人生の折り返し地点で、本当にやりたいことを選び直す。
今回のゲストは、東京都町田市で訪問看護ステーション「バンビナース」およびグループホーム「ひろば」を運営するわんビート合同会社 代表・石川洋一。
新卒で住宅メーカーに入社し、新築住宅の営業から始まり、リフォーム、さらには土地活用による賃貸企画まで、住まいに関わる様々な現場を長年経験してきた石川さん。
「お客様の人生に関わる」ことを何よりのやりがいと語るその裏には、現場で培われた深い視点がありました。
そんな中で迎えた40代、「このまま会社員を続ける人生でいいのか?」という問いに向き合い、
全く異なるフィールドである福祉の現場に飛び込む決断をします。
起業準備、制度対応、スタッフとの関係性構築──
すべてがゼロからの挑戦だった日々の中で、
石川さんが大切にしているのは、「地域に必要とされる現場を、自分の手でつくること」でした。
番組では、住宅から福祉へという大胆なキャリアチェンジの背景にある想いや、
バンビナース・グループホーム「ひろば」を通じて感じる、地域と人との関わり方について
等身大の言葉でたっぷりと語っていただいています。
目次
わんビート合同会社とは
わんビート合同会社は、東京都町田市でグループホーム「広場」と訪問看護ステーション「バンビナース」を運営する会社です。代表の石川洋一さんは、もともと福祉の人ではありませんでした。
新築 → リフォーム → 新築 → 資産活用
石川さんは新卒で住宅メーカーに入社し、新築の営業からキャリアを始めました。
転機はバブル崩壊。世の中を見渡して「新築よりもリフォームのほうがいいのではないか」と気づき、自ら手を挙げてリフォーム部門へ異動します。ここで13年ほど。
石川さんが描いていたのは、こんな理想でした。新築ができて、その後リフォームもできれば、住宅のライフサイクルを一通り自分で担当できる。人にライフサイクルがあるように、住宅にもサイクルがある。自分が新築した建物を、自分がリフォームする営業でありたい、と。
そしてリフォームをこなすうちに、新しいものが見えてきます。建てた後になって「ここは直したほうがいい」「使い方がこうなったらいい」という点が、お客様の生活から見えてくるのです。
それが分かったので、今度はそれを反映してもう一度新築をやりたくなった。違うアプローチでもう一度営業ができそうだと考え、新築に戻ります。
その後は資産活用の部署へ。土地を利用して賃貸のアパートやマンションを建てる仕事を6〜7年ほど担当しました。
40代で「ゴール」を考えた
独立を考え始めたきっかけは、年齢でした。
40代になった頃、石川さんは人生と仕事のゴールについて考えるようになります。仕事を何歳までやるのだろうか。40代なら折り返し地点だ。
ずっと住宅の関係でやってきたけれど、残り半分を同じように仕事をするなら、別のことをやってもいいのではないか。
しかも、定年まで頑張ってから残りの数年で違うことを始めるのは辛いのではないか。年齢とともに集中力も体力も落ちてくるのを感じている。だったら早いほうがいい。
ちなみにこの時点で決まっていたのは「会社員ではないことをやりたい」ということだけで、事業の中身は決まっていませんでした。
「なぜこの人たちは、こんなに明るいんだろう」
グループホームとの出会いは、住宅営業の仕事のなかにありました。新築に戻った時期に、障害のある方のグループホームを建てる側として関わったのです。
そこで石川さんは、自分の先入観に気づきます。
それまで障害のある方に対して、勝手に「重い」「暗い」というイメージを持っていた。ところが実際に利用者やその家族に会ってみると――みんな明るい。笑顔なのです。
先入観とのギャップに違和感を覚えた石川さんは、「なぜこの人たちは、こんなに明るいんだろう」という問いを抱えます。そして自分の答えを探すために、いろいろな人に「どうしてですかね」と聞いて回ったといいます。
ある法人の理事長から返ってきた言葉が、その答えになりました。
障害を持っている人の親御さんが、自分のお子さんの状態を受け入れて「ああ、そうなんだな」と思えたとき、心も穏やかになるし、明るくなる。
「そういう受け入れ方ができるのか」――石川さんはそれがすごく腑に落ちた、と振り返ります。これが一つの気づきになりました。
実家の土地と、両親の意外な答え
もう一つ、まったく別の事情がありました。石川さんの実家には古家と駐車場があったのですが、田舎で活用が難しいエリアだったのです。
自分は住宅を扱う仕事をしているのに、自分の実家の土地をうまく活かせない。何をしたらいいのか。
そこで、あの障害者グループホームという選択肢が結びつきます。
ただし石川さんは躊躇しました。両親は古い世代なので、障害のある方が隣に住むことを嫌がるのではないか――そう思ったからです。
それでも聞いてみると、返ってきたのはあっさりとした「いいんじゃない」。こちらが拍子抜けするほどの反応でした。
よく話を聞くと、理由が分かりました。近所にいる障害のある方が、家にお茶を飲みによく遊びに来ているというのです。
石川さんはそれを知りませんでした。そして気づきます。「私はただ箱を作っていただけですが、両親は接していたんだな」と。これもまた意外な発見でした。
運営してくれる事業者が、見つからなかった
こうしてグループホームを作ることは決まりました。ただし当初の構想は、あくまで実家の土地を使って何かをするというもの。つまり建てた後に運営してくれる事業者を探す「場所貸し」の形でした。
ところが、これが簡単ではありませんでした。時間が経っても、やってくださるところが見つからない。
どうしたものかと考えていたところから、石川さん自身が運営に踏み込んでいくことになります。住宅営業一筋だった人が福祉の事業者になったのは、そういう経緯でした。
※本記事は、ラジオ番組でお話しいただいた内容をShikisai編集部が記事としてまとめたものです。発言は趣旨を損なわない範囲で整理しています。
ご紹介
Profile
わんビート合同会社
代表
東京都町田市を拠点に、障がい者グループホームや訪問看護事業を展開する「わんビート合同会社」の代表取締役。
2020年の設立以来、保護犬・保護猫と共生できる温かい環境づくりや、利用者とスタッフが安心して働ける職場づくりに注力しています。
父親の介護経験を活かし、「信頼される看護」と「その人らしい暮らし」を大切にしたサービスを提供し、地域に根ざした福祉支援を目指して活動しています。
株式会社ウェブリカ
代表取締役
新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。