「地域に豊かさを」という理念を掲げる石塚直樹が、地域色彩ラジオを通じて発信したい想いを語る特別回。経営者との対話から見えてきた“縁の力”、ラジオというメディアが生む熱量、そして今後構想するスタジオ設立や高校生支援プログラムの背景に迫ります。横浜SDGsデザインセンターとの連携や、若者との共創、地域企業との持続可能な関係構築など、単なる情報発信に留まらない“地域を豊かにする仕組み”が語られます。顔の見えるつながりを大切にしながら、教育・経済・社会の接点をローカルで生み出していく——そんな未来志向の地域づくりに挑む石塚直樹の想いに触れる30分。
この回は、少し変わった形で収録されています。ゲストを呼ぶのではなく、Shikisaiプロデューサーの石塚直樹が話し、編集部の石川さんがファシリテーターを務めるという構成です。
テーマは、Shikisaiのこれからと、経営者と地域の関わり方でした。
目次
ラジオは「Zoomをそのまま流してもいいのでは」から始まった
Shikisaiはもともとウェブメディアとして始まりました。記事を作るために、Zoomで経営者にヒアリングをしていきます。
そこで気づいたことがありました。
ヒアリングの時点で盛り上がり、話し手の熱量が上がっていく。だったら、このZoomをそのまま流してもいいのではないか。
それがラジオ版の出発点でした。そして石塚いわく「その思惑は見事にヒットした」。
手応えとして挙げられたのは、2つです。
1つはつながり。対談で仲良くなって「今度飲みに行きましょう」となり、仕事に繋がるケースも結構ある。発信の手伝いをして終わりではなく、その人の本心に触れる機会になっているから生まれるものだ、と。
もう1つがSEOです。メディアとしての検索の強さが上がってきたことで、自社の情報がなかなか上位表示されない人が、Shikisaiを通して上に出る状況を作れた。
ここが重要だと石塚は言います。「発信ができますよ」ではなく、具体的なメリットとして伝えられるようになった。
30分の音声には、その前の階段が要る
一方で、課題もはっきり語られました。
30分の音声はコンテンツとしては良い。けれど見ず知らずの人がいきなり30分聞いてくれるかというと難しい。映像もないので、とっつきづらさがある。
だからもう一歩、階段が必要だ、と。動画を作る、短く切り抜いて興味を持ってもらう、あるいはもともとウェブ広告の会社なのだから広告を使って閲覧数を増やす。
その具体策として準備していたのがスタジオでした。ラジオの対談ができ、グリーンバックも揃えて動画も撮れる場所。
ラジオ収録と動画撮影を一気通貫で行い、ラジオコンテンツも動画コンテンツも作れるようにする。それによって興味を持ってもらう入口から、深く聞いてもらい、成約に結びつけるまでの足りないパーツを埋めたい、という構想です。
石川さんも営業の現場で手応えを感じていました。「ラジオ番組どうですか」という提案よりも、集客から成約や採用というゴールまで一気通貫でサポートする提案のほうが、興味を持ってくださる方が多い。
「3年前から更新が止まっているYouTubeチャンネル」問題
なぜ自社発信ではなく別メディアに出るのか。その理由として語られた話が、多くの会社に心当たりのあるものでした。
SNSが発達して誰でも発信できる世の中になったとはいえ、自社でSNSを立ち上げてコンテンツを撮って出していくのはハードルが高い。そして何より継続が大変。
「動画10本くらいで、3年前から更新が止まっています」という残骸のようなYouTubeチャンネルは、いろいろあると思う。
石塚の立場は、それを責めるものではありません。そうなってしまうのは仕方ないとした上で、こう考えます。
Shikisaiという場に出せば、昔撮ったコンテンツが残り続ける。それは昔のものだから更新が止まっていても構わない。ちゃんと残って、定期的に聞かれる状況を作れること――それが別メディアで発信するメリットの一つだ、と。
名刺交換だけの会と、地域のコミュニティは何が違うのか
話題は、石塚が横浜で参加している団体――ロータリークラブと青年会議所に移ります。
まず石塚は、否定的な見方があることを認めます。「経営者のコミュニティに参加しても大した人脈も作れず意味がない」と言われることもあるし、そういう側面も確かにある。
都内で会社をやっていた頃に経験したのが、まさにそれでした。
一斉に名刺交換をして、誰だったかも分からないまま終わる。後日「こういうサービスに興味ないですか」と連絡が来る。
横浜に移ってから、そこが違ったといいます。ポイントは地域ごとのコミュニティであることでした。
都内の経営者コミュニティには同業の人が集まりやすい。一方、地域ごとのつながりで集まる場は軸が違う。いろいろな業種の人がいて、しかも――
商売をうまくいかせることがメインの目的のコミュニティではない。奉仕活動やまちづくりを掲げている団体だから。
そして、ここが逆説になります。
会社経営で考えれば、ある意味では無駄なことをやっている。だからこそ、そこでできたつながりは信頼がおける。顔の見える関係がたくさんできて、結果的に新しいビジネスにつながる。
江戸時代は、藩の中で経済が回っていた
なぜ「地縁」なのか。石塚はここで、かなり長い時間軸の話をしています。
人は一人では生きていけない。だから縁がある。血縁、会社というコミュニティの縁、学校の縁、業界団体――何らかの共通項で人は集まる。そのなかで地縁がとても大事なのではないか、と。
根拠として引かれたのが、江戸時代でした。
