「弁護士」と聞いて、自分には縁がない業種だと思いがちですが、いざトラブルに見舞われた時に、誰よりも頼りになるのは親身になって相談に乗ってくれる弁護士さんです。今回は、大阪で法律事務所を構える里村格弁護士に、依頼人への向き合い方や弁護士としての志、そして今後のビジョンなどお話を伺ってきました。
ひょんなきっかけで大学3年生から弁護士を目指す
本日はよろしくお願いいたします。現在里村さんは弁護士として活躍されていますが、進路を決めるきっかけは何だったのでしょうか?
里村弁護士:大学に進学する際に、理系に進むイメージがわかず文系を選択しまして、それなら法学部が一番就職に有利かなと。その時点では、弁護士になりたいという強い意志は特になかったんですが、3回生の時に民法のゼミに入ったところ、法律の面白さや奥深さを知ることができました。法律と聞くと、一般的には「堅苦しい」とか杓子定規のイメージがありますよね?それはある意味では正しいのですが、理路整然と理屈を詰めて考えるということ、そしてそれを「道具」として使い権利利益を実現して依頼者に貢献するという仕事がとても面白いだろうなと感じたんです。そこから弁護士を目指す決意を固めて、振り切って猛勉強しました。
弁護士になるためにロースクールで勉強して資格を取り、その後老舗の弁護士事務所に就職されたんですね。
里村弁護士:はい。そこでは金融、不動産、建築、マンション管理、メーカー、地域商社や中小企業など、バラエティー豊かな幅広い企業の業務に携われたので、貴重な経験を積むことができました。そこで学んだのは、徹底的に調べることの大切さです。依頼者から聞かれたことにプロとしてちゃんと答えるためにも、とことん調べて回答を出さなければなりません。そういったことも含めて、事務所のボスの背中を見ながら勉強させてもらいました。その事務所に7年ほど在籍したのち、自分で事務所を立ち上げて独立、という流れで今に至ります。
独立後に仕事を運んでくれたのは「人の縁」。依頼者に寄り添うことを第一に
事務所を立ち上げて独立することに不安はありませんでしたか?
里村弁護士:どの弁護士でも言えることですが、10年くらいキャリアを積んだら、「自分で仕事を取ってきて回していかなければならない」という空気を感じるものなんですね。私がいた事務所も、過去の弁護士はある程度在籍したら順繰りで独立していく流れができていたので、私自身も「そろそろかな」と。いつまでもボスから仕事を与えてもらうわけにはいきませんので。
仕事依頼のアテと言いますか、見込みのようなものはあったのでしょうか?
いざ独立するとなったら「本当に仕事が来るのかな?」と多少の不安もありましたね。それでも、過去に依頼していただいた方が顧問先企業を紹介してくれるなど、人の縁が仕事を運んできてくれました。本当にありがたいですよね。弁護士に依頼するって、普通の人にとってはハードルが高いことだと思うんですが、できればそういうのはなくしていきたいんです。そのためにも、依頼者に寄り添うことをできるだけ心がけています。
現在、事務所の方ではいろいろなジャンルの業務を行っているようですが、メインとしているものや得意な案件はありますか?
里村弁護士:労務案件ですね。これは使用者側も労働者側も扱っています。みなさんが普通に働いて過ごしている中で何らかのトラブルが発生した時に、それを解決できるということにやりがいを感じています。労務案件を取り扱っていて思うのは、使用者側では、いわゆる問題社員の取り扱いをどうするかという点で、そのまま放置するとほかの社員の士気にも関わるので適正に対処する必要があると思います。他方、労働者側では、会社の独自のルールに従わせて労働者を働かせる、いわゆる「暗黙のルール」が多いことです。それゆえに労働法規があまり守られない面もあるように思います。以前は労働組合が動いて是正することもありましたが、今はあまり組織立が高くないです。だからこそ、弁護士が間に入って、労働者がきちんと働ける環境を整える、それによって会社の職場環境を整えて利益向上につなげるというのは、非常に有意義な仕事であると感じています。
労働問題は労働者も経営者も関係なく、誰しも直面することですよね。
里村弁護士:そうですね。労働人口の分だけ労働問題はあります。ですが正直、公が全部カバーしきれていない気がするので、個々の相談で救うべきところはちゃんと救ってあげたいと強く思います。
どんな状況でも「誠実な対応」をモットーに。働く人の力になり続けたい
とても立派な志だと思います。最後に弁護士として、また弁護士事務所の経営者として、今後のビジョンを教えていただけますか?
弁護士としては、中小企業の事業承継に力を入れていきたいですね。経営陣の高齢化など、会社が傾いてしまう要因は様々ですが、たとえシステム上では利益を上げていて社会的に有益な存在であっても、会社が傾いてしまえばそれが失われてしまう。そうならないためにも、弁護士が他の人につなげて、その事業をちゃんと継続させることにやりがいを感じています。
事務所の経営者としては、売り上げを上げることが第一義だとは考えていません。個人としてのスキルや、弁護士としてできることを増やしていきたいですね。そういった点では、志をともにできる人がいれば一緒にやっていきたいかもしれません。「志」とは、社会の役に立てる仕事だということを第一義的に置けるという意味です。やはり、自分で課題にあたってこれを解決し、依頼者の権利利益を守るというのはやりがいのある仕事だと感じます。もちろん運やなりゆきで解決することもありますが、自分でコントロールして解決できたときは充実感を感じます。
また、私がもっとも心がけているのは、事件に対しても依頼人に対しても、誠実に対応することです。それは、惰性で事件にあたらずに丁寧に調べて検討するし、依頼者にも私が行っている業務の内容について丁寧に説明したうえで、依頼者の意向を尊重するということです。依頼者は弁護士に依頼するのも、手続き自体も初めてかもしれないので、「今後はこういう流れで進んでいきます」「相手はこう出てくる可能性が高いです」という見通しはできるだけしていますし、それを踏まえて依頼者と方針を決めています。その結果、「ちゃんと寄り添って話を聞いてくれた」「選択肢を示してもらって導いてくれた」と感謝の言葉をいただいたりすると、とても嬉しいですね。
編集後記
インタビューを終えた後、少し時間があったので雑談をしたところ、里村弁護士から逆インタビューを受ける流れになりました。そこで感じたのは、相手の話を引き出すテクニックや傾聴力の素晴らしさです。会話が進むにつれて、トラブルを抱えた依頼者に寄り添って、速やかに問題解決へと導いてくれるのだろうという安心感が伝わってきました。これからも、大阪を中心にますますご活躍されることを応援しています!