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「清掃は仕組みで進化する」──株式会社LOGPOSE(FiveStar)が挑む民泊清掃の構造改革 株式会社LOGPOSE(FiveStar)大谷真一

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「清掃は“綺麗になっていればいい”で終わらせません」。株式会社LOGPOSE(FiveStar)代表取締役の大谷真一さんは、民泊清掃の現場に入った当初、ルールもマニュアルもなく“人任せ”になっている構造に課題を感じたといいます。コロナ禍で業界が縮小する中でも撤退せず、基準づくり・導線設計・手当て制度を整備し、品質と効率を両立する仕組みを構築してきました。民泊市場の再拡大を見据え、「清掃を文化として支える」構想にも言及します。
今回は石塚直樹がナビゲーターとなり、株式会社LOGPOSE(FiveStar)代表取締役・大谷真一さんのキャリアや取り組み、民泊清掃の構造課題と仕組み化の考え方について伺いました。

民泊清掃へ入ったきっかけと、現場から始まった仕事

石塚:本日のゲストは、株式会社LOGPOSE代表取締役の大谷真一さんです。まず簡単に自己紹介をお願いできますか。
大谷さん:株式会社LOGPOSEの代表取締役を務めております。民泊清掃の会社で、屋号は「FiveStar」で運営しております。

石塚:清掃業自体は幅広くありますが、民泊に絞っている点が特徴的です。そもそも、どのような経緯でこの仕事に就かれたのですか。
大谷さん:飲食店やコールセンターなど、いくつかの仕事を経験してきました。油そば店で社員として働いた時期もあります。転機は、世話になっていた社長から「東京で民泊が盛り上がっている。管理する人が必要だから来ないか」と声をかけていただいたことでした。ご縁がきっかけで、清掃の領域に入りました。

石塚:最初から民泊に関わる形だったのですね。時期としてはいつ頃ですか。
大谷さん:今から9年ほど前で、2017年頃です。

石塚:東京に行かれて、どのように働き始めたのでしょうか。
大谷さん:清掃の仕事に触れたことがなく、いきなり現場に入る形でした。まずは各部屋に派遣され、部屋の掃除をするところから始まりました。管理というより、現場作業からのスタートでした。

コロナ禍での急減速と、「撤退」ではなく「継続」を選んだ理由

石塚:2017年頃から始めると、数年後にコロナ禍が来ます。民泊清掃業界は相当厳しかったのではないでしょうか。
大谷さん:都内の清掃会社の多くが、コロナのタイミングで8〜9割ほど倒産に追い込まれたという感覚があります。旅行客がほぼゼロになり、宿泊者がいなければ清掃ニーズもなくなります。部屋は増えていたのに客が入らない状況になり、オーナー、清掃会社、関連事業者が一気に衰退した印象でした。

石塚:その局面で、身の振り方を変える選択肢はなかったのでしょうか。
大谷さん:声をかけてくださった社長が、コロナ禍でFiveStarの撤退を判断されました。仕事がなくなり、会社として撤退するのは自然な流れでした。ただ、自分の中には以前から問題意識がありました。現場に入った時、仕組みが何もありませんでした。清掃ルールもなく、綺麗に対する価値観も人によって異なります。ここを仕組み化できれば、もっと良くなるという感覚がありました。

石塚:撤退判断が出る中で、それでも続けようと。
大谷さん:コロナが収束すれば、この業界はまだ伸びる可能性があると感じていました。コロナさえなければ、という前提はありますが、収束後の伸びを見て「継続したい」という意思がありました。結果として、会社は元々あった形を引き継ぎ、自分が代表としてFiveStarを継続する形になりました。

石塚:コロナ中は、どうやって持ちこたえたのですか。
大谷さん:清掃スタッフを抱えられない状況でしたので、とにかく会社を存続させ、自分が生活できる状態にすることを優先しました。民泊が動かない中、日本国内向けのハウスクリーニングや、家事代行に近い清掃、引っ越し後の清掃など、単発の仕事を積み上げて凌ぎました。

「業界が更地になった」後の再起と、残っていたことの意味

石塚:コロナが収束し始め、民泊が戻ってくる過程はどのような感触でしたか。
大谷さん:収束が見え始めると、民泊はまだ可能性があると考える事業者やオーナーが出てきます。ただオーナー側からすると「清掃会社が残っているのか」が大きな問題になります。調べても連絡がつかない、電話が使われていない、という会社が多かったようです。

石塚:そこでFiveStarが“まだやっていた”ことが効いてくる。
大谷さん:そうだと思います。どこも繋がらない中で、FiveStarは繋がります。そこで声をかけていただき、コロナ後のスタートダッシュはスムーズでした。業界が一度縮小し、更地に近い状態になった中で、継続していたことが結果として強みになりました。

民泊清掃の構造課題は「基準不在」と「割に合わなさ」にあります

石塚:最初に感じた問題は、具体的にどのようなものだったのでしょう。
大谷さん:清掃は一人ひとりの感覚や価値観に依存しやすい仕事です。「その人次第」の清掃が多く、本人は十分だと思っていても、客観的には汚いと感じることがあります。しかし「民泊清掃としてここまでやる」というルールがありませんでした。マニュアルもなく、誰も教えてくれません。成果だけを求められる中で、「綺麗になっていればいい」と言われても、何をもって綺麗なのかが定義されていませんでした。現場に入った人が、モヤモヤを抱えやすい構造がありました。

