大手企業の管理職として多忙な毎日を過ごしながら、副業としてスタートした株式会社Trust Assets。「ありがとう」で貯まる「絆ポイント」の循環で、一人一人が持つ潜在能力を最大限発揮出来る環境が整う、と語る高木社長は今、若い世代、子どもたちにも目を向けています。ビジネスフィールドの枠を超えて、学習塾でもその可能性を模索する「想い」の源をお聞きしました。
企業の共通課題から見えてきた社会課題
株式会社Trust Assetsを立ち上げたのは何がきっかけになったのですか?
高木:2000年4月に新社会人としてビジネスキャリアをスタートさせました。その後15年間プレイヤーとして、8年間マネージャーとしてずっと国内営業畑を歩み、特に管理職になってからは、クライアント様の経営層とお話する機会が増え、様々な経営課題、地域課題に触れました。解決に向けて真因を深掘りしていたのですが、共通項を探した時、その最大公約数が「ヒト」だと気づいたんです。「ヒト」に関わる諸課題、いわゆる人事戦略の領域は一朝一夕には解決出来ず、自分なりに悩み、考え、セミナーに参加したり、本を読んだり、動画を見たりして、「ヒト」の課題とその解決法について学びました。そしてその学びを蓄積していくようになりました。勿論、学ぶだけでは自己満足で終わるので、現業において自らの学びを自組織やメンバーに共有していたところ、あるメンバーから、「高木さんのメソッドを言語化、マニュアル化して欲しい」と頼まれたのです。起業というより、まずは自身の想いを形にして表に出したということがひとつのきっかけです。驚くことに書き始めると筆が止まらず、あれよあれよと気付けば6万字もの長編論文になってしまいました(笑)。
6万字!それは本になりますね。
高木:そうなんです。この量なら本を出してみようと思い、幻冬舎さんに持って行ったところ出版が決まり、そのタイミングで起業、拙著は2022年5月から市販されています。
販売を始めたときはまだ会社にも勤めていたのですよね。
高木:2021年1月に務めていた会社で副業が解禁になりました。奇跡的に本の原稿がまとまるタイミングでしたので、会社に相談、申請の上、副業を始めた、という流れです。今もその会社に管理職として勤務していますし、このポジションにいて気付かされることも多いので退職なども今のところ考えていません。
今も!?管理職は多忙と言われますが、その傍らの事業は大変ではないですか。
高木:40代後半になり、自身のキャリアがあと20年、折り返し地点を過ぎたなと思いました。若い頃は自分を高める事、何かを得る事に関心が向いていて、もっとこういうことをしたい、こうなりたいといった発想でしたが、折り返した後半戦と考えると、残りの20年、30年は今まで自身が得てきたものを多くのヒトや組織に還元したいという使命感を果たす時間に充てたいと思うようになりました。MVVの考え方に近いかもしれませんね。なので、特に負担は感じていません。自分が得たものをイチ企業、イチ組織だけでなく、もっと多くの企業、組織、ヒトそして社会の課題解決に繋げていきたいと思っています。
高木さんの思う一番の社会課題とはどんなことですか。
高木:「個のチカラ」が発揮しきれていないということです。それぞれのヒト、個が持つ潜在能力がまだまだ眠っている。かつてそんな一子相伝の漫画がありましたね(笑)。
冗談はさておき、どんなヒトでも、もっと主体的に、イキイキと周囲と関わることで、その潜在的なチカラを発揮し、それぞれの得意領域で企業や組織、社会に貢献できるのではないかとずっと思っていました。今、メディアで悲しいニュースを聞くことが多いのですが、失われた人、その人の存在が無くなることの社会における損失の大きさを痛感しています。この人たちがイキイキと活躍し、持てるチカラを存分に発揮していたら、社会にどんな大きな影響を及ぼしただろう、と。
組織目標達成を目的とした戦略論、組織論、マーケティング論などは巷に溢れ、日々ブラッシュアップされていますが、いわゆる「ピープルマネジメント」の領域はまだまだ日本では未開発と言わざるを得ません。
私自身も、プレイヤーとしての営業経験、そしてマネージャーとしての組織開発、人財育成経験から、関わった多くのビジネスパーソン、お客様、部下、メンバー達が、「想定を大きく上回る無尽の活躍をするケース」や、逆に「想定を大きく下回るローパフォーマンスに終始するケース」をたくさん見てきました。
つまり、その時の環境やマインド、周囲との関わり方ひとつで、そのヒトの能力がどこまで引き出せるか、アウトプット出来るかが大きく異なる、ということを教えてくれたんです。
情けは人の為ならず。絆ポイントでつなぐ。
著書のタイトルにもなっている「絆ポイント」とはどのような概念なのですか。
高木:一言でいうと「ありがとう」と「ごめんなさい」を中心に整理される、人間関係におけるヒトとヒトの絆の強さ、レベルを表す比喩表現です。いわゆる「情けは人の為ならず」とも言える「返報性の原理」ですね。ヒトの力を最大限引き出す為には、周囲との関わり方はとても重要です。多くの関係者がその人を応援してくれる環境を、応援される本人自らが作る、そのための基本となる概念です。
自分のためだけというような利己の発想が根底にある人は結局周囲の協力や応援を得られず、大きな活躍は出来ないでしょう。どんなに高い能力がある人でも人の支えがあってこそ何かを成し遂げることができる、裏を返すと、一人では何も出来ないということでもあります。
