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経営ビジョン実現のためのDX──現場と数字の見える化により企業の成長を支援/ITプラン株式会社-太田記生

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岡山県岡山市を拠点に活動する、ITプラン株式会社 代表・太田記生(おおた・ふみお)さん。
日本IBMでシステムエンジニアとしてキャリアを積まれたのち、独立して中小企業診断士として活動を始められました。
現在は、ITと財務の両面から中小企業の経営を支援し、製造業を中心に業務改善やDX化の現場で成果を上げておられます。
「IT投資の成果を“数字”で語れる支援をしたい」。
その言葉には、経営者と現場の双方に寄り添いながら、地域の企業を支える太田さんの実直な姿勢が表れています。

IBMで培った“現場主義”の原点

石塚: まずはご経歴からお伺いします。最初のキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか?

太田さん: 社会人としては2000年に日本IBMに入社しました。システムエンジニアとして、主に都市銀行向けの金融システム開発を担当していました。

石塚: かなりハードな現場という印象がありますが、いかがでしたか?

太田さん: そうですね。要求も厳しく、精度が求められる仕事でした。要件定義から設計、プログラミング、テスト、導入、そして運用まで。すべての工程を経験できたのは本当に大きかったです。

石塚: 日本IBMを選ばれた理由は何だったのでしょうか?

太田さん: 大学院時代、最初はコンサルティング会社に行きたいと思っていたんです。ただ多くの会社が「ITを軸にコンサルティングをしている」と知って、よりコアな部分に関わりたいと考えました。
「ならばITの本流で学ぼう」と思い、日本IBMに決めました。

石塚: 現場の最前線で得た経験が、今の礎になっているんですね。

太田さん:はい。激務でしたが、技術の深さと仕事の責任を学びました。今ではあの経験に感謝しています。あの現場で鍛えられたことが、今の「現場主義」に繋がっています。

中小企業診断士としての独立と再出発

石塚: その後、独立されたきっかけは何だったのでしょうか?

太田さん: 日本IBM退職後、資格取得のためのスクールで勉強して中小企業診断士の資格を取得しました。同志社大学大学院の先輩で中小企業診断士として独立されている方がいて、「自分の力で価値を提供している姿」が素敵だと思ったのがきっかけです。

石塚: まさに憧れからスタートされたんですね。

太田さん: そうです。2008年に会社を設立し、最初は商工会議所などの専門家派遣から始まりました。その後、中小企業基盤整備機構で5年半、新連携や地域資源活用、農商工連携の支援を担当しました。

石塚: 公的機関での経験が、今のコンサルティングにも活かされているのですね。

太田さん: はい。企業の本質的な課題に触れる中で、事業計画(プランニング)の重要性、そして事業計画策定後も伴走支援が大事であることを痛感しました。さらに、コーチング、ファシリテーションのスキルを強化していく中で、「今まで長く経験してきたITこそ自分の専門だ」と再確認し、2014年にITプラン株式会社としてスタートしました。

ITと財務、二つの視点が生む経営支援

石塚: 「ITと財務に強い」というのが太田さんの特徴ですよね。

太田さん: はい。IT投資、特に私の専門分野である基幹システムの投資は高額です。だからこそ、「IT投資が本当に利益を生むのか」を数字で検証する必要があります。そのため、私は財務の視点からもIT導入を見ています。

石塚: 実際に現場を見られている中で、どんな課題が多いと感じますか?

太田さん: 「利益構造が見えない」ことですね。どの商品が儲かっているか、どの商品が赤字か。それをIT導入で“見える化”したいという相談が非常に多いです。

石塚: たしかに、古いシステムだと原価や経費の紐付けが難しいですよね。

太田さん: その通りです。売上だけが見えても、利益が見えない。そのような深刻な経営課題解決に貢献できるIT導入を支援するのが私の役割です。

石塚: 財務とITの両面から経営課題を解決していく仕事ですね。

太田さん: そうですね。経営者と現場、ベンダーの間に立ち、数字で冷静に判断する。そのバランスを取るのが大切だと思っています。

製造業のDX支援と「見える化」への挑戦

石塚: どういった業界の支援を得意とされていますか?

太田さん: 製造業になります。主に基幹システム(受注〜発注〜生産〜出荷〜請求〜支払・入金など、企業の根幹となる業務を管理するシステム)の導入、更改支援をしています。老朽化したシステムを新しい仕組みに移行する際の全体構想、プロジェクト管理、要件整理、RFP(Request For Proposal、提案依頼書)策定まで行っています。

石塚: ベンダー任せではなく、社内の業務整理から関わると。

太田さん: まさにそこが重要です。いきなりベンダーに依頼すると、提供される基幹システム(パッケージ)の得意不得意に気づけなかったり、要望が膨らみすぎて“カスタマイズ過多”になったりします。私は「この要望は取り下げましょう」「ここは人で対応しましょう」と助言し、IT投資の最適化を図ります。

石塚: ベンダーさんからすると大変そうですが(笑)。

太田さん: 以前はそう言われました(笑)。でも最近は逆で、「太田さんが入ると要件を整理してもらった状態で提案できる」と感謝されることが多くなっています。

石塚: 双方にとって良い関係なんですね。

太田さん: ユーザー側にも「無理な要求はしない」という姿勢を伝えています。製造業の現場でも、得意先から無理な要求を受けて生産に苦労しているのをお見かけしますよね。IT導入も同じ。発注者と受注者、お互いを理解する姿勢が大切だと考えています。

岡山から広げる地域支援の輪

石塚: 活動拠点を岡山に置かれている理由を教えていただけますか?

