元キャビンアテンダントの金城あやさんが、マナー講師としてのキャリアを語ります。独立の経緯や厳しい訓練のエピソードを交え、企業の新人教育について深掘りします。
ヒトテラスと、マナー講師・金城あやさん
金城あやさんは、マナー研修・人材育成の会社「ヒトテラス」の代表です。手がけているのは主に企業のマナー研修で、新入社員研修をイメージすると分かりやすいといいます。
内容は基本的なビジネスマナー。ただし伝え方に特徴があります。座学で学ぶだけでなく、動きを伴いながら実際に実践して身につけることに重点を置いているのです。
金城さんはもともとキャビンアテンダント(客室乗務員)でした。
CAの訓練は、8割が安全訓練だった
キャビンアテンダントの訓練というと、笑顔や立ち居振る舞いを徹底的に仕込まれるイメージがあります。しかし実際は違いました。
訓練のほとんど、8割が安全・緊急脱出訓練だといいます。客室乗務員の仕事の中心は「お客様を安全に目的地までお連れすること」だからです。
ではサービスの訓練はどれくらいか。最後の1〜2週間、1か月に満たないほど。理由も明快でした。採用の時点で、ある程度のサービスマナーの素養がある人を採っているからです。
それでも金城さんが「すごく大きかった」と振り返るのが、先輩や教官から教わった細かい部分でした。手の動かし方。目線の使い方。そうしたことを最初の段階で教えてもらえたことが、後々まで効いているといいます。
価値に気づいたのは、辞めてからだった
興味深いのは、その価値に気づいたタイミングです。
CA時代は、それらが当たり前に与えられるものでした。しかも周囲の全員が同じように育っている。その環境の中にいるときには、気づけなかったのです。
気づいたのは辞めてから。中小企業に転職したり、個人で仕事をするようになったりしてから、はっきり見えてきました。初期研修の数か月で「社会人としてこういうことを身につけておくんだよ」と教わる機会が、いかに大事だったか。
それを象徴するエピソードがあります。20代後半で退職して転職活動をしたとき、金城さんは一次面接で落ちたことがないのだそうです。
理由は第一印象にあると本人は分析します。「お客様と目が合ったら、ニコッと笑いなさい」とずっと言われ続けてきた。それが染みついているため、いまでも街中でふと目が合った人にニコッとしてしまい、「この人、知り合いだったっけ」という顔をされることがあるほどだといいます。
笑顔で挨拶をする。サービス業の基本中の基本ですが、これをできないと現場に立たせてもらえない環境で徹底的に叩き込まれた。教える側になったいま、その重要性をますます感じているそうです。
マナー講師になるまでの遠回り
ただし、CAを辞めてすぐマナー講師になったわけではありません。むしろかなりの遠回りをしています。
まず考えたのは「事務職はできないわ」ということ。手に職をつけなければと考え、リンパマッサージのセラピストの資格を取ってエステの世界に飛び込みます。体を壊しかけてCAを辞めたこともあり、自分の体の声を聞いてあげなければという思いもありました。
20代後半の血気盛んな時期。独立を目指して技術を磨き、お客様対応も重ねます。しかしここで壁にぶつかりました。
技術は教えてもらえても、独立のためのノウハウを教わる機会がなかったのです。仕入れの仕方、資金の借入をどうするか――いまでこそ独立のノウハウを教えてくれる人はたくさんいますが、当時の金城さんの周りにはいませんでした。
仕事をしながら独立の準備をするのは難しい。そう判断して、2年ほどでその道を一旦諦めます。
そこからは派遣でさまざまな仕事を経験しました。アパレル、マンションのコンシェルジュ――サービス業を中心に、10社・10か所以上を転々としたといいます。
転機が訪れたのは1年ほど経った頃。大阪市内の英語系専門学校が出していた、「エアライン学科 専任講師募集」という求人広告を見つけたのです。
与えられていたときには気づけなかったものを、失ってから価値として捉え直し、今度はそれを教える側に回る。金城さんのキャリアは、そういう構造をしていました。
※本記事は、ラジオ番組でお話しいただいた内容をShikisai編集部が記事としてまとめたものです。発言は趣旨を損なわない範囲で整理しています。訓練の内容や比率は航空会社・時期によって異なります。
ご紹介
Profile
ヒトテラス
代表
1997年 株式会社ジェイティービー入社 1998年 株式会社日本航空 入社 客室乗務員 2004年 株式会社日本航空 退職 リンパケアセラピストの資格を取得し、セラピストとして就業 2008年 大阪外語専門学校キャビンアテンダント・エアライン科講師就任 2009年~ 株式会社Truth マナーインストラクター 2013年~ヒトテラス代表として独立
株式会社ウェブリカ
代表取締役
新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。