株式会社イッツアイ・クリエイト代表取締役・伍井康浩(いつい やすひろ)さんは、「幼い子どもが行方不明になった際に、最悪の事態を招く前に早期発見できる社会をつくりたい」という使命感から、防犯カメラのネットワーク化サービス「Share-Ju(シェアージュ)」を立ち上げました。防犯カメラを単なる監視機器としてではなく、社会全体の安心につなげる仕組みへと発展させようと挑戦を続けています。本番組では伍井さんのこれまでのキャリアや事業に込めた想いを伺いました。
目次
石塚: まず、事業の概要についてお聞かせください。
伍井さん: 私たち株式会社イッツアイ・クリエイトが目指しているのは、幼い子どもが行方不明になった際に、最悪の事態を招く前に早期発見できる社会をつくることです。そのための社会基盤として、防犯カメラのネットワーク化を推進しています。サービス名は「Share-Ju(シェアージュ)」です。
石塚: 単なる設置ではなく「ネットワーク化」という点が特徴ですね。
伍井さん: はい。一般の方が設置したカメラを「Share-Ju」に登録いただき、警察から正式に要請があった際に、私たちが代行して映像を開示します。偽の警察官などへの不正提供を防ぎつつ、必要な情報を確実に届ける仕組みです。
石塚: 世の中には防犯カメラがたくさんありますが、それが十分に活かされていないのが現実ですよね。
伍井さん: その通りです。小さな事件、例えば自転車の盗難や万引きなどでは、警察もわざわざ個人宅のカメラを確認しに来ないケースが多いんです。結果として「設置したのに役立たない」という状況が生まれます。「Share-Ju」が普及すれば、もっと身近なレベルで事件解決に貢献できると考えています。

プライバシーと安全の両立:利用者にとってのメリット
石塚: 一般の人にとってはどんな利点がありますか?
伍井さん: まず、警察対応の煩わしさがなくなることです。突然警察に「映像を見せてください」と言われるのは心理的な負担になります。Share-Juなら私たちが公式に代行するので安心です。また「社会のために役立つ仕組みに参加している」と胸を張って設置できる点もメリットです。
石塚: プライバシー面での懸念も和らぎますね。
伍井さん: そうです。周囲から「監視目的では?」と疑われるのではなく「社会貢献型のカメラ」と説明できます。さらにシステム上、警察が常時監視できるわけではなく、正式な申請があって初めて閲覧が可能になる仕組みなので、利用者も安心できます。

起業の原点——「これは使命かもしれない」と決意した瞬間
石塚: この事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
伍井さん: 幼い子どもが行方不明になり、悲しい結果を迎えるニュースを目にして「なぜ早く見つけられなかったのか」と強く感じたことが出発点です。私は高校時代に国家試験である第一種情報処理技術者試験に合格し、ITの知識を持ちながら不動産業界で働いていましたが、その力を社会に活かしきれていませんでした。
石塚: そこで防犯カメラの調査をされたのですね。
伍井さん: はい。「ネットワーク化された仕組みが存在するだろう」と思っていたのですが、実際にはなかった。そこで「これは自分に課せられた使命かもしれない」と感じました。50代を迎え、10年後も20年後も社会が変わらないのでは意味がない。今こそ行動すべきだと決断しました。
技術面での挑戦とシステム構築の道のり
石塚: システム構築には大変な苦労があったと伺いました。
伍井さん: 最初はソフトウェア会社に外注しましたが、期待通りに進まず、最終的には自分でプログラミングをやり直しました。IT知識はありましたがブランクもあり、最初は大変でした。しかし「誰かに任せるのではなく自分の手で作るしかない」と思い直し、少しずつシステムを完成させていきました。
石塚: 起業家としての粘り強さを感じます。
伍井さん: 技術的な壁は多かったですが、ここを乗り越えない限り前に進めない。使命感が支えになりました。
低価格から始める社会貢献モデル
石塚: ビジネスモデルはどのように構築されていますか?
伍井さん: 登録ユーザーからの年会費で成り立っています。月額300円をベースに年額3,000円(税抜)という低価格です。さらに「永年会費4,000円(税抜)」を設定し、一度払えば継続的に利用可能にしました。まだ普及期なので「まず広げる」ことを優先し、採算より参加のしやすさを重視しています。
石塚: かなり良心的な価格ですね。
伍井さん: そう思います。最初から利益を追うのではなく、社会基盤として定着させることが第一です。普及すれば自然と持続可能なモデルに成長します。
警察・行政・メーカー・警備会社とつながる展望
石塚: 今後の展望について教えてください。
伍井さん: 市民に広めると同時に、警察や行政との連携を強めたいです。また、防犯カメラメーカーや警備会社とも協力し、オプションサービスとして提供できる仕組みを検討しています。Share-Juが「当たり前」の存在になれば、犯罪抑止効果も飛躍的に高まると考えています。
石塚: 「どうせバレる」と思えば若者が安易に犯罪に走ることも減るはずですね。
伍井さん: その通りです。1件目で逮捕できれば、2件目・3件目の被害は防げます。犯罪を減らし、子どもや高齢者を守る社会の基盤にしていきたい。それが私の目標です。

編集後記
伍井さんのお話を通じて強く感じたのは、「社会に必要な仕組みを自分の責任で実現する」という覚悟でした。防犯カメラは街に溢れているのに、その情報が十分に活用されていない現実。その“もったいなさ”を解決するのが「Share-Ju」です。料金は年額3,000円(税抜)から、永年会費でも4,000円(税抜・割引価格)と参加しやすい水準で、地域に根ざした安全の基盤を整える仕組みになっています。
また「プライバシーと安全の両立」という視点も重要です。警察が常時監視するのではなく、必要時にのみアクセス可能とする仕組みは、市民の安心感を担保します。さらに警備会社やメーカーとの連携が進めば、日本全体の防犯インフラとして広がる未来が見えてきます。
ご紹介
Profile

株式会社イッツアイ・クリエイト
代表取締役
高校在学中に第一種情報処理技術者試験に合格し、ITの知識を活かして不動産業界でキャリアを積む。
幼い子どもの行方不明事件に触れ、「社会に必要な仕組みを自らの使命として実現する」と決意。
防犯カメラをネットワーク化し、警察と市民をつなぐサービス「Share-Ju」を開発。
プライバシーと安全を両立させながら、地域の安心を守る社会基盤づくりに挑んでいる。

株式会社ウェブリカ
代表取締役
新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。
地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。