大分の名酒を世界へ!老舗酒店・山城屋7代目が仕掛ける、大分の魅力発信とは?


山城屋酒類販売有限会社 七代目 廣田 良介 HIROTA RYOSUKE

山城屋酒類販売有限会社は豊富な種類のお酒を取り扱う酒造販売店です。大分豊後高田で160年続く酒屋を継ぎ、次々と新たな仕掛けを生み出す。山城屋7代目の廣田さん。家業を継ごうと思ったきっかけは東京でのインターンシップでした。実家・大分に戻られてからは、大分の良い酒をより多くの人へ広げていこうと奔走されています。自社ECサイトを自ら制作し、2年前には自社オリジナル商品を開発するなど、次々と新しい施策を打ち出されています。。今回はそんな廣田さんに、大分のお酒にかける想いと、自社オリジナル商品『馬上梅酒』についてお話を伺ってきました。


—廣田さんは、ベンチャー企業でバリバリ活躍されていた中、家業を継いで7代目に就任されていますが、就任されてから今に至るまで具体的にどういった改革をされてきたのか簡単に教えてください。

廣田さん:まず最初にやったのはインターネットショップ制作です。それが1年後くらいにうまく軌道に乗ってきたので「山城屋」のブランディングの再構築であったり、営業をしたりとがむしゃらに動いていましたね。うちだけでなく、地方の酒屋は昔からの付き合いのある方が多いので、新規のお客さんの開拓はあまりしないんですが、実際に営業をしてみると、僕のように世代交代の流れがあって若い方が店主をやられていることも多かったので、そこから新規のお客さんの開拓に繋がっていました。

—インターネットショップの制作から幅広く行動されてきたのですね。色々やってきた中で、成功体験や苦労したことを教えてください。

廣田さん:サポートしたところがブランドとして成功することが最大の喜びですね

成功体験は、関わっている酒蔵の紹介をするキャッチコピーやブランドの肉付けを含めて、PRに力を入れてサポートした時に、その酒蔵がブランドとして成功してどんどん多くの人へ知られていって広がった時ですね。逆に、苦労したことはたくさんありますが、都会でやるビジネスと地方でやるビジネスはやっぱり違うんですよね。価格やニーズのバランスが難しいので、そこは考えていかないといけないところだと思っています。また、今では事業承継にも取り組んでいますが課題点も多いので苦労していますね。

200〜300本の規模感から20000本にまで成長した智恵美人

—扱ってきたお酒の中で特に思い入れの強いものなどはありますか?

廣田さん:中野酒造さんの智恵美人ですかね。

僕が地元に帰ってきたのと、ほとんど同じタイミングで中野酒造さんも代替わりがあって、新しくお酒を作るということで、最初から一緒に伴走してきた酒蔵さんになります。当初、一升瓶で200〜300本から始まったブランドだったのですが、今では100倍以上にまで広がっていますね。

—20000本ですか?すごい広がりですね。なぜこんなに急拡大していったのでしょう?

PDCAを回して、修正点を直していく連続。それが実を結んだ

廣田さん:毎年試行錯誤の中、どういう問題があるか見つけてそれを翌年に向けて直す。基本的なことだとは思うのですが、これを毎年毎年、続けてきたから結果もついてきたんだと思います。実際、智恵美人は2018年に開かれたフランスでの日本酒コンクールにて、最優秀賞を獲得、世界一の日本酒になりました。ブランドを一緒に育てていくという意味で、昔は私を通してでしか買えなかったお酒も、今はブランドの成長によりどこでも買えるようになる。ブランドの販路拡大としてはなるべき姿なので素晴らしいですが、少し寂しい気持ちもあったりします。

—ブランドの成長を近くで見ているからこそより強い思いが出るわけですね。地元・大分に関わる部分で地域にかける思いについて教えてください。

廣田さん:ずっと軸として大切にしていることは、大分の良いものを世界に広げていきたいということなのでそこはブレずに愚直に取り組んでいます。また、今は海外の人が地方にお金を落として経済を回すことが重要だと思っています。なので、輸出やインバウンドに向けた商品開発を意識していかないと地域は潤わないと思うのでそこは重点的にやっていきたいです。

—地域に還元したいという思いは軸としてありつつ、世の情勢に応じて臨機応変に対応されているということですね。

まだ知られていない酒蔵に眠っている原酒に目を付けた

オリジナル商品『馬上梅酒』について聞きたいのですが、どうして作ろうと思ったのか教えてください。

廣田さん:ちょうどその頃がコロナ真っ盛りの時期で、酒蔵さんらも売上減少に困っておりました。そこで何か前向きなことができないかと考えた際に、お酒の蔵に眠っている原酒に目をつけたんです。そういう原酒はいろんな蔵で眠っているものなんですが、すごく美味しいんですよ。そして大分には歴史的背景の強い、日本一の金山であった馬上金山があるのですが、その地で酒造りをされているみろく酒造さんがありまして、そこの原酒を使わせていただいています。また、金山の要素として、金箔をあしらっています。そして、黄金を思わせる天然純粋マヌカハニーを使用して高級な梅酒を作ろうと思ったのがきっかけです。

—なぜ、高級路線の梅酒にしようと思ったのでしょう?

廣田さん:日本の伝統技術を生かした高級酒が少しずつ誕生する中、大分は出遅れていまして、そのような高級酒というのがなかったのが理由の一つとしてあります。また、今の日本酒業界はスタートアップのところが増えてきていて、高級路線のものも席巻してきているんですが、梅酒の高級路線は正直ないんですよね。どこもやったことないことをやりたかったのでこのような形に行き着きました。

—ボトルもすごく高級感ある仕上がりですよね。

廣田さん:そうですね。馬上梅酒は金山をイメージしているので、それにあった瓶とパッケージを酒蔵さんと相談して取り寄せていまして。これを探すのに2年ほどかかったのですが、納得のいくボトルに仕上がっているかなと思います。

—良いものを伝えるためにその良さを最大限にアピールできる瓶であったりパッケージを用意されているわけですね。最後に、今後のビジョンについて教えてください。

大分の良いものをもっと多くの人へ伝えたい

廣田さん:馬上梅酒だけでなく、眠っているお酒であったり、眠っている技術というのを掬い取って自社のオリジナル製品を作っていければなと思います。大分の良いものをもっと多くの人へ知っていただけるよう尽力してまいります。

編集後記
大分の魅力を多くの人へ伝えていくために、自ら利酒選手権などにも挑戦されている廣田社長。自社オリジナル商品の瓶やパッケージにこだわる姿勢や、ブランドの成長を願って二人三脚で支援されている姿が印象的でした。今回取り上げた馬上梅酒は、今までになかった高級路線の梅酒で、ボトルの外観も非常に高級感があり、認知度が広まれば即完売してしまうほどのポテンシャルを秘めていると感じました。梅酒好きな方は、特別な時に飲んでみてはいかがでしょうか?

Profile

山城屋酒類販売有限会社 七代目

廣田 良介 HIROTA RYOSUKE