石塚:スタッフの扱われ方にもつながりますね。
大谷さん:料金体系の問題もあります。例えば1部屋3,000円の報酬だとしても、どれだけ汚れていても3,000円のままになってしまうケースがあります。想定より時間がかかっても報酬が変わらないと、割に合わないと感じて定着しません。入れ替わりが増えると、覚えたことも積み上がらず、会社として伸びにくくなります。

仕組み化の中核は「導線設計」と「考える時間の削減」です

石塚:FiveStarでは、どのように解決されているのですか。
大谷さん:まず「どこまでやる/やらない」の基準を作りました。オーナーの期待値も異なり、現場スタッフの感覚も異なりますので、大枠として線引きを明確にします。社内向けにも、ここまでできればOK、これ以上時間がかかる場合は手当てを付ける、といったルールを入れていきました。

石塚:マニュアルは、作業手順だけではない。
大谷さん:はい。部屋に入った瞬間から最後までの流れをマニュアル化します。電気を付けて換気し、布団カバーを外し、ゴミを集める。こうした“当たり前に見える最初の動き”を含めて、点と点をつなぐ「線」を作ります。迷いが出ると考える時間が増え、非効率になりますので、考える時間が発生しない導線を設計していきます。

石塚:時間目標と品質の関係も重要ですね。
大谷さん:仕組みがない状態で「1時間半で終わらせて」と言うと、多くの人は手を抜く方向に行きます。しかしそれは本質ではありません。手を抜かずに、現実的に1時間半で終わるように、考える時間を削り、段取りを固定するのが会社の責任だと考えています。

働き方・評価の可視化・今後の展望「清掃を文化として支える」

石塚:従業員の方々の働き方は、どのような形ですか。
大谷さん:現場運用はスマホが中心です。情報共有やマニュアル閲覧もスマホで完結できるようにしており、現地で自己完結できる体制を作っています。

石塚:民泊は部屋ごとに違いが大きいですが、そこも仕組みで吸収する。
大谷さん:はい。間取りの写真や備品の情報を整理し、迷いを減らします。何をどこに置くかが分からないと、考える時間が積み上がります。迷いを減らすことが効率に直結します。

石塚:やりがいはどこで生まれていますか。
大谷さん:FiveStarでは、清掃スタッフがオーナーと直接連絡を取れる体制があります。漏れの指摘もありますが、感謝の言葉も直接届きます。レビューが改善し「FiveStarのおかげ」と言われることもあり、それが働く力になります。

石塚:1人あたりの現場数と収入は。
大谷さん:1日あたり3件程度で、小さい部屋なら4件ほど回ります。直行直帰です。収入は男女関係なく月30万円超がベースで、20代前半の女性スタッフが35万円ほど稼いでいる例もあります。

石塚:今後の展望をお願いします。
大谷さん:インバウンド需要は今後も増えると見ています。民泊も増え、それを支える清掃会社は安定した形で必要になります。日本の民泊文化を支える清掃会社として確立したいです。さらに、日本人が持つ綺麗に対する意識は、メイドインジャパンとして海外でも戦える可能性があると考えています。

石塚:最後に、読者へのメッセージをお願いします。
大谷さん:民泊はこれから広がる業界で、支えるスタッフはまだ足りません。一緒に清掃に取り組み、業界を盛り上げる方と広げていきたいです。ご連絡をいただければ嬉しいです。

編集後記

民泊清掃は「清掃の手順」以上に、「毎回条件が違う現場を、どう再現可能にするか」が問われる領域だと整理できました。大谷さんの話の中心は、技術論というより構造設計です。基準不在が属人化を生み、固定単価が割に合わなさを増幅し、時間目標が品質低下の圧力になりやすい。こうした連鎖に対して、導線を設計し、考える時間を削り、追加負荷には手当てを付ける。結果として品質と効率を両立させ、現場の定着につなげています。清掃を「文化」として捉える視点も印象的でした。おもてなしの起点を“最初に目に入る整った空間”に置くなら、清掃は裏方ではなく、体験設計の中核になります。

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Profile

大谷 真一

株式会社LOGPOSE(FiveStar)
代表取締役

大谷 真一

おおたに しんいち

2017年より民泊清掃事業に参入。
現場スタッフとしての経験を起点に、民泊清掃業界における「基準不在」「属人化」「低定着率」といった構造課題に着目する。
コロナ禍による市場縮小期に事業を継承し、清掃基準の明確化、導線設計、手当制度の導入を通じて再現性ある運営モデルを構築。
現在は都内管理物件数1,000件以上の清掃に関与し、インバウンド拡大を見据えた日本品質の清掃モデルの確立を目指している。

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石塚 直樹

株式会社ウェブリカ
代表取締役

石塚 直樹

いしづか なおき

新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。
腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。
地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。

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