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人の“違い”を成果に変える。パーソナリティ心理学を武器にした人材・組織開発/HRD株式会社・韮原祐介

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「人の性格は、科学的に測れる。そして、その違いを理解すれば、組織はもっと強くなる。」——そう語るのは、HRD株式会社 代表取締役 韮原祐介さん。同社は「パーソナリティ心理学」を基盤に、Everything DiSC®・ProfileXT®・CheckPoint 360°™などの人材アセスメントを通じて、チームマネジメントや営業コミュニケーションを革新してきました。ハイブランド店舗の売上改善や人材育成支援など、多彩な事例を持つHRD。その理念と実践、そして未来を伺いました。

パーソナリティ心理学とは? ― 性格の違いを数値化する心理学

石塚:HRD株式会社はどんな会社ですか?

韮原:「パーソナリティ心理学」という学問をビジネスに活かす会社です。パーソナリティ心理学は、人の性格の違いを科学的に測る学問です。
誰もが「兄弟で性格が違う」とか「同じ環境でも一人ひとり違う」という経験をしてきたと思います。その違いが「どう違うのか」「どれくらい違うのか」を測定するのが私たちのベースにある学問です。

石塚:一般的に知られているMBTIなどの性格診断とは異なるんですね。

韮原:はい。よくあるのは「外交的/内向的」「血液型別の性格」といった分類ですが、私たちは「どちらの傾向が強いか」を測定します。たとえば会話では「主張したい」ときも「耳を傾けたい」ときもある。その強度を可視化するんです。
この違いを理解することで、チーム内の付き合い方を工夫したり、顧客対応を変えたりすることで、売上やマネジメントの成果につながります。

HRD株式会社の歩みと韮原さんのキャリア

石塚:韮原さんご自身はどのような経緯でこの会社に?

韮原:HRDは父が約30年前に創業しました。当時、アメリカで普及していた「パーソナリティの違いを活かしたマネジメント」を日本に導入し広めたんです。私はその姿を見て育ちました。
ただ、大学では心理学を専攻したわけではなく、卒業後はアクセンチュアに就職し、そこで約10年、BtoBコンサルティングに従事しました。その後、AIやビッグデータの会社に移り、成長支援やコンサルティング部門の責任者を務めました。

石塚:AIと心理学、畑違いのように見えますが?

韮原:実はつながっています。AIは人間の心理や脳の働きを研究し、それを機械に再現するところから始まっています。だから私がAIを扱っていた経験は心理学の応用に直結しました。
また、2015年頃はまだAIをどうビジネス活用するかの模索段階で、Google本社から問い合わせが来ることもありました。その経験と今の心理学のビジネス活用は「学術知を実務に翻訳する」という意味で共通しています。振り返ればすべて繋がっていたと考えています。

ハイブランド店舗で実証された「任せるマネジメント」

石塚:HRDの成果事例を教えてください。

韮原:世界的ハイブランドの店舗で、コロナ禍にもかかわらず売上トップを達成した例があります。
店長や副店長がアセスメントを受け、自分のスタイルを理解。従来の「自分で動くプレイヤースタイル」から「部下に任せるスタイル」へと変化しました。結果、若手が主体的に動くようになり、店舗全体の雰囲気が改善。自然な声かけやサポートが増え、お客様から「雰囲気の良い店」と評価され、売上も伸びました。

石塚:個人主義からチーム志向に転換したんですね。

韮原:はい。販売員は本来、自分の顧客だけを見がちですが、店舗全体で協力することで、個人の成績も上がる。パーソナリティ理解が行動変容を促した好例です。

Everything DiSC®・ProfileXT®・CheckPoint 360°™:主要アセスメントの役割

石塚:HRD株式会社の具体的なサービスについて教えてください。

韮原:3つあります。

  • Everything DiSC®:対人間の欲求から生じる行動特性を測り、関係性の質の向上を実現する人材アセスメント
  • ProfileXT®:戦略的タレントマネジメントを実現する人材アセスメント
  • CheckPoint 360°™:リーダーの発揮行動を観察し、行動変容を導くリーダーシップ開発サーベイ

