税理士法人シンワ綜合税務の税理士である石澤健太が登場し、税理士としての業務内容や仕事に対する信念を語る。法人顧問や相続申告など幅広い税務サービスを提供している石澤健太が、税理士の仕事の具体的な内容を説明。さらに、2023年に導入されたインボイス制度について、その影響や小規模事業者への影響を詳しく解説。税理士選びの重要性や信頼関係についても触れ、税金に関するリアルなアドバイスが満載です。
目次
税理士法人シンワ綜合税務と、石澤健太さん
石澤健太さんは、税理士法人シンワ綜合税務の社員税理士です。本店は横浜、支店は鎌倉。石澤さん自身は税理士会の登録地を鎌倉とし、横浜のお客様もいるため両方を行き来しています。
「社員税理士」はイメージしにくい言葉です。石澤さんの説明では、一般企業でいう「平の取締役」に該当するポジション。代表ではなく、一人の取締役というイメージだといいます。
専門分野については、まず税理士の仕事の仕方が大きく2つに分かれることから説明がありました。
- 特化型――特定の分野に絞る
- オールラウンド型――いろいろな税金の仕事を幅広く行う
- 税務相談――たとえば「今これだけ資産があるが、将来どういう相続税がかかるのか」といった相談に対し、報酬をいただいてレポートで伝える
- 税務書類の作成――簡単に言えば申告書の作成。これが業務の核
- 税務代理
- 100万円売れば、10万円を預かる
- 60万円の支払いがあれば、一緒に6万円を払う
- 預かった10万円から払った6万円を引いた差額4万円を納税する
- 人が亡くなってからの申告の依頼
- ご高齢の親がいて財産もあるという段階での生前の相談
同法人は後者です。法人顧問、個人事業主の顧問、そして近年増えている相続の申告まで。石澤さんはここも率直でした。特化型の事務所に比べればその分野の知識・経験・ノウハウは劣るところがある、そのうえで幅広く対応している、と。
税理士の仕事は、法律で3つに決まっている
「税理士って何をする仕事か」を、石澤さんは法律から説明しました。税理士法に業務が定められており、大きく3つあります。
石澤さんは関連して、税務に関する訴訟では弁護士とともに税理士が補佐人として出廷し、依頼者に代わって答弁していく仕事もあると紹介していました。
そしてもう一つ。税務書類の作成には会計で決算を組むことがスタート地点になります。だから会計の仕事も、税理士の付随業務として多くの事務所が行っている、という構造です。
税理士を変えるのは、なぜ負担が大きいのか
長い付き合いになる理由についての説明が、この仕事の性質をよく表していました。
税理士を変更するのは、経営者や事業主にとって負担が大きい。お金の情報も家族の状況も伝えてあるからです。変更するとなれば、信頼できる人を新しく探さなければならない。通常の仕事をしながらその時間を捻出するのは難しく、万が一次に選んだ人と相性が良くなければ、また同じことの繰り返しになる。
だから、選ばれている側の責任も重い――というのが石澤さんの受け止めでした。
実際、相談内容は税金にとどまりません。石澤さんは医療系のドクターと仕事をする機会が多く、こんな相談を受けることがあるそうです。
お子さんが高校生くらいになると「このクリニックを息子や娘に継がせたいんだけど」という話になる。そこに関わる税金の相談はもちろん、「医学部に受かるかな」「予備校はどこに行かせたらいいかな」といった税金とは離れた相談も受ける。
あるいは離婚した場合の税金の取り扱い。「これは当然、旦那に言わないでくださいよ」という相談もある、と。
インボイス制度を、一番シンプルに説明すると
インボイス制度の説明は、この回でいちばん実用的な部分でした。石澤さんいわく「詳しく話すと1日かかる」内容を、数字で噛み砕いています。
まず前提として、消費税の計算はこうなっています。
制度開始前は、この払った6万円は自動的に引ける仕組みでした。
それが変わります。
