地図が分かれている。 生麺は日持ちがせず、その日のうちに使う前提の買い物です。乾麺とカップ麺・即席麺は、買い置きができます。生うどん・そばの上位に「うどん・そばを日常的に食べる街」が並び、乾うどん・そばの上位に雪の多い街が並ぶのは、麺の好みというより買い物の間隔のちがいが効いているのではないか、と考えています。

② カップと袋の差は、売り場と世帯のかたちに出る。 カップ麺は1食分、袋麺は複数食分をまとめてゆでる前提の商品です。相関係数0.094という「無関係さ」は、両者が同じ「インスタント麺需要」を奪い合っているのではなく、別々の食べ方に対応していることを示していると読めます。

③ 生麺の強い街には、麺をつくる事業者がいる。 生うどん・そばで高松市が突出しているように、家庭が生麺を買える街には、それを毎日つくって卸す製麺の担い手が必要です。買う側の数字は、つくる側の層の厚さの裏返しでもあります。地域の食品づくりを続ける人たちの話は、揚げたての油揚げを世界へやのどぐろといえば島根などのインタビューでも聞いてきました。

④ パスタだけが地域の外側にある。 地域性がいちばん薄いのがパスタでした。原料も流通も全国(あるいは国外)で共通しているものは、街ごとの差が生まれにくい。逆にいえば、差が大きい品目ほど、その土地の供給側の事情が残っているということになります。

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出典と注記

注記は5つあります。

  1. 「県」ではなく「街」の数字です。 対象は都道府県庁所在市および政令指定都市の52市で、都道府県全体の平均ではありません。県内の他の市町村を含めれば結果は変わり得ます。
  2. 家庭で購入した分だけの集計です。 外食で食べた麺や、弁当・惣菜などの調理食品に含まれる麺は、この品目には入りません。
  3. 「他の麺類」は分類の残りをまとめた費目です。 特定の麺を指すものではないため、1位の街を紹介するにとどめ、性格づけはしていません。
  4. 構成比・倍率・変動係数・相関係数は、いずれも統計局の公表値ではありません。 公表されている金額をもとに、Shikisai編集部が算出しました。
  5. 丸めによる誤差があります。 7品目を足した金額は、公表されている麺類の金額と最大2円ずれます(全国平均では1円)。本文の構成比は、各市の麺類の公表値を分母として計算しています。

麺の話は「うちの街の麺がいちばん」という形で語られがちです。けれど52市ぶんの数字を7品目に割って並べてみると、出てきたのは1位が7つの街に散らばり、そのうえでほとんどの街の主役はカップ麺という、少し意外な地図でした。あなたの街の麺の棚は、どの品目に厚いでしょうか。

この記事を書いた人

Shikisai編集部

Shikisai編集部

「ありのままの想いが地域と未来を紡ぐ」をコンセプトに、地域で働く経営者の想いと取り組みを取材・発信しているWebメディアです。補助金・認証制度などの記事は、行政機関の公表情報(一次情報)を編集部が確認のうえ執筆しています。

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