沖縄で建物メンテナンス事業を展開する株式会社サンゴ装設の代表取締役・矢野恭平さん。水道管工事を中心に、リフォームやライニング工事など建物に関わる幅広いサービスを提供しています。多様な職業経験を経て30代後半で水道業界に入り、数年で独立。現在は配管を交換せずに再生する「ライニング工法」にも取り組み、マンションや商業施設の配管更新の新しい選択肢を提案しています。本インタビューでは、矢野さんのキャリア、水道事業の魅力、そして建物メンテナンスの未来について伺いました。
今回は
石塚直樹がナビゲーターとなり、
株式会社サンゴ装設 代表取締役 矢野恭平さんのキャリアや取り組みについて伺いました。
目次
沖縄で建物メンテナンス事業を展開
石塚:
まずは現在の事業について教えてください。
矢野さん:
沖縄で住宅やビル、商業施設などの建物を対象にメンテナンス事業を行っています。水道管工事を中心に、リフォームやライニング工事に関わる工事全般に対応しています。
石塚:
水道からリフォーム、ライニング工事まで幅広く対応されているのですね。
矢野さん:
そうですね。もともとは水道工事から始まりましたが、お客様からの依頼をきっかけに対応できる範囲が広がっていきました。
30代後半で水道業界へ
石塚:
水道工事の仕事を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
矢野さん:
30代後半で沖縄に来たことがきっかけです。それまでにもいろいろな仕事を経験してきましたが、年齢のこともあり就職が難しい状況でした。そんな中で水道会社の社長が私を採用してくださり、水道の仕事に携わるようになりました。
石塚:
それ以前はどのようなお仕事をされていたのですか。
矢野さん:
高校卒業後は東京消防庁を目指していました。ただ当時はバブル崩壊の影響で公務員志望者が増え、倍率が非常に高くなり、残念ながら合格できませんでした。
その後は鉄骨鳶の仕事や長距離トラックの運転、飲食店、ファッションショーのプロデュース、看板屋、バーテンダーなどさまざまな仕事を経験しました。潜水士として海中工事に携わったこともあります。
石塚:
かなり多様な経験をされていますね。
矢野さん:
自分はとにかく学びたいという気持ちが強かったんです。いろいろな仕事を経験しながら、新しい技術や知識を身につけたいと思っていました。
水道工事の仕事に感じた大きなやりがい
石塚:
水道工事の仕事をしていて面白いと感じる点はどこでしょうか。
矢野さん:
一番は感謝されることですね。
水道は蛇口をひねれば水が出るのが当たり前の設備です。しかし突然水が出なくなったり排水が詰まったりすると、多くの方がどうしたらいいかわからなくなります。
そういう時に私たちが修理に伺い、元通り使えるようになると、とても感謝していただけます。
石塚:
生活に直結する設備ですからね。
矢野さん:
そうですね。水道の仕事は、当たり前の生活を取り戻す仕事だと思っています。大変な面もありますが、社会にとって重要な仕事だと感じています。
技術習得のために人の数倍働く
石塚:
水道の技術を比較的短期間で習得されたと伺いました。何か工夫されたことはありますか。
矢野さん:
特別なことではありませんが、人の数倍働くことを意識していました。
水道の仕事は材料の種類や規格が多く、覚えることが非常に多いんです。そこで毎日ノートに図を書きながら勉強しました。
3ヶ月ほどでノートが水道の勉強で埋まるくらい書き続けていました。
石塚:
かなり努力されたのですね。
矢野さん:
自分は特別頭が良いわけではありません。だからこそ人の2倍、3倍働けば何とかなると思っていました。
沖縄での独立と経営の苦労
石塚:
独立されたのはいつ頃ですか。
矢野さん:
今期で6年目になります。
石塚:
独立直後は大変でしたか。
矢野さん:
最初はかなり大変でした。企業の仕事は工事が終わってから入金されるまで数ヶ月かかることがあります。資金繰りがとても厳しかったですね。
自分の給料をどう確保するか悩むこともありました。ただ、どうしても無借金で事業を始めたかったので、貯金だけで会社を立ち上げました。