6万円を払ったことを「インボイス」という書類で証明しなければならなくなった。インボイスがなければ、払ったと言っても引いてもらえない。
そして、インボイスを発行できるのは登録した事業者だけです。
ここに、もともとあった仕組みが絡みます。年間売上1,000万円に届かない事業者は消費税を免除される「免税事業者」という枠組みがありました。その免税事業者はインボイスを発行できません。
すると、支払う側の企業はこう考えます。
同じお金を払うなら、インボイスをもらいたい。
結果としてインボイスを発行してくれる相手と付き合いを継続することになり、規模の小さい事業者はインボイス発行を選ばないと外注先として選んでもらえなくなる可能性がある。これがインボイス制度が抱える問題だ、と石澤さんは説明しました。
制度の位置づけについての表現も印象的です。もともと消費税は不公平な税制と言われることが多かった。インボイス制度はその不公平を是正する「劇薬」的な制度という考え方がある、と。
「年齢もあるし、インボイスも対応できないし、もう事業をやめようか」
制度の副作用として、石澤さんが実際に見てきた光景も語られました。
インボイスの発行にはTナンバー(登録番号)を請求書に記載する必要があります。オンラインで対応できる人はいい。しかしご高齢のご夫婦で小規模に事業をされている方には難しい場合がある。
その結果、「年齢もあるし、インボイスも対応できないし、もう事業をやめようか」という方もいらっしゃった、と。
税理士側の実務も変わりました。受け取った請求書がインボイスかどうかの確認作業が増えたのです。全国的に有名な会社なら発行している前提で扱えますが、初めて出てきた取引先や個人事業主の領収書・請求書については、登録番号が本当に国税庁に登録されているかまで確認する。「正直かなり増えました」。
そのうえで、石澤さんは自分の考えを慎重に述べています。このあたりは税理士によって考え方が様々だと前置きしたうえで――
税金は誰に対しても公平でなければいけない。その意味で不公平を是正するインボイスは必要なものだと思う。ただ、しっかり浸透するインフラが整い切っているかと言われれば、整っていない。制度が機能する仕組みを同時に作ることも大事ではないか。
父も祖父も税理士。そして「日本で第一号の税理士法人」
税理士を目指した理由は、まず父と祖父がそれぞれ税理士で、その背中を見てきたこと。
もう一つが、制度の変化でした。税理士はもともと一人一館の世界でしたが、平成14年4月1日から法人組織で税理士業を行えるようになりました。比較的新しい制度です。
そして――
石澤さんの父が登録した税理士法人が、たまたま運も良く、日本で第一号の税理士法人だった。
継ぐ人がいなければ、その第一号がなくなってしまう。ちょうどその頃、学生だった石澤さんは現在の奥様と交際中で、話をしたところ「ぜひ目指してみなよ」と後押しされました。就職活動もしていたものの企業の中で働くイメージがつかなかったことも重なり、税理士を目指すことになります。
想定問答を10パターン以上用意した税務調査
印象的な仕事として挙げられたのは、10年ほど前の税務調査でした。
調査官から連絡が来た時点で、「この案件が狙われているだろうな」と思い当たるところがあった。そこで石澤さんは準備をします。
税法だけでなく、関連する法律、そして取り扱いの通達まで全部調べる。そして「こう来たらこう返す」という想定問答を10パターン以上用意して臨みました。
調査当日。自己紹介と名刺交換を終えて始まると、すぐにその点を問われます。準備してきたものをそのまま出し、想定問答どおりに説明。
調査官もそこ一点を聞く予定だったようで、結果はこうなりました。
普通なら1日かかる調査が、午前の30分ほどで終わってしまった。
この話に続いて語られたのが、税理士に必要な知識の幅でした。相続なら民法、医療系が多い石澤さんの場合は医療法や予防接種法、宗教法人との関与があれば宗教法人法。そして横浜という地域柄、風営法にも詳しくないと仕事をさせてもらえない事情がある、と。
