【第2話】「育成と未来」編〜”育てること”こそ国の根幹──バスケから描くスポーツの未来〜

タグ

株式会社Zero One Basketball
代表取締役

塚本 鋼平

TSUKAMOTO KOHEI

秋田県

本連載「挑戦と育成で描くバスケの未来」後編では、塚本鋼平さんが取り組む「育成」への情熱を掘り下げます。会社設立の原点、指導の哲学、出版に込めた想い、そしてスペインでの学び。秋田から全国へ広げたい「育てる文化」と、スポーツが切り拓く未来像について伺いました。

会社設立の原点

― 会社を立ち上げた理由を教えてください。

 塚本:Bリーグに勤務していた時から「”育てること”は国の根幹」という言葉を信じていました。リーグの立ち上げ期は、とにかく人材不足と育成の仕組み不足に直面していました。子どもたちが挑戦できる環境がなければ、いくらトップが盛り上がっても未来は続かない。そう痛感したんです。

だからこそ、退職後に自分で会社を立ち上げ、解説や出版、クリニックを通じて“育成を社会全体に広める”ことを目的に活動を始めました。秋田という地方に拠点を置いたのも、「地域に根ざすことこそが日本全体のスポーツ文化を支える」という信念があるからです。

コーチングは“ピタゴラスイッチ”

― 指導の中で大事にしている考え方は?

 塚本:僕はコーチングを“ピタゴラスイッチ”だと思っています。ピタゴラスイッチって、仕掛けを作ると勝手にボールが転がって、最後に面白い結果が出るじゃないですか。指導も同じで、仕掛けを作り、選手自身が「あ、分かった!」と気づく瞬間を大切にしているんです。

「ドリブルはこうだ」「シュートはこう打て」と押し付けるのではなく、選手が自分で楽しみながら気づいた技術は、忘れにくく身につきやすい。そうした“気づきの瞬間”を生み出せるかどうかが、コーチングの本質だと考えています。子どもたちの表情が変わる瞬間こそ、僕にとって最大の喜びなんです。

出版と哲学の継承

― 出版にも力を入れていらっしゃいますね。

 塚本:はい。翻訳した『ドリブルドライヴモーションオフェンス』は重版を重ね、多くの指導者に読んでいただいています。戦術や技術だけでなく、海外で培われた考え方を日本語に落とし込みたいと思ったのがきっかけです。

さらに今は「指導者の哲学」をテーマにした書籍を準備しています。これは単なる技術書ではなく、「良い指導者とは何か?」を問う内容です。実は、この翻訳作業を一緒に進めてくれていた秋田の若い英語教師がいました。情熱を持った素晴らしい方でしたが、残念ながら昨年亡くなってしまったんです。彼の想いを形に残したい。その気持ちが、出版に込めた大きなモチベーションになっています。

この本はバスケット指導者だけでなく、教育者やビジネスパーソンにも役立つ普遍的な哲学が詰まっていると確信しています。

スペインで見た育成環境

― 海外視察で感じた日本との違いは?

 塚本:スペインに視察に行ったとき、最も驚いたのは「リーグ戦文化」です。日本はトーナメント方式が中心で、負ければそこで終わり。弱いチームだと年間の公式戦が数試合しかないこともあります。

一方でスペインでは、どのクラブにも年間30試合前後の公式戦が保証されています。勝っても負けても試合が続くから、挑戦と失敗を繰り返し、自然と成長していく。だからドロップアウトする子どもが少ないんです。

日本も近年は地域リーグやユース世代の大会が整備されてきましたが、まだまだ浸透しているとは言えません。試合数が増えれば、指導者も「今日はこれに挑戦しよう」と思えるし、子どもたちも多くの経験を積めます。これは育成にとって欠かせない環境だと感じました。

未来へのビジョン

― 今後のビジョンを教えてください。

 塚本:少子高齢化で人口が減る中、スポーツは子どもたちに夢や希望を与える大切な存在です。僕は「選手や指導者」だけでなく、「支える人・応援する人」を増やすことが未来に直結すると考えています。バスケを通じて地域に関わる人を増やす。これはスポーツの発展そのものにつながります。

また、育成は生産性だけを見れば「稼げない領域」です。でも地域へのロイヤリティや文化の継承を生み出す、極めて大きな価値があります。だからこそ「”育てる”こそ国の根幹」という信念を多くの人と共有していきたい。

秋田という地方からでも、日本全体のスポーツの未来に貢献できる。その可能性を証明することが、これからの僕の挑戦です。

編集後記

挑戦の軌跡の先に辿り着いた「育成」というテーマ。塚本さんの活動は、バスケットボールにとどまらず、スポーツ界全体の未来づくりへと広がっています。

前編で描いた「挑戦」、後編で語られた「育成」。二つの側面を通じて見えてきたのは、挑戦があるからこそ育成が生まれ、育成があるからこそ次の挑戦が続いていくという循環でした。秋田から全国へ、そして世界へ広がるそのビジョンこそが、“挑戦と育成で描くバスケの未来”の核心です。

塚本さんの挑戦はまだ続きます。今後予定されている出版や講演を通じ、その哲学はさらに多くの人に届くでしょう。連載で追いかけた物語は、むしろこれからが本番なのかもしれません。

ご紹介

Profile

 塚本 鋼平

株式会社Zero One Basketball
代表取締役

塚本 鋼平

TSUKAMOTO KOHEI

Instagram X(旧:Twitter)

Master of Business Administration(MBA:経営学修士) スポーツ・フォー・トゥモロー・コンソーシアム(SFTC)準会員 日本スポーツマンシップ協会(JSA)公認 Sportsmanship Coach 一般社団法人 日本防災共育協会認定 SDGsビジネスエデュケーター 日本バスケットボール協会(JBA)公認S級コーチ 日本バスケットボール協会(JBA)公認コーチデベロッパー

公式サイトはこちら

地域 北海道・東北地方の関連コンテンツ

山形発のジェラート専門店。本場イタリア仕込みの石田流ジェラートとは?

  • 地域 北海道/東北地方
  • 視点 食品
  • 業種 挑戦

「全てご縁です。」勝手に上山観光大使!? 文房具好きによる文房具好きのための文房具店、”おかぶん”の実体

  • 地域 北海道/東北地方
  • 視点 小売/サービス業
  • 業種 交流