「音が干渉し合って聞こえづらい…」そんな悩みを解決する音響技術が登場!株式会社ドリーム代表・則行正信が手掛ける特定のエリアにだけクリアな音を届ける画期的なシステムとその効果とは?絶賛「お寺」の音響にも採用中?音響の最新技術に迫る。
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目次
株式会社ドリームと、則行正信さん
株式会社ドリームは、神奈川県横浜市の音響会社です。代表取締役社長の則行正信さんは、自ら「音に取りつかれてやっている」と言います。
この世界に入ったのは21歳のとき。寺内タケシとブルージーンズのミキシングエンジニアとしてでした。ロシア公演や全国のコンサートに7年間従事したところがスタート地点です。
創業以来コンサート関係を手がけ、そこから地域のイベントなど幅広く広がっていきました。本人の表現では「音に関することは何でもウェルカム状態」。
「音の悩み」とは何か
コンサートの音響は、アーティストがステージ上で何をやっても自分の思い通りになる状態にしてあげることが裏方の仕事です。
ただ、則行さんが受ける相談はそれだけではありません。「いろいろやりたいけれど、できない。それはなぜか」という問いに、引き出しから解決策を出していく。
いちばん分かりやすい例として挙がったのが、イベント会場でした。
一つの会場で一つの催しをやるなら、その流れの中で組めばいい。ところが同一エリア内で違う企業がそれぞれパフォーマンスをするとなると、こうなります。
自分たちのペースでやりたい。けれど周りがやっていると迷惑がかかる。時間の割り振りをしないと自分たちの思うことができない。本当はやりたいのに、そのときにできない。
展示会のブースで、隣が大きな音を出すからこちらも大きくする――パーソナリティが言い当てたこの構図を、則行さんは一言で受けました。「悪循環になっちゃうね」。
平面波スピーカーとは。普通のスピーカーと何が違うのか
この悪循環を断つ鍵が平面波スピーカーです。則行さんの説明が、とても分かりやすいものでした。
普通のスピーカーは、池に小石を投げたときの波紋です。輪になって、全方向に広がっていく。
これに対して平面波は、同じ湖で壁のような板で水を押したときの波。海の波が岸に届くように、まっすぐ前に進みます。
横には広がらず、まっすぐ行こうとする性格がある。
だから、会場の広さ、どこまで届かせたいかが明確になれば、それに応じたシステムを提案できる。お互いが邪魔にならず、聞かせたいときには聞こえる状態を作れる、というわけです。
そしてもう一つの効果が輪郭でした。則行さんはこれを映像に例えます。
ブラウン管のテレビは、なんとなくイメージは分かる。それがハイビジョンや4K、8Kになると、出演者の顔色やお化粧の仕方まで見えてくる。音も同じで、輪郭がはっきりする。
ここが実用上、決定的です。
言葉がはっきりするということは、大きい音で聞かせなくても、小さくても何を言っているか分かるということ。
東京マラソンの、100社のブース
実例として語られたのが東京マラソンのイベントスペースでした。
出展者・協力企業のブースは大小合わせて100社ほど。そのうち音を出すのは半分ほど、およそ50社です。しかも完結した部屋の中ではありません。
依頼が来た経緯も具体的でした。東京マラソンがスタートしてから5年間は従来通りにやっていた。その後、出展者や来場者の意見を踏まえ、改善できるところは改善しようという話になります。
音についての要望は、こうでした。
通路はあまりガヤガヤさせず、ブースに入ったらそこの音が聞こえるようにしたい。伝えたい音が聞こえていても何を言っているか分からない、みんなが隣り合って音を出し合っているような状態は避けたい。
渋谷スクランブル交差点の、大型ビジョン
もう一つの実例が、渋谷のスクランブル交差点です。
日本でも有数の、雑踏の音が大きい場所。車が通る音、行き交う人の話し声。そして音の公害を避けるために音量規制がかけられています。「何dBより大きくしてはいけない」という制約です。
そこに大型ビジョンがいくつもある。広告なので、映像だけではキャッチできず、音を出したい。
最初のうちは良かったものの、数が増えるにつれて「あっちよりこっちの方が大きい」という音の競り合いが起きる。
ここで平面波が効きます。則行さんが挙げた例は、驚くほどピンポイントでした。
スクランブル交差点の信号のところに立った人にだけ聞こえる。あるいはハチ公口を出入りする人にだけ届く。
いま最も力を入れているのは、お寺
これまで平面波スピーカーを使ってきたのは、学校の体育館、教室、教会、イベントスペース、屋外ビジョン。いずれも共通しているのは言葉の伝達が非常に重要視される場所です。
そこから則行さんが向かったのがお寺でした。
ご住職はご法話で言葉を伝えたい。聞いてもらい、後世に残していきたい。ところが現実には課題があります。
