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外食企業の再生とは?売上20数億を60億にした南愼一郎(オフィス南)に聞く

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飲食店の成長には、何か特別な戦略があると思っていた。
だが、南 慎一郎さんの話は違った。

「特別なことをしたという感覚はあまりない」

30店舗から200店舗へと拡大し、さらに別企業の売上を60億まで伸ばした。その背景にあったのは、派手な打ち手ではなく、現場で起きていることを一つずつ理解し、整えていく取り組みだった。

なぜ、それだけで結果に差が出るのか。
外食の現場と経営を両方経験してきた視点から、その中身を紐解いていく。

なぜ同じような飲食店でも結果が変わるのか

石塚:
飲食店って、同じような業態でも伸びる会社とそうじゃない会社がありますよね。

南:
そうですね。ただ、特別なことをやったという感覚はあまりないんです。

石塚:
そうなんですね。

南:
店長をやっていた時の経験をもとに、一つずつ積み上げてきたという感覚です。

現場を経験して初めて見えることがある

石塚:
最初の転機になったのはどのあたりですか?

南:
店長をやらせていただいたことですね。
店の導線やオペレーションを自分で経験できたのは大きかったです。

石塚:
現場を知ることで変わるんですね。

南:
はい。どういう流れでお客様に料理が届くのか、どこで無理が出るのかが見えるようになります。

店舗を増やしても崩れなかった理由

石塚:
そこから200店舗まで増えていますよね。

南:
入社した当時は30店舗ほどで、まだこれからという状態でした。
その中で、どういう店にしていくかを考えながら出店していきました。

石塚:
増やす前に整えていた。

南:
現場で理解したことをもとに、同じ状態を他の店でも再現できるようにしていった、という感覚です。

再生でもやることは変わらなかった

石塚:
別の会社でも売上を伸ばされていますよね。

南:
はい。もともと20数億だった売上が、10年で60億くらいになりました。

石塚:
かなり大きな変化ですね。

南:
ただ、やること自体は変わりません。
一つ一つ見て、変えられるところを変えていく。それを続けていく形です。

「美味しい」だけでは選ばれにくい時代

石塚:
飲食店は美味しさが重要だと思われがちですが。

南:
今はどこも普通に美味しい時代です。
その中で「ここでしか食べられない」と思ってもらうことが必要だと思います。

石塚:
違いを感じてもらう必要があると。

南:
それと同時に、働いている人がどういう状態かも大きいです。
楽しく働けているかどうかは、お客様にも伝わります。

店の雰囲気は働く人で決まる

石塚:
やはり人の影響は大きいですか?

南:
外食は特にそうですね。
店長やアルバイトの方がお客様と接する時間が長いので、その状態がそのまま店に出ます。

石塚:
確かに雰囲気に出ますね。

南:
その人たちが前向きに働けているかどうかは重要だと思います。

店が増えると起きる変化

石塚:
規模が大きくなると難しさも変わりますか?

南:
そうですね。10店舗くらいまでは社長が判断して回すこともできます。

石塚:
それ以上になると?

南:
判断が揃わなくなります。
同じメニューでも店ごとに出し方が変わってしまうことがあります。

石塚:
それはお客様にとっては違和感ですね。

南:
だから、どの店でも同じ品質で出せる状態を作る必要があります。

コンサルティングは一緒に考える仕事

石塚:
今の仕事ではどう関わっていますか?

南:
会社ごとに状況が違うので、やることも変わります。
決まったやり方があるわけではありません。

石塚:
毎回違うと。

南:
はい。一緒に考えて、その会社に合う形を作っていくという関わり方です。

これからも残る店とは

石塚:
今後の外食はどうなっていくと思いますか?

南:
人手不足で機械化は進むと思います。
ただ、「ここで過ごしたい」と思ってもらえる店は残っていくと思います。

石塚:
体験として選ばれる店ですね。

南:
はい。来ていただいた方に良かったと思って帰っていただける店を増やしていきたいですね。

編集後記

今回の話は、一貫して現場から始まっている。

・店の中で何が起きているかを理解する
・人の動きや状態を見る
・ズレている部分を整える

この積み重ねが、そのまま結果につながっている。

特徴的なのは、何か特別な理論や手法を前提にしていないことだ。
あくまで現場で起きている事実から判断している。

そのため、再生でも拡大でも、やることは大きく変わらない。
一つずつ整えていくことが、そのまま成長につながっている。

株式会社オフィス南と、南愼一郎さん

株式会社オフィス南は、外食向けのコンサルティングを手がける会社です。設立は3年前。代表取締役の南愼一郎さんは、外食業界一筋で歩んできた人物です。

ただしそのキャリアは、順風満帆という言葉からはほど遠いものでした。上場廃止、債務超過、そして業界を揺るがす事件――そのたびに再生を担ってきた経歴です。

「もう少し人間らしい生活をしたい」で始まった

大学卒業時、南さんが興味を持っていたのは接客業でした。最初に勤めたのは関西のファミリーレストランチェーン。

しかし当時の外食は「寝る間もないし休みもない」過酷な世界でした。「もう少し人間らしい生活をしたい」と考え、約3年で建築関係の会社へ転職します。

その後、東京に出たいという思いから関西を離れます。いくつかの縁をいただくなかで、ふと頭に浮かんだのが最初に入った外食でした。ちょうど群馬発祥のステーキのどんから声がかかり、「やってみよう」と入社します。

