主食は1kgいくらか 米507円・パン808円・カップ麺1,364円 街ごとの米の単価は最大1.4倍ちがった【家計調査】

主食は1kgいくらか 米507円・パン808円・カップ麺1,364円 街ごとの米の単価は最大1.4倍ちがった【家計調査】

食料品の値段の話をするとき、私たちはたいてい「いくら払ったか」で語ります。けれど同じ1万円でも、たくさん買った結果なのか、良いものを少し買った結果なのかで、意味はまるで違います。

総務省統計局の家計調査には、品目ごとの支出金額購入数量が、どちらも都市別に公表されています。両方が並んでいるということは、割り算ができるということです。金額を数量で割れば、その街の家庭が実際に1kgあたりいくらの主食を買っているかが出ます。

やってみると、まず全国平均でこうなりました。米は1kg 507円、パンは808円、そしてカップ麺は1,364円。そして街ごとの差も小さくありません。米の単価が最も高いのは横浜市の584.6円で、最も低い街とは約1.4倍の開きがありました。

以前の記事「パンにお金を使う街ランキング1位は神戸市」では同じ表を「金額」で読みましたが、今回は「量」と「単価」で読み直します。同じデータから、まったく別の地図が出てきます。

主食の「1kgあたりの値段」ランキング【全国平均】

まず品目そのものを比べます。家計調査の全国平均(二人以上の世帯・2023〜2025年平均)の金額を、同じ表の数量で割った値です。

順位品目1kgあたり年間支出額年間購入量
1位カップ麺1,363.8円5,833円4,277g
2位他のパン(菓子パン・惣菜パンなど)1,154.3円23,530円20,384g
3位即席麺(袋めん)865.8円2,412円2,786g
4位もち838.6円1,787円2,131g
5位パン(計)807.6円34,242円42,398g
6位乾うどん・そば795.1円2,325円2,924g
7位麺類(計)632.6円21,311円33,686g
8位中華麺569.2円4,716円8,286g
9位食パン556.1円10,713円19,265g
10位507.0円30,111円59.39kg
11位パスタ475.4円1,517円3,191g
12位生うどん・そば385.3円3,777円9,802g
13位小麦粉321.0円651円2,028g

一番の発見は、1kgあたりで見ると最も高い主食はカップ麺だったことです。1,363.8円は、米の2.7倍にあたります。

もちろんカップ麺は麺だけの重さではなく、かやくやスープ、粉末も含んだ製品の重量です。それでも、この並び方には一貫した傾向が読み取れます。手をかけずに食べられる状態に近いものほど、1kgあたりの値段が上がる。小麦粉(321.0円)→ 生うどん・そば(385.3円)→ 乾うどん・そば(795.1円)→ 即席麺(865.8円)→ カップ麺(1,363.8円)と、加工が進むほどきれいに階段を上がっていきます。

私たちが払っているのは食材の値段だけではなく、「調理の手間をどこまで肩代わりしてもらうか」の値段でもある——そう考えると、この表はかなり率直な家計の記録です。

米の単価が最も高い街は横浜市の584.6円

ここから街ごとの数字に入ります。米は家計調査で唯一kg単位の数量が公表されている品目なので、単価がそのまま読み取れます。

順位都市1kgあたり年間支出額年間購入量
1位横浜市584.6円29,840円51.04kg
2位東京都区部575.7円27,080円47.04kg
3位名古屋市574.8円32,884円57.21kg
4位那覇市568.6円34,632円60.91kg
5位川崎市558.2円28,143円50.42kg
6位大阪市556.2円30,691円55.18kg
7位広島市554.0円27,091円48.90kg
8位神戸市550.7円29,562円53.68kg
9位福岡市548.4円30,404円55.44kg
10位静岡市548.4円35,031円63.88kg
11位前橋市542.6円34,083円62.81kg
12位千葉市539.3円30,547円56.64kg
(参考)全国平均507.0円30,111円59.39kg

上位に並んだのは、横浜市・東京都区部・名古屋市・川崎市・大阪市・広島市・神戸市・福岡市——大都市がきれいに集まりました

対照的なのが福島市です。福島市は購入量が81.47kgで52市中1位、支出額も34,504円と多いのですが、1kgあたりに直すと423.5円になります。たくさん買っている街ほど、1kgあたりは手頃という関係が見えます。

なぜこうなるのか。決め手はデータの中にはありませんが、考えられる筋道はいくつかあります。産地に近い街では地元産の米が手に入りやすいこと。大きな袋でまとめて買う習慣が残っていること。反対に大都市では、少量パックや無洗米、銘柄を指定した購入が選ばれやすいこと。同じ「米を買う」という行為でも、街によって買い方の形がずいぶん違うのだろうと思います。

米の単価が最も高かった横浜市には、米を扱ってきた古い商いも残っています。横浜市菊名の小泉麹屋は明治初期の創業で、150年以上続く麹屋です。五代目の小泉聡さんによれば、150年前の商売は「地域の人が持ってきた米を米麹に加工してお渡しする」形だったといいます。いまも横浜市内で手作りの麹をつくる店は2軒しかないそうです。米の値段の話は、実はこうした加工の歴史とも地続きです。