お寺に来る方には年配の方が多く、加齢による難聴がある。すると、せっかくご法話を聞きに来ても聞こえたのか聞こえないのか分からないまま終わってしまう。
ここで則行さんが指摘した点が鋭いところでした。
昔から通っている人は、何度も聞いているので前後のつながりで分かる。けれど初めての人は、逆に分からない。
だから、本堂に入ればどの位置にいてもご法話が聞こえる状態を作りたい、と。
ハウリングを起こすまで音量を上げないと、聞こえた感がない
従来型のマイクとスピーカーで起きていた問題も、具体的に語られました。
聞こえないからマイクを使う。ところがハウリングを起こすくらいまで音量を上げないと「聞こえている感」がない。
そうなると、話し手の側に問題が生じます。
本来は伝えたいことを頭に思い浮かべなければならないのに、「まずい」と音のほうに意識が向いてしまう。
かといって音を下げれば、今度は「本当に伝わっているのかな」と気になる。どちらにしても、話に集中できない。
「ご住職の口元から声が聞こえるようにしてあげる」
では、どう解決するのか。則行さんの答えは、聞いていて唸るものでした。
ご住職が話しているとき、口元から音が聞こえるようにしてあげる。
やり方は時差です。話し手の口元から出る声が檀家さんに一番先に届くようにし、他のスピーカーはそれより遅らせて鳴らす。コンマ数秒の世界を計算して設計します。
設計の進め方も、現場を知っている人のやり方でした。
まずご住職がどこで話すのか、どこがメインになるのかを先に決めてもらう。そのうえで、スピーカーを付ける場所を信号機の色で示してもらいます。
- 赤=付けてはいけない場所(ご本堂の真ん前などは当然付けられません)
- 青=どこでもいい場所
- 黄=相談すれば検討できる場所
こちらは理想形を先に考える。付けられないなら、どこにするかを話し合う。
全国のお寺は、大きさも天井の高さも条件がまったく違います。一つ一つ大変ではないか、という問いへの答えも明快でした。
「答えの出し方が同じだから、物は変わっても同じ」――初めての道でも、地図があれば行ける、と。
手がけたお寺は、ここのところで40か寺ほど。反応も届いています。ハウリングに悩んでいたお寺では話しやすくなった。そして――
檀家さんの顔色を見れば分かる。今まで「聞こえているのかな」と気になっていた人が、うんうんと頷きながら聞いている。いつも聞こえないと言っていたおばあちゃんから「今日はいいご法話だった」と言われる。
そういう話をもらうと、入れてよかったと思う――と則行さんは話していました。
原点は、カミキリムシの噛む音
なぜ音響の仕事をしようと思ったのか。則行さんは「音響の仕事っていうか、音が好きだったんだよね」と言い直したうえで、5歳頃の記憶を語りました。
田舎の原っぱで遊んでいて、目の前にカミキリムシがいた。男の子だから触りたくなる。カブトムシも捕りに行く。
そこで不思議に思ったことがありました。
犬や猫は、人間がガサッと音を立てれば怯えて逃げる。つまり聞こえている。ところが――
カミキリムシが噛む音は、自分の耳には聞こえない。カブトムシが引っかかりながら歩いているのに、その音が聞こえない。なぜだろう。
その「なぜかな」を常に思うようになり、気がついたら音楽が好きになっていた。そして今は、音楽よりも音そのものが好きだからいろいろやりたいのだ、と。
音で未来を変える
最後に、音を通してどんな未来になればいいかを問われた則行さんの答えは、シンプルでした。
聞こえなかった人が聞こえるようになるって、すごいじゃないですか。
そういうふうになれるといい、そこを変えたい――というのが、この回の締めくくりでした。
※本記事は、ラジオ番組でお話しいただいた内容をShikisai編集部が記事としてまとめたものです。発言は趣旨を損なわない範囲で整理しています。数値・事例は収録時点のものです。
ご紹介
Profile
株式会社ドリーム
代表取締役
1986年創業の株式会社ドリームの代表取締役社長として、音響技術の発展を牽引する第一人者。平面波スピーカーをはじめとする独自技術の開発・製造・販売を行い、イベント音響やコンサルティング業務にも従事。指向性制御音響技術「JustHit」や平面波スピーカー「kindream」を開発し、展示会・病院・保育施設などの音環境最適化に貢献。また、3Dプリンターを活用した試作品開発など、革新的なアプローチを導入し、技術進化を推進。さらに、「親子でスピーカーをつくろう!」といった教育活動や社会貢献にも力を入れ、2014年には「OMOTENASHI Selection」受賞。横浜市や神奈川県の助成事業にも多数採択されている。「音の神様」として多くの企業・団体から信頼され、音の力で社会に貢献し続ける。
2012年4月 NHKさいたま局 キャスター・リポーター2014年4月 新潟テレビ21(テレビ朝日系列)2017年4月 テレビ山梨(TBS系列)2021年4月〜 フリーランスとして活動スタート