30数店舗から200店舗超へ

南さんがステーキのどんで過ごしたのは15年。入社時点で30数店舗だった会社は、退職する頃には200店舗を超えていました。

何が効いたのか。南さんが最初に挙げたのは、意外にも入社直後の話でした。

配属されたのは現場の店舗。「せっかく配属されたのだから、とにかく一生懸命やろう」と取り組んだ結果、数か月で店長になり、1年弱店長を務めます。この経験が、後になって非常に良かったといいます。

当時はまだ30数店舗で、これから出店を増やしていく段階でした。だからこそ現場を知る意味が大きかったのです。どういう形で店を作ればいいのか。動線はどう作ればいいのか。それをきちんと理解したうえで店を作れた、と南さんは振り返ります。

成長の柱も増えていきました。ステーキとハンバーグの会社でありながら、並行してしゃぶしゃぶの業態「どん亭」を立ち上げ、これが大ヒット。さらに全国のステーキチェーン「フォルクス」のM&Aもうまく運び、3つの業態で出店が加速していきます。

南さん自身のキャリアも広がりました。店長 → 店舗開発 → 人事 → 総務 → 経営企画 → 社長。外食企業のほぼすべての機能を経験したことで、視点の幅がどんどん広がっていったといいます。入社10年で社長に就任し、約5年務めました。

上場廃止、そして債務超過での社長就任

ただし、その社長就任は栄転ではありませんでした。

この時期、外食業界はBSEやO157といった問題に立て続けに見舞われます。フォルクスの買収に際して逆さ上場の形で上場企業となった同社は、上場再審査を受ける必要がありました。しかしその直前に問題が起き、形式基準を満たせずやむなく上場廃止となります。

上場廃止、業績悪化、株価もつかない、株主は多く残っている、そして債務超過。その状態で「社長をやってみろ」と言われたのが、南さんの社長就任でした。

経験のない社長業を、「一日も早く正常な会社にしなければ」という一心で務め、債務超過を解消。当時の親会社との株式交換もできる形にまで持ち直します。

その後、オーナーである会長に後継者がいないことから退任することになり、南さんも「これを機会に退任して、次の何か面白いことができれば」と会社を離れました。

2社目も、再生からのスタートだった

次に縁があったのが、千葉の焼肉チェーン「大将軍」でした。

ここもまた、厳しい状況にありました。焼肉業界では集団食中毒事件をきっかけに生レバーが提供できなくなるなど、大きな影響が広がっていた時期です。加えて東日本大震災。

しかも同社は、その事件が起きる直前にM&Aや神奈川への進出という大きな投資を実行していました。投資の直後にあおりを受け、業績が大きく低下してしまったのです。

南さんはこう考えました。ステーキのどん時代も結果として再生をやり遂げた。同じような形で一つ一つ変えていけば、なんとかなるだろう。約15年前、社長として入社します。

結果は数字が示しています。10年で、20数億円だった売上が60億円に。しかもこの間には新型コロナウイルスの流行も挟んでいます。

特別なことは、していない

2社で大きく売上を伸ばしてきた南さんですが、その手法は特別なことをして一気に上げたわけではありません

店長として現場に立った経験をもとに、店づくりから地に足をつけて積み上げていく。その積み重ねです。

そして南さんが大事にしてきたものは、売上の数字そのものではありませんでした。従業員が楽しくなること。お客様が喜んで帰っていただけること。おいしいと言っていただけること。それが結果として数字になる――再生を2度担った人の言葉は、驚くほど素朴なものでした。

※本記事は、ラジオ番組でお話しいただいた内容をShikisai編集部が記事としてまとめたものです。発言は趣旨を損なわない範囲で整理しています。数値・時期は収録時点のものです。

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Profile

南 慎一郎

株式会社 オフィス南
代表取締役

南 慎一郎

みなみ しんいちろう

外食業界で現場、店舗開発、人事、経営まで幅広く経験。
株式会社どんでは約30店舗から200店舗超への成長を担い、のちに代表取締役社長として200店舗以上の運営を統括。
その後、株式会社大将軍でも事業成長と再生に携わり、現在は外食企業の成長支援を行っている。

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石塚 直樹

株式会社ウェブリカ
代表取締役

石塚 直樹

いしづか なおき

新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。
腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。
地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。

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