動物理学リハビリ国際協会・会長の岸本誠也氏が、動物のリハビリの重要性と将来展望を語る。予防医学の観点から、ペットの健康維持や寿命延長に貢献する新しい分野の可能性を紹介。全国展開や認知度向上への取り組みなど、ペットオーナーの関心を引く内容が盛りだくさん。ぜひ最後までお聞きください!
動物のリハビリという分野
岸本誠也さんは、動物理学リハビリ国際協会でセミナー活動を行い、動物のリハビリを普及させるために活動しています。
「動物のリハビリ」――あまり耳にしない言葉かもしれません。岸本さん自身、もともとは人間の理学療法(リハビリ)を学ぶ大学に通っていました。その在学中、いまから10年ほど前に「動物のリハビリというものがあるらしい」と知ったのが出会いです。
もともと動物が好きだったこともあり、その分野を覗いてみると、日本ではまだまだ未発展であることが分かりました。そこで岸本さんが抱いた疑問が、すべての出発点になります。
人は病院に行けば、当たり前のようにリハビリがある。動物にも病院はあるのに、なぜリハビリがないのか。
しかも海外では、動物のリハビリは比較的当たり前に行われている。ならば日本でも同じように行われるべきではないか――そう考えて、普及の道へ進むことを決めました。
10年前、獣医からの反応は「流行らないと思う」だった
未発展の領域に一歩を踏み出すのは、簡単ではありません。一人の力では難しいと考えた岸本さんが最初にやったのは、動物病院の獣医や院長に会って意見を聞くことでした。「こういうことをしたいと思っているが、どう思うか」と発信し、協力してくれる人を探していったのです。
返ってきた反応は、正直なものでした。「そんなことをやっても流行らないんじゃないか」。自分の家の犬にお金をかける人も少ないから、伸びていく分野ではないのではないか、と。
当時は動物医療自体が人ほど発展していなかった時期でもありました。その状況で、飼い主がリハビリにどれだけお金と時間を使うのか――そう見られていたのが10年前だったといいます。
なぜ協会を立ち上げたのか
岸本さんはまず、勤めていた病院で自分自身がリハビリを行うところから始めます。しかし、すぐに限界にぶつかりました。自分一人でやるだけでは、対応できる数が圧倒的に少ない。1日に数頭が精一杯です。
だからできる人を増やさなければならない。そう考えて立ち上げたのが、現在活動している動物理学リハビリ国際協会でした。
ただ、当時はまだ方法論が確立されていません。そこで協会の設立にあたっては、人のリハビリの知識と海外のリハビリの知識を学び、周囲の先生方の協力を仰ぎながら、ある程度の形として確立させました。それをプロトコルにして、新しい人に学んでもらう。確立させるために団体を作った、という順番です。
アカデミックな領域にも踏み込む、決して楽ではない作業でした。その原動力を尋ねると、岸本さんはこう答えました。
「動物だからいいんじゃないか」「動物だから人と差があっても仕方ない」と思われているのが、すごく嫌だった。動物も家族だと言われるようになっているのに、なぜ人と違うところがあるのか――その疑問をなくしていきたい、という気持ちが強かったのだといいます。
犬のフィットネスジムという展開
現在、岸本さんが手がける事業は3つほど。そのなかでいちばん広がりを見せているのが犬のフィットネスジムです。
始まりはリハビリでした。当初は病気になってから治す、元の状態に戻すという側面が強かったといいます。
それが認知の広がりとともに変わっていきます。人と同じように病気になる前に健康な体づくりをしておきましょうという考え方も発信するようになった。すると、それを汲み取る飼い主が増えてきたのです。
「そういう場所が欲しい」という声。しかし人のフィットネスジムのように全国にあるわけでもなく、やる場所がない。そこで岸本さんは、犬のフィットネスジムをスタートさせました。現在は大阪をメインに、東京と岐阜を合わせた3か所で展開しています。
10年前に「流行らない」と言われた予防の領域が、いま最も伸びているという構図です。
広げたのはSNSだった
予防という領域は、伝えるのが難しい分野です。「何かが治りました」ではないので、変化が見えにくい。
それを動かしたのがSNSでした。飼い主自身が「フィットネスジムに行って頑張ってきてます」と発信してくれるようになる。それを見た人が「うちの子も予防しよう」と考える。
もう一つ多いのが、一緒に飼っていた犬が病気になってしまったから、この子はそうならないようにというケースです。こうして来場者は着実に増えているといいます。
ネックは、施術できる人をどう増やすか
これから増やしていきたいのは店舗数もさることながら、施術できる人だと岸本さんは言います。
しかも「誰でもいい」わけではありません。知識を持って学び、情熱を持ってやってくれる人を少しでも増やしたい、という考えです。
現状の数字も具体的に語られました。セミナーには2年半で延べ300人ほどが参加。ただし多くは獣医や動物看護師で、病院の業務に取り入れることが主な目的です。それ一本でやっていこうという人は10人から20人ほど。「完全に任せられる」実力の人がその規模でいる、ということでもあります。
習得にかかる時間は人によりますが、それ一本で熱心に取り組む人なら半年ほどで一気に学んだ例もあるそうです。参加者の前職としては、動物関係の仕事に就いていた人のほか、人のフィットネストレーナーやジムで働いていた人も多いといいます。
「動物だから仕方ない」をなくしたい。その一点から始まった活動が、いまは予防という新しい入口まで広がっていました。
※本記事は、ラジオ番組でお話しいただいた内容をShikisai編集部が記事としてまとめたものです。発言は趣旨を損なわない範囲で整理しています。数値・拠点数は収録時点のものであり、特定の効果・効能を示すものではありません。
公式サイトはこちら→https://apria.jp/
ご紹介
Profile
動物理学リハビリ国際協会
会長
1992年兵庫県生まれ。 2010年神戸学院大学(医療リハビリテーション学部 理学療法専攻) 入学。人間の理学療法と並行しながら動物の理学療法を自身で学び動物のリハビリの道へ行く事を決意。その後、大阪ECO動物海洋専門学校 動物理学療法専攻入学。卒業後、整形外科では著名な動物病院のファーブル動物医療センターの整形外科/リハビリテーション科/スポーツメディスン科に所属し、臨床経験を積む。 現在は、いくら犬猫クリニック神戸理学リハビリセンターにてセンター長を務め 全国各地の動物病院から依頼を受けてリハビリテーションを行っている。特に、術前術後、整形・神経症例、高齢犬のリハビリテーションに定評があり、肥満犬のダイエット、健康維持・パフォーマンス向上の為のフィットネスにも精通。 テネシー大学公認動物リハビリテーション資格CCRP (Certified Canine Rehabilitation Practitioner) 取得 アニマルサービスCinnamil:代表 一般社団法人パートナードッグタウン協会:理事 一般社団法人日本ペットマッサージ協会:顧問 大阪ECO動物海洋専門学校など複数校:非常勤講師
株式会社ウェブリカ
代表取締役
新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。■編集長インタビュー「メディア「地域色彩」立ち上げの背景とは?株式会社ウェブリカ・石塚直樹が語る地域企業活性化のビジョン」https://chiiki-shikisai.com/webrica-ishizukanaoki/