「世界中でたった一人の母親として、子どもの気持ちを理解したい」。そう語るのは、香川県高松市を拠点に活動する臨床心理士・田中梅野さん。30代で強い学びの欲求を抱き、40歳で大学院へ進学、52歳で臨床心理士資格を取得、69歳で公認心理師資格にも挑戦した遅咲きの努力家です。現在はオンラインで「STGこころのおしゃれ塾」を主宰し、夫婦やカップルを中心に「尊重し合い、育ち合う関係づくり」を提唱。全国から参加者が集うこの場を通じて、人生100年時代の新しい心の学びを広げています。
今回は石塚直樹がナビゲーターとなり、田中梅野さんのキャリアや「STGこころのおしゃれ塾」に込められた想いについて伺いました。
目次
1. 遅咲きの挑戦 ― 40歳で大学院へ、52歳で臨床心理士資格取得
石塚:
本日のゲストは、臨床心理士で「STGこころのおしゃれ塾」を主宰されている田中梅野さんです。よろしくお願いします。
田中:
よろしくお願いします。私はカウンセラーとして30年以上活動してきましたが、臨床心理士の資格を取ったのは人より20年遅く、52歳の時でした。その後、69歳で公認心理師の資格にも挑戦しました。
石塚:
69歳で新しい国家資格に挑まれるのはすごいことですね。
田中:
はい。遅いから無理、というのではなく、人生のどの段階でも挑戦できると実感しました。
2. 子どもとの経験が原点 ― 「世界で一人の母親でありたい」
石塚:
そもそもカウンセリングを学ぼうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
田中:
きっかけは子どもの病気でした。長男が1歳8か月の時にがんと告げられ、「命を諦めてください」と言われたんです。でも、諦められない。そこで3つの決意をしました。誰にも言わない、差別しない、そして子どもが家を巣立つ時に話す。この経験から「世界中でたった一人の母親として理解したい」と思い、カウンセリングを学ぶ道を選びました。
石塚:
ご自身の体験が大きな原動力になったんですね。
田中:
はい。子どもの辛さを本当の意味で理解したい、そこが原点です。
3. カウンセリングの本質 ― 「聞く」ではなく「聞かせていただく」
石塚:
カウンセリングというと「話を聞く」イメージがありますが、実際にはどんなものですか?
田中:
私は「聞く」ではなく「聞かせていただく」という姿勢で臨んでいます。表面的な言葉だけでなく、その奥にある気持ちを受け取り、フィードバックする。それによってクライエント自身が気づきを得て、解決策を見つける力が育つんです。
石塚:
資格を取ったからできる、というものではないんですね。
田中:
そうです。訓練を重ね、スーパービジョンを受けることで深まっていきます。
4. スーパービジョンとメンタリング ― カウンセラーを支える学び
石塚:
スーパービジョンという言葉が出てきましたが、どういうものですか?
田中:
カウンセラーも行き詰まることがあります。スーパービジョンは、その理由を指摘するのではなく、自分で気づけるよう支援する仕組みです。カウンセラー自身が成長できるんです。
石塚:
田中さんはスーパーバイザーやメンターの資格もお持ちなんですよね。
田中:
はい。ただ今は「STGこころのおしゃれ塾」に集中しているため、そちらの活動に専念しています。
5. STGこころのおしゃれ塾 ― 夫婦・カップルに贈る心の道場
石塚:
「STGこころのおしゃれ塾」とはどんな場なのでしょうか。
田中:
カウンセリングに行くほどではないけれど、将来への不安や自己成長への思いを抱えている人たちが集まり、月1回・全12回のプログラムで語り合います。自分の思いを話し、他者の話を聞き、気づきを得る。心を磨く道場のような場です。
石塚:
特におすすめはどんな方でしょうか。
田中:
熟年カップルですね。熟年離婚が増えていますが、人生100年時代を一緒に生きるためには、改めて互いを尊重し合う関係を築くことが大切です。私は夫と51年間連れ添ってきましたが、「幸せだ」と言ってくれるのは尊重し合ってきた結果だと思います。
石塚:
なるほど、田中さん自身の実体験がベースにあるのですね。
6. 未来へのビジョン ― 世代と地域を超えたネットワークづくり
石塚:
この塾を通じて、どんな未来を描いていますか?
田中:
全国に世代を超えたネットワークを作りたいです。北海道から九州・沖縄まで、仲間とつながり、困った時に支え合える。さらに、母子家庭の子どもたちに返済不要の奨学金を提供することも夢の一つです。自分の今があるのは奨学金のおかげだ、そう思ってもらえる未来を残したいんです。
石塚:
社会的な広がりを持つビジョンですね。
田中:
はい。「孤立しない文化」を日本に根付かせたい。そのために、まずは「STGこころのおしゃれ塾」をしっかりと成功させたいと思っています。
編集後記
今回の対話で印象に残ったのは、「学びは年齢を問わない」という田中梅野さんの姿勢でした。40歳で大学院、52歳で臨床心理士、69歳で公認心理師。遅咲きだからこそ深みがある歩みは、多くの人に勇気を与えるでしょう。
また「STGこころのおしゃれ塾」は、単なるカウンセリングの場ではなく、夫婦やカップルが「尊重し合い、育ち合う」ための心の道場です。熟年離婚が増える現代において、新しい関係性を築く場として価値があります。
さらに、奨学金支援という社会的ビジョンも併せ持ち、個人の成長から社会的な広がりへとつながる取り組みになっていることに驚かされました。人生100年時代を見据えた挑戦を続ける田中さんの姿勢は、読者にとっても大きなヒントになるはずです。
ご紹介
Profile
ステージ心のおしゃれ塾
主宰
カウンセラー歴30年以上。人より20年遅れて臨床心理士資格を取得し、69歳で公認心理師試験に合格、70歳で認定証を受け取る。
学びを重ねて日本初の専門的訓練を経てスーパーバイザー資格を取得し、その後メンター資格も取得。現在は「STG(ステージ)心のおしゃれ塾」を主宰し、「自ら気づいて行動でき、価値を高めてあっぱれ人生❣」を築ける場を提供している。
株式会社ウェブリカ
代表取締役
新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。
腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。
■編集長インタビュー
「メディア「地域色彩」立ち上げの背景とは?株式会社ウェブリカ・石塚直樹が語る地域企業活性化のビジョン」