調査への向き合い方も明確でした。明らかに間違いであれば修正する。ただ「これはどっちなんだろう」というところは徹底的に調べ、合法的な範囲でなるべく納税の負担が少なくなる道を探す。
相続は「亡くなってから」と「元気なうちに」
相続の相談は、大きく2パターンに分かれるといいます。
ただし現実として、生前対策をスポットで相談に来る件数は多くないそうです。生前の相談は日頃から顧問契約のある方からが多い。
それでも、元気なうちの相談は大事だと石澤さんははっきり言います。
病気が分かって「あと何年」という状況になってから財産の話をすると、本人にとってあまり気持ちのいいものではない。だから元気なうちに「将来の財産についてどうするのか、お父さんお母さんの考えを聞かせてほしい」という切り出し方がいい、と。
それでも言いにくい。そんなときに石澤さんがアドバイスしているのが、知人の例を出すという方法でした。
「実は誰々のうちで相続があって、だいぶ揉めたらしい。うちは兄弟の仲もいいし、お父さんお母さんの財産をしっかり残して守っていきたいから、早めに相談させてほしい」
理由はシンプルです。焦ってしまって良くない結果になることは往々にしてある。判断能力も体の元気もあるうちに話しておくことが重要だ、と。
「節税でお金を使う」ことへの、はっきりした立場
石澤さんが大事にしている考えとして語ったのが、決算前によく聞かれるこの質問への答えでした。
「利益が出たんだけど、これからお金を使っていい?」
使わないでください、とは当然言えない。そのうえで石澤さんが伝えているのは、この構造です。
お金を使って節税するということは、つまりお金がなくなるということ。
企業が永続的に続くために、従業員に給料を出すためには、しっかり利益を出す必要がある。そして利益の全額に税金がかかるわけではない。利益を出せば、手元に残るものもそれに比例して増えていく。
無理な節税は、逆にお金がなくなってしまう。
税理士が学校で行う「租税教育」
石澤さんは税理士会の活動として租税教育に力を入れています。簡単に言えば、税理士が学校に行って行う税金の出前授業です。
「節税の方法を教えてくれるの?」と聞かれることもあるそうですが、目的はまったく違います。節税の方法はインターネットにたくさん載っているし、それを子どもに伝えることが目的ではない。
石澤さんが挙げた出発点は、投票率でした。
日本は民主主義の国で、選挙で代表者を選んで物事が決まる。しかし投票率がとても低い。そうなると税金の使われ方に関心を持てない人も出てくるのが現実だ、と。
だから伝えているのは、こういうことです。
汗水たらして働いて納めた税金の使い道は、子どもであってもしっかり考えなくてはいけない。
実際の授業で話すのは「何税があるか」といった知識ではありません。みんなが納めた税金がどう使われているのか。たとえば学校に行ったときは――
「みんなが今過ごしている教室も、備品だって、税金からなんだよ」
※本記事は、ラジオ番組でお話しいただいた内容をShikisai編集部が記事としてまとめたものです。発言は趣旨を損なわない範囲で整理しています。税制・制度の内容は収録時点のものであり、実際のご判断は税理士等の専門家にご相談ください。
ご紹介
Profile
税理士法人シンワ綜合税務
税理士
税理士法人シンワ綜合税務で社員税理士として活動し、法人顧問や個人事業主の税務サポートをはじめ、相続税の申告や税務相談など幅広い分野で実績を持つ。横浜と鎌倉を拠点に、地域密着型で顧客と向き合い、税務の専門知識と実務経験を生かして、最適な経営支援を提供。税理士としての業務に加え、税金に関する教育活動にも力を入れており、特に次世代への税理士業務の理解促進に貢献中。
2012年4月 NHKさいたま局 キャスター・リポーター2014年4月 新潟テレビ21(テレビ朝日系列)2017年4月 テレビ山梨(TBS系列)2021年4月〜 フリーランスとして活動スタート