奈良県の平宗は1861年創業の柿の葉ずしの店で、シャリには100%奈良県産のヒノヒカリを使っています。「粒がそろっていて光沢がある」から選んでいるという話は、米が「重さ」ではなく「銘柄」で選ばれる世界を教えてくれます。単価という数字の裏には、こうした選び方の違いが積み重なっています。

パンは「金額の街」と「単価の街」が別だった

パンでも同じ計算をすると、金額のランキングとは顔ぶれが入れ替わります。

順位都市パン1kgあたり年間支出額年間購入量
1位福島市903.8円29,666円32,824g
2位仙台市896.1円31,443円35,088g
3位福井市875.3円33,964円38,803g
4位東京都区部874.7円37,737円43,145g
5位宇都宮市868.8円32,304円37,183g
6位さいたま市864.5円38,856円44,948g
7位富山市859.6円35,620円41,436g
8位高知市854.3円32,798円38,390g
9位山形市854.3円27,965円32,733g
10位神戸市849.6円41,967円49,396g
(参考)全国平均807.6円34,242円42,398g

一方、パンをでたくさん買っている街は、1位が堺市の52,737g、2位が大阪市51,901g、3位が大津市51,790g、4位が京都市49,484g、5位が神戸市49,396g。近畿の街が上位を占めます。

ここに、この記事でいちばん面白い対比があります。パン代の金額1位である神戸市(41,967円)は、単価では10位(849.6円)、量では5位。つまり神戸市は「高いパンを少し」でも「安いパンを大量に」でもなく、量と単価の両方が高い水準で揃っている街でした。

対して福島市は、パンの購入量では52市中51位ながら、単価は1位。買う回数や量は多くないけれど、選ぶ一つひとつの単価は高い——という読み方ができます。金額だけを見ていたら、この違いは出てきません。

食パンと菓子パンでは、1kgの値段が2.1倍ちがう

パンの内訳を分けると、差はさらにはっきりします。全国平均で食パンは556.1円/kg、菓子パンや惣菜パンを含む「他のパン」は1,154.3円/kg。同じ1kgでも2.1倍の開きがあります。

「他のパン」の単価が最も高いのは東京都区部の1,315.5円で、以下、仙台市1,259.6円、福島市1,246.0円、那覇市1,236.7円、山形市1,234.8円と続きます。食パンでも東京都区部が617.0円で1位、2位が高知市616.0円、3位が神戸市612.9円でした。

東京都区部が両方で1位というのは、店の数と種類の多さを思えば納得のいく結果です。素材や作り方で個性を出す菓子の世界も、都市部から広がってきました。東京・麻布十番の麻布野菜菓子は「野菜で作ったちょっとだけ贅沢なお菓子」を掲げ、最中の皮に生の素材をのせて焼く商品を作っています。グラフィックデザイナーである花崎さんが「お菓子作りの素人の視点だからこそ、いい意味で期待を裏切るものが生まれる」と語るような挑戦が、単価の高い棚をつくっているのでしょう。

素材のほうから単価が上がることもあります。野尻ケイクは白砂糖を使わず、自家製の甘酒やてん菜糖、キビ砂糖で甘みをつけ、多くの洋菓子をヴィーガンかつグルテンフリーで作っています。何を使うかを決めることは、値段を決めることでもあります。

麺類の単価1位は福井市 量の1位は高松市

麺類でも、単価と量で街が入れ替わります。

順位都市麺類1kgあたり年間支出額年間購入量
1位福井市747.8円20,398円27,276g
2位秋田市700.7円25,669円36,634g
3位福島市694.7円23,642円34,030g
4位金沢市684.4円21,342円31,182g
5位高知市680.7円19,876円29,199g
6位松山市679.0円20,174円29,711g
7位宇都宮市678.6円21,626円31,867g
8位山形市670.2円26,372円39,347g
(参考)全国平均632.6円21,311円33,686g

麺類をで最も買っているのは高松市の41,528g(全国平均の1.23倍)。ところが単価では583.3円で46位です。うどんの街として知られる高松市は、麺を「量」で買っている街だと数字は語っています。

香川では、麺の材料そのものが暮らしの近くにありました。しょうゆ豆を作る黒川加工食品の3代目・平山社長は、祖父の世代について「夏は米を作り、冬は裏作で小麦やソラマメを作っていました」と話します。畑の裏作に小麦がある土地と、麺を量で買う家庭。この二つは、たぶん無関係ではありません。

反対に福井市は、麺類の購入量は27,276gで52市中51位ながら、単価は1位。量は控えめでも、1kgあたりでは全国平均の1.18倍を払っています。

カップ麺は北日本、袋の即席麺は西日本に分かれた

即席の麺類は、「カップ入り」と「袋入り」できれいに地図が分かれました。

カップ麺の支出額上位は、1位が青森市の8,326円、2位が福島市7,723円、3位が新潟市7,647円、4位が秋田市7,215円、5位が仙台市7,189円、6位が盛岡市7,023円(全国平均5,833円)。上位6市すべてが東北・北陸信越の街です。