これらを直接クライアントに提供するケースもあれば、研修会社やコンサルティング会社に卸す「パートナービジネス」も展開しています。研修講師や人事コンサルが自社プログラムに組み込み、広がりを見せています。

新サービス「カタリスト」がもたらす日常変革

石塚:新サービス「カタリスト」について教えてください。

韮原:従来のアセスメントは「診断してレポートを渡す」ものでしたが、それでは日常で活かしにくい。そこで開発したのが Everything DiSC® カタリスト です。

オンラインプラットフォームで、自分と相手の違いをいつでも確認できます。1on1の前に「相手は直観的なのか論理的なのか」を確認したり、プロジェクトの計画段階で「計画をしっかり立てたい人」なのかもしくは「即興で進めていきたい人」なのか、などの違いを見える化する。摩擦を事前に減らせるのが強みです。

価格は1人あたり1万円台(※2025年10月時点での参考価格です)。アセスメント+無期限の利用がセットで、月額課金は不要。日常のコミュニケーション改善やチームビルディングに活用できます。

石塚:例えば、飲み会での雑談にも使えますか?

韮原:はい。スタイル別のグループマップを見ながら「誰が協調的で誰が成果重視なのか」を話題にするだけで、相互理解が深まりチームも強くなります。

今後の展望・「違いを楽しむ社会」へ

石塚:今後の展望を教えてください。

韮原:パーソナリティの違いを活かす文化は、まだ社会に広がっていません。これからの企業には「違いを楽しむ力」が必要です。私たちは「カタリスト」を軸に、コミュニケーションをより良くし、人と組織の成長をサポートをしたいと思っています。

石塚:最後にご覧の方々へメッセージをお願いします。

韮原:「ちょっと面白そうだな」と思ったら、ぜひ気軽にご連絡ください。Webにも事例記事を公開しています。まずは知っていただくことが第一歩です。

※本文中で紹介している「Everything DiSC® カタリスト」は、日本語版の開発を進めております。
現在、正式なリリース時期は未定です。
最新情報は、HRD株式会社公式ホームページにてご確認ください。

編集後記

今回の取材で印象に残ったのは、HRD株式会社の強みが「心理学をビジネス言語に翻訳する力」にあるという点でした。パーソナリティ心理学という学問を「任せる」「違いを理解する」といった具体的な行動に落とし込む。それが現場を変え、最終的に顧客の売上を向上させているのです。
さらに、新サービス「カタリスト」は、アセスメントを「研究室の知見」から「職場の日常」に進化させる仕掛けでした。日常の1on1前に開けば対話が変わる。プロジェクト編成前に確認すれば衝突を防げる。組織の“触媒”として働くこのサービスは、各企業の人材マネジメントの常識を変える可能性を秘めています。韮原さんの言葉にある「人は理解されれば行動を変えられる」という思想は、これからの人と組織にとって大きな指針になると確信しています。

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Profile

韮原 祐介

HRD株式会社
代表取締役

韮原 祐介

にらはら ゆうすけ

1983年、千葉県生まれ。
慶應義塾大学商学部卒業後、アクセンチュアに新卒で入社。戦略策定、組織・人事改革、システム改革などに従事する。2012年~14年にかけてシンガポールに駐在し、ASEAN地域における日本企業の海外進出支援、組織・人事改革などを手掛けた。
2015年ブレインパッドの経営企画部長に就任し、中期経営計画の立案と実行を主導するかたわら、同社過去最大の大型案件を責任者として実行。同社の経常利益12倍、時価総額20倍超の達成に貢献。専門領域は、組織・人事改革、機械学習などのデータサイエンスやデジタルテクノロジーの活用による経営改善、サイバー防衛戦略。
東京大学非常勤講師、東進デジタルユニバーシティ講師などを歴任。
一般社団法人情報処理学会 情報規格調査会 SC7/WG29小委員会アジャイルとDevOps(デブオプス)委員。
2022年から現職。著書に『サイバー攻撃への抗体獲得法』『いちばんやさしい機械学習プロジェクトの教本』がある。

公式サイト
石塚 直樹

株式会社ウェブリカ
代表取締役

石塚 直樹

いしづか なおき

新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。
地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。

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