ギブ&テイクの精神というイメージでしょうか。
高木:そうですね。最後にテイクがなくてもギブの精神が大事です。テイクはせいぜいギブの3割程度と割り切るべきです。個の力を発揮するためにもまず「ありがとう」を言ってもらえるように行動することで、人との関わりが円滑になり、自分のチカラを最大限に活かせる環境が整います。
組織の中でも「絆ポイント」は活かすことができそうです。
高木:組織の中では個の力を最大化することが組織力の最大化に繋がります。
個のチカラを最大化するには、個と個の関係性を絆ポイントの概念を軸に深め、良好な関係性、信頼関係を上司部下間、同僚間などで構築していくことが大切です。
「上司ガチャ外れた」などと若年次社員に言われる世の中ですし、上司部下間の関係性構築は最も重要だと言えます。時に課題解決のカウンセリング、時にキャリアビジョン構築のコーチング、時に現業の目標達成に向けたティーチング、と使い分けながら進める「1on1」は、もはやビジネスフィールドの公用語になりつつあります。
人が育ち、活躍する環境を企業が作っていくために、新入社員の頃から「何の為に、誰の為に、この会社にジョインし、今、何を組織から期待され、何が自分を動かす原動力になっているのか」を問い続け、職業使命感を持ち続けることが大切です。また、公平かつ公正で合理的、客観的な人事評価制度を整えること、組織エンゲージメントを定点観測して、組織の病巣を特定すること、など、やるべきことは多岐に亘りますが、そのような取り組みを支援するラインナップを用意しています。
2023年4月からは日本においても全ての上場企業に人的資本に関する情報開示が義務付けられました。ヒトという経営「資源」は、企業、組織が事業の為に使用して使い切り枯渇していく、石油や天然ガスのような、文字通り「資源」ではなく、企業、組織の持続的成長、発展の為に、その価値と可能性をどんどん拡大していく、いわば投資対象の「資本」に変わったと捉えなければいけないと思います。「人的資本経営」とはまさに、ヒトへの投資を加速し、個の潜在能力を最大限発揮してもらうことで、企業、組織の価値を最大化していく経営を指しています。
しかし、この「人的資本に関する情報」をどのようにまとめ、開示すれば良いかという基準がまだ明確ではありません。迷われている経営者の方も多いと感じ、そのひとつの指針となる国際規格「ISO30414」リードコンサルタント、アセッサーの資格も取得しました。HCプロデュース社の公式パートナー企業としても認定されています。
個の力の最大化で成長し続ける社会をつくる
企業への人事評価制度構築支援や1on1サポートツール展開、組織エンゲージメント定点観測等の人事戦略関連のコンテンツ以外に学習塾へのサービスも展開されていますが、どういった経緯で始められたのですか。
高木:1on1、個と個が継続的な対話の習慣を以て、その関係性を良好に保つ、この仕組みはもっと早く、もっと若い時から、お互いの良さを引き出し合う為に必要ではないかと感じ世代を遡っていくと、実際に対話習慣が根付きつつある学習塾にたどり着きました。授業、教室型の学習塾も、子供たちの多様性、多様な価値観の氾濫を受けて、個別指導型へ転換されてきています。子どもの頃から1on1を経験し、コーチングを受けながら自分がどうなりたいかと考える習慣を作ることで、将来の夢を叶えることができ、今度はその子自身が学習塾に戻って、導く側となるのではないかと。また民間企業に人の心への火のつけ方を知っている学生が入社することで、個の力を引き出せる組織長、組織、会社に成長していくのではないか、と。
本当の意味での人を作るというか、人の本質にこだわりたいといったことでしょうか。
高木:キレイゴトに聞こえるかもしれませんが、そういったことですね。子どもへの1on1が将来的には社会全体の各階層、各組織体にも拡散し、組織や社会の中での自身の役割に皆が気づき、その役割を果たしたいと思える社会になっていくのではないかと思います。自分がよければいいという利己的な考えではなく、利他の精神で、人間一人一人の潜在的な力が発揮できる環境を創り、支え合い、成長し続ける社会にしていきたいと思っています。
自身がイキイキと、その持てるチカラを発揮し、組織・社会になくてはならない存在になる、その為には存分にチカラを発揮できる周辺環境を自ら創りに行く、具体的には周囲からたくさんの「ありがとう」をもらう活動を地道に継続し、自分のファンを増やしていくこと。言い換えれば「絆ポイント蓄積活動」を展開する。ホームゲームで多くのサポーターに支えられてチカラを発揮するスポーツチームを想像して頂けると分かり易いはずです。
まとめるとこんなところでしょうか。
編集後記
情けは人のためならず。この言葉は皆小学生の頃には一度は耳にしたことわざではないでしょうか。しかし大人になっていくにつれて、いかにお金を得るか、自分が利益を得るかということで行動を決めてしまいがちです。そうではなく、利他の精神で「ありがとう」を言ってもらえるように行動する、テイクがなくてもギブの精神で動くことで自分の力が最大限に発揮されるという考えを広めたいという高木社長の思いが強く響いたインタビューでした。何歳からでも貯められる絆ポイント。あなたも今日から絆のポイ活始めてみませんか。