石塚:
現在の体制はどのくらいでしょうか。
矢野さん:
会社自体は3名ですが、協力会社の職人さんと連携して工事を行っています。全体では100名近い体制で仕事に対応できるようになっています。
配管を交換せずに再生するライニング工法
石塚:
現在、特に力を入れている取り組みはありますか。
矢野さん:
水道工事の中でも「ライニング工法」という配管再生技術に取り組んでいます。
石塚:
どのような工法なのでしょうか。
矢野さん:
古い建物では排水管や水道管が鉄製のパイプで作られていることが多く、築30年ほど経つと内部が錆びて流れが悪くなったり、穴が開いて漏水することがあります。
ライニング工法は、その古い鉄管を撤去するのではなく、内部に新しい管を作る技術です。
石塚:
配管を交換しなくてよいのですね。
矢野さん:
はい。パイプ内部を洗浄した後、エポキシ系の塗料を流し込み、均一に塗布して硬化させることで新しい管を形成します。
マンションや商業ビルでは配管交換のために壁や床を壊すと大規模工事になりますが、この工法なら建物を壊さずに配管を再生できます。
水道工事から広がった事業領域
石塚:
水道以外の工事も手がけるようになったきっかけは何でしょうか。
矢野さん:
水道修理に伺った際に「ついでにこれも直せる?」と相談されることが増えたことです。
例えば床の張り替えや外壁塗装、窓の交換などです。
自分は工務店の家庭で育ったので、ある程度の工事は対応できました。そこから職人さんとのネットワークを広げていきました。
石塚:
お客様の信頼から仕事が広がっていったのですね。
矢野さん:
そうですね。建物のトラブルは1箇所だけではなく複数の場所で起きることが多いです。
「この人に任せれば安心」と思っていただけることが大切だと思っています。
当たり前の生活を守る仕事
石塚:
仕事をする上で大切にしていることは何でしょうか。
矢野さん:
私は人が好きなんです。困っている方に喜んでもらえる仕事をしたいと思っています。
水道の仕事は壊れたものを元通りにする仕事です。
当たり前に使えていたものを、もう一度当たり前に使えるようにする。それが私たちの役割だと思っています。
石塚:
印象的な考え方ですね。
矢野さん:
作業もできるだけ短時間で、きれいに終わらせることを意識しています。
「何をしたのかわからないけれど直っている」
そのくらい自然に問題を解決できる仕事を目指しています。
編集後記
建物メンテナンスという分野は、普段意識されることの少ないインフラ領域です。しかし蛇口をひねれば水が出るという当たり前の生活は、こうした技術者の存在によって支えられています。
矢野さんのキャリアは決して一直線ではありません。多様な職業経験を経て水道業界に入り、短期間で技術を習得し独立に至りました。その背景には「人の数倍働く」という覚悟と学び続ける姿勢があります。
特に印象的だったのは配管再生技術であるライニング工法への取り組みです。配管更新は通常大規模な工事を伴いますが、既存の配管を再生する技術は工期やコストの面で合理的な解決策となります。
沖縄ではまだ普及していないこの技術が、今後の建物メンテナンスの選択肢として広がっていく可能性は高いと感じました。
ご紹介
Profile
株式会社 サンゴ装設
代表取締役社長
矢野恭平さんは、沖縄で建物メンテナンス事業を展開する株式会社サンゴ装設の代表取締役。
水道管工事を軸に、リフォームや配管再生技術「ライニング工法」など、建物に関わる幅広い施工に対応している。
30代後半で水道業界に入り、短期間で技術を習得し独立。現在は配管を交換せずに再生する新しい選択肢の普及にも取り組んでいる。
株式会社ウェブリカ
代表取締役
新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。
腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。
地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。