今の「日本」という形が最初からあったわけではない。各地域――藩の中で経済を回してうまくやっていた。そして、それで実は回っていた。
それが近代化のなかで「日本」という括りになり、さらに国家間の話になっていく。すると何が起きるか。
一番取っていく人が一番儲かる、勝者総取りの状態になる。その勝者がめちゃくちゃ強くなっていく。それは国家レベルでも、世界レベルでも。
それが技術発展のエンジンになってきたことも、石塚は認めています。そのうえで――
SDGsという言葉が出てきたのは、行き過ぎた資本主義をベースにした開発は「このままでは良くないのではないか」という考え方が出てきたということ。
だとすれば、もっと地域にフォーカスして、地域内で経済が回る状態を作らなければいけない時代なのではないか。
そう考えたときに、地域の経営者と良い形でつながれる場がロータリーや青年会議所だった――というのが、参加している理由でした。
地域のつながりは、薄れているのか強まっているのか
石川さんが「地域ごとのつながりは薄れているのでは」と問うと、石塚の答えは逆でした。
「逆に強まっているのかもな、という気もします」
理由はこうです。ネットで全国どこの人とでもつながれるからこそ、薄いつながりの価値が減ってきている。だからこそ――
近くて、いつでも会えて、その人がどういう人か分かっている強固なつながりの価値が、より高まっている。
薄まっているというより、再認識されてきているのではないか、と。
時代の潮流としても、地方創生という言葉が広がり、日本全体よりも一つ一つの地域にフォーカスする流れが来ている。自治体のニュースが注目を浴びるようになってきた、とも指摘していました。
その理屈も明快です。
小さい単位だからこそ変えられるはず。逆に言えば、小さい単位ですら変えられないなら、全体も変えられない。
だから今後、地域に貢献しながらやっている企業の価値そのものが上がっていくのではないか――というのが石塚の見立てでした。
スタジオを「レンタルスペース」にする理由
「地域に豊かさを」という理念を掲げながら、直接この街を豊かにできているかというとそこまでのことはできていない――石塚はそう認めます。
そのなかで気づいたことがありました。作ろうとしているスタジオを、空いているときは地域の方にレンタルスペースとして貸すという構想です。
これを思いついたときの感覚が、そのまま語られています。
リアルな場所を持って、そこで地域の方が場所代以上の価値を感じ、新しい付加価値を生み出していく。これがまさに地域を豊かにすることだ。
そこから、実地を伴ったリアルな場所の展開を伴うビジネスをやっていきたい、という方向が出てきました。
高校生の団体を、税金なしで回る形にする
もう一つ挙げられたのが人づくり――教育に近い領域でした。
ウェブリカは横浜市のSDGs中間支援組織横浜SDGsデザインセンターの運営に携わっています。そのなかに未来デザイン部という高校生の団体がありました。
この団体は市の予算がついて運営されているものです。しかし――
いつまでも税金を使って運営できるわけではないので、どこかで終わりが来てしまう。
一方で、そこで活動する高校生たちは本当に目を輝かせながらやっている。だから、税金の予算がなくても回る形にしたいと石塚は考えます。
構想は具体的でした。一般社団法人化して、企業スポンサーをつけて回る形にする。
そこにある目的も、地域に返ってきます。参加しているのは横浜市内の高校生です。普通の学校生活ではなかなか得られない経験を提供し、大人になって活躍してもらう。横浜市の高校生が活躍できる人材になること自体が、地域への貢献だと。
背景には、採用市場の変化への危機感もありました。人材不足のなか、大学1年生に内定を出してインターンで囲い込むような動きも実際に出てきている。その良し悪しはあるとしても、そういう時代が来ているのは事実だ、と。
だから早いうちから、社会ですぐ活躍できる観点を養う領域にも関わっていきたい――というのが石塚の考えでした。
「引き出し側がちゃんとしていれば、準備しなくてもいける」
収録を終えて、石塚が実感として語ったのはファシリテーションの価値でした。
以前、30分を一人で話そうとして行き詰まったことがある。それがファシリテーターがいるだけで、まったく違う。
「これも価値ですよね。しっかりと引き出して伝えてあげる。引き出し側がちゃんとしていれば、全然準備しなくてもいける」
これはそのまま、Shikisaiというメディアが提供している価値の説明にもなっています。
最後に語られた言葉が、この回のまとめでした。
地縁があって、顔の見える人たちの地域を豊かにするということは、その地域に住んでいる人たちの幸せにコミットするということ。そして――
「この近くにいる人は全員仲間だ」と、自分が仲間だと思える人の範囲を増やしていくことが、自分自身の成長なのかなと思う。
※本記事は、ラジオ番組でお話しした内容をShikisai編集部が記事としてまとめたものです。発言は趣旨を損なわない範囲で整理しています。構想・数値は収録時点のものです。
ご紹介
Profile
株式会社ウェブリカ
代表取締役
新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。 ■編集長インタビュー 「メディア「地域色彩」立ち上げの背景とは?株式会社ウェブリカ・石塚直樹が語る地域企業活性化のビジョン」 https://chiiki-shikisai.com/webrica-ishizukanaoki/