太田さん: 地元が岡山なんです。岡山が大好きで、ここから発信したいと思っています。とはいえ関西(大阪・京都・兵庫)にも顧客が多く、岡山から新幹線で1時間。距離の壁は感じません。

石塚: 地元での活動も多いと伺いました。

太田さん: はい。岡山商工会議所青年部(YEG)に長年所属し、過去に副会長も2回務めました。50歳で卒業予定ですが、最後までやり切りたいと思っています。
また、岡山東法人会青年部会の監事や、岡山県中小企業診断士協会の会長も務めています。

石塚: 地域経済を支える立場でもあるんですね。

経営者団体で学んだ「人と地域を育てる力」

石塚: 経営者団体の活動から得た学びはどんなところにありますか?

太田さん: 自分1人で仕事を抱え込まず、仲間と分担して進めることですね。YEGの全国大会を岡山で開催した際は、私が総務部会長を務めたのですが、当時の先輩から「人を信じて任せる大切さ」を教わりました。

石塚: それが今のプロジェクトマネジメント、コンサルティング業務にも活きているということですね。

太田さん: ええ。中小企業支援も結局は“人づくり”です。IT導入もシステムではなく、人の理解と協働、コミュニケーションが成否を分けます。だから私は「働く人が誇りを持てる環境を作る」ことを使命にしています。

石塚: ありがとうございます。今後の展望を最後にお聞かせください。

太田さん: 岡山・関西を中心に、西日本全体へ支援を広げていきたいです。DX支援を通じて、地域の中小企業が自信を持って成長できる社会を作りたいと思っています。

編集後記

太田記生さんの語りには、現場を知る人間ならではの具体性がありました。
ITや財務を語るときも、常に焦点は「人」と「組織」にあります。
技術を導入することが目的ではなく、それを使う人の理解と行動の変化をどう促すか――。
その視点が、太田さんの仕事の核心を形づくっています。

日本IBMで培った精度と論理性。
中小企業診断士として積み重ねた、地域での実践と対話。
この二つの経験が交わる場所に、太田さんの支援スタイルがあります。
「人を信じて任せる」という言葉は、現場のマネジメントにおける信念であると同時に、経営の原点でもあります。

岡山を拠点に、製造業を中心とした企業のDX支援や業務改善を進める太田さんの取り組みは、決して華やかではありません。
しかし、その一つひとつのプロジェクトが企業の体質を変え、地域経済の基盤を整えていく。
派手さよりも、再現性と継続性を重んじる姿勢が、多くの経営者の共感を集めています。

企業を支えるのは、最先端の技術だけではなく、日々の現場で積み重ねられる小さな判断と信頼の連続です。
太田さんの言葉と行動は、それを裏付ける実例のように感じられました。

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ご紹介

Profile

太田 記生

ITプラン株式会社
代表取締役

太田 記生

おおた ふみお

岡山操山高等学校、岡山大学経済学部卒業。同志社大学大学院総合政策科学研究科修了後、日本アイビーエム株式会社に入社。システムエンジニア、プロジェクトマネージャーとして、約250カ店接続の営業店システム、24時間稼働インターネットバンキングシステム、マルチペイメントネットワークシステムなど、オープン系システムのアプリケーション開発・システムインフラ構築を担当するとともに、都市銀行のシステム統合を担当。インターネットバンキングシステムの運用改善によりコスト削減・労力削減を実現し、社内表彰を受賞する。
中小企業診断士の国家試験に合格し、2008年4月に独立して法人を設立。
独立後、独立行政法人中小企業基盤整備機構四国本部のプロジェクトマネージャーや甲南大学マネジメント創造学部非常勤講師を担当。地域資源活用事業、農商工連携事業、新連携事業、創業、経営改善、企業再生など様々な事業計画を立案し、180社を超える中小企業の経営コンサルティング・ITコンサルティング実績を持つ。
現在は、ITコンサルタントとして、製造業を中心に、コーチング・ファシリテーションを用いたIT戦略立案・遂行、基幹システム更改プロジェクト推進、業務改善のサポートに取り組む。

公式サイトはこちらから お問い合わせ・無料相談 著書:DX時代に成長する製造業のIT戦略
石塚 直樹

株式会社ウェブリカ
代表取締役

石塚 直樹

いしづか なおき

新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。
腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。
地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。

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