即席麺(袋めん)の支出額上位は、1位が鳥取市の3,493円、2位が熊本市3,410円、3位が佐賀市3,321円、4位が高知市3,033円、5位が堺市2,993円、6位が山口市2,915円(全国平均2,412円)。今度は中国・四国・九州の街が並びます。

同じ即席麺でも、器ごと売られるものは北日本、袋のものは西日本。1kgあたりで見るとカップ麺は1,363.8円、袋の即席麺は865.8円で、1.6倍の差があります。手間を減らす方向にお金を使う街と、鍋で作る前提の袋めんを選ぶ街——即席麺の棚の前で、地域ごとの生活のリズムが分かれているのかもしれません。

ラーメンについては外食の数字も併せて読むと立体的になります。ラーメンに一番お金を使う街はどこかでは、外食としての中華そばの支出額を都市別にまとめています。

小麦粉を最も買う街は長野市 全国平均の1.8倍

粉のまま買う量にも、はっきりした地域差が出ました。

小麦粉の年間購入量は、1位が長野市の3,649g。全国平均2,028gの1.80倍です。2位が津市2,700g、3位が千葉市2,612g、4位が大分市2,437g、5位が浜松市2,411g。支出額でも長野市が1,025円で1位(全国平均651円)と、量・金額ともに頭ひとつ抜けています。

小麦粉は1kgあたり321.0円で、今回並べた13品目の中で最も単価の低い品目でした。粉で買って家で仕上げるほど、同じ量の主食は安く手に入る計算になります。長野市の数字は、家庭で粉から何かをつくる習慣が、いまも他の街より色濃く残っていることを示しているのでしょう。

粉を挽く仕事は、かつて食べ物屋の日常業務でもありました。油揚げ専門の谷口屋の代表・谷口誠さんは、創業のころを「豆腐を作りながら、荒物屋や山仕事、蕎麦挽きや味噌作りと色々とやっておりました」と振り返ります。粉にする、豆をひく、味噌を仕込む——家庭と店の境目が、いまよりもずっと薄かった時代の記憶です。

乾めんは秋田市、生めんは高松市

同じうどん・そばでも、「乾」と「生」で街が入れ替わるのも面白いところです。

乾うどん・そばの購入量は、1位が秋田市の5,370g、2位が山形市5,237g、3位が高松市4,703g、4位が長野市4,359g、5位が福島市4,159g(全国平均2,924g)。北日本と信越の街が上位に来ます。

生うどん・そばの購入量は、1位が高松市の17,369g(全国平均9,802gの1.77倍)、2位が堺市13,611g、3位が大津市12,537gと、近畿・瀬戸内が中心です。

1kgあたりでは乾うどん・そばが795.1円、生うどん・そばが385.3円で、乾めんの方が2.06倍高くなります。乾めんは水分を飛ばした状態で売られるため、同じ1kgでも「中身」の量が違うことを踏まえて読む必要があります。それを差し引いても、保存のきく乾めんを常備する街と、その日に茹でる生めんを買う街という、暮らし方の違いが見て取れます。

この数字を読むときの4つの注意

引用・共有していただく際に、押さえておきたい点をまとめます。

  1. 「県」ではなく「街」の数字です。 対象は都道府県庁所在市と政令指定都市の52市。「神奈川県が1位」ではなく「横浜市が1位」が正確な書き方になります。
  2. 単価は編集部が計算した値です。 統計局が公表しているのは金額と数量で、1kgあたりの単価は同じ表の2つの数字から割り算で求めました。四捨五入して小数第1位まで示しています。
  3. 家庭で購入した分だけの集計です。 外食や、弁当・おにぎり・調理パンなどの調理食品に含まれる主食は入りません。外食にお金を使う街ランキングと合わせて読むと、街ごとの食卓がより立体的になります。
  4. カップ麺などの数量は製品全体の重量です。 かやくやスープを含むため、麺だけの単価ではありません。品目ごとの絶対値より、街ごとの差や品目間の順序を見るのが実用的です。

その上で、「金額」ではなく「1kgいくら」に直すと、同じ表からまったく違う街の名前が浮かび上がるのは確かです。あなたの街は、量で買う街でしょうか、それとも単価で選ぶ街でしょうか。

出典

本記事の金額・数量はすべて上記の公表データによります。1kgあたりの単価は、同じ表の金額を数量で割ってShikisai編集部が算出した値です。

この記事を書いた人

Shikisai編集部

Shikisai編集部

「ありのままの想いが地域と未来を紡ぐ」をコンセプトに、地域で働く経営者の想いと取り組みを取材・発信しているWebメディアです。補助金・認証制度などの記事は、行政機関の公表情報(一次情報)を編集部が確認のうえ執筆しています。

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