「管理費って本当に適正?」「修繕工事に無駄はない?」そんな疑問を持つマンション住民の皆様へ。今回は、マンション管理組合のコンサルティングを手がける深山州を迎え、管理会社との関係性や適正コストの見極め方について語ります。知らないうちに損をしているかもしれない管理費の実態を紐解き、住民が主導する管理運営のあり方を探ります。大切な住まいを守るためのヒントが詰まった対談です。
【株式会社メルすみごこち事務所のホームページはこちら】
目次
メルすみごこち事務所と、深山州さんの仕事
株式会社メルすみごこち事務所は、分譲マンションの管理組合に対して、運営や修繕についての助言・コンサルティングを行う会社です。代表の深山州さんがこの事業を始めて、およそ20年になります。
あまり聞き慣れない仕事かもしれません。ただ、分譲マンションを所有している人にとっては、自分が毎月払っているお金の使われ方に直結する話です。
きっかけは、20歳のときに父から受けた「調べてこい」
深山さんがこの世界に入ったきっかけは、学生時代にさかのぼります。当時、東京で親が持っていたマンションに暮らしており、父親がそのマンションの理事長を務めていました。
エレベーターのメンテナンスを手配し、管理人を派遣して清掃を行う――そうした身の回りの世話をするのが管理会社です。ところが父親は、担当者の対応や、払っているコストが見合っているのかを問題視していました。とはいえ本人も素人です。そこで、まだ学生だった深山さんに「実際に払っているお金が対価に見合っているのか調べてこい」という指令が下りました。
住んでいたマンションの支払いコストと業務内容、管理会社の対応を調べていくと、かなり割高なコストを払っていたことが判明します。そこから興味が生まれ、起業へとつながっていきました。
そもそもマンション管理組合とは?理事長とは?
マンション管理組合は、一部屋ずつを所有するオーナーの集まりです。企業でいう代表取締役、PTAでいう会長にあたる代表が理事長で、住民から集めた費用でマンションを良くしていくために運営されています。
住民から集めるお金は、大きく2つに分かれます。日々の運営に使われる管理費と、将来の建物を守るために積み立てていく修繕積立金です。深山さんの仕事は、この組合の側に立って助言をすることになります。
意外にも、難しいのは専門知識のほうではないといいます。マンションの管理や運営は、一定の勉強をすれば知識が身につく領域。いちばん難しいのは、そこに住む人たちの意思をまとめて一つの方向に導くことだと深山さんは語ります。住民はたまたま同じマンションを気に入って購入しただけの集まりで、年齢も、これまで生きてきた環境も、価値観もばらばらだからです。
管理費の「無駄」はどこで生まれるのか
管理会社は、ほぼすべてのマンションに新築時から入っています。メンテナンス業者や清掃の手配、管理費の徴収と支出――企業でいえば事務方にあたる仕事です。
問題は、その事務方にとどまらないケースがあることだと深山さんは指摘します。住民の利益になる工事よりも、自分たちの収入になるような割高な修繕工事を提案してくることが、決して珍しくないというのです。
根っこにあるのは、情報の偏りです。所有者である管理組合の側が、自分たちの集めたお金がどう使われ、いまいくら貯まっているのかにあまり関心を持っていない。その結果、管理会社がいちばん知識を持ってしまう。何が本当に必要な工事なのかを組合が判断できないため、割高な提案が通ってしまう、という構図です。
第三者が入るだけで、大規模修繕は2〜3割下がる
では、専門家が組合側に入るとどうなるのか。深山さんが挙げたのは、外壁の塗装や屋上の防水といった大規模修繕工事の例でした。足場を組んで行う大掛かりな工事の場合、間に入って競争入札をサポートするだけで、コストは普通に2割から3割下がるといいます。
その原資は、住民が毎月積み立ててきた修繕積立金です。2〜3割という差は、そのまま住民の負担の差になります。
もっとも、管理会社から歓迎されることはまずありません。住民が管理会社の提案に不信感を持ち、セカンドオピニオンとしてマンション管理士やコンサルタントを探す。プロが横から入ってくれば、当然煙たがられる――そういう仕事だと深山さんは率直に語っています。
なお、同業がいないわけではありません。マンション管理士という国家資格があり、試験に合格した人が独立して事務所を構えるケースは多くあります。深山さんが課題として挙げるのはむしろ需要側で、依頼する側の管理組合に「第三者を入れたほうがいい」という認識がまだ広まっていないことだといいます。
「プロ理事長」という事業──管理組合の高齢化にどう向き合うか
深山さんが近年力を入れているのが、プロ理事長という事業です。着眼点は、マンションと住民が同じだけ年を取るという当たり前の事実にありました。
購入時に30代・40代が中心だったマンションも、築40年、50年になれば、所有者の中心は70代・80代になります。そうなると理事会に出る役員も高齢化し、体調が優れない、親の介護がある、仕事が忙しいといった理由で役員を引き受けたがらない人が増えていく。理事長・理事会が機能しなくなれば、良くも悪くも管理会社への依存が強まります。
深山さんはこれを、企業に例えてこう表現しました。経営そのものを事務方に任せるようなもので、本来ありえないことだ、と。ならば、これまで管理組合の仕事をやってきたプロが直接その役割を担ったほうがいい――そう考えて立ち上げたのが、この事業でした。
実際に引き受けているマンションの傾向も具体的です。平均的な築年数は35年ほど、規模は30〜40世帯。5〜8階建て程度の、街でよく見かける規模の物件が中心だといいます。築年数の浅いマンションや都心のタワーマンションであれば、住民の年齢層も職業構成も異なり、自分たちで主体的に運営できることが多い。プロ理事長が求められるのは、築30年以上で若い所有者が少ないマンションのほうだ、というのが深山さんの実感です。
一部の高齢の住民が頑張って支えているマンションもあります。ただ、その人が5年10年と理事長を続けているうちはよくても、体力が衰えたり亡くなったりすれば、次の担い手がいない。頑張っているマンションほど、いずれ訪れる限界が見えてしまうのだといいます。
マンションの管理費や修繕積立金は、所有している限り毎月払い続けるお金です。その使われ方に関心を持つかどうかで、10年20年後の負担も、建物そのものの状態も変わってくる。深山さんの話は、その当たり前を思い出させてくれるものでした。
※本記事は、ラジオ番組でお話しいただいた内容をShikisai編集部が記事としてまとめたものです。発言は趣旨を損なわない範囲で整理しています。管理会社に関する記述は深山さんの見解にもとづくものです。
ご紹介
Profile
株式会社メルすみごこち事務所
代表取締役社長
明治学院大学(法学部)卒後、有楽土地住宅販売(現大成有楽不動産販売)、コスモスライフ(現大和ライフネクスト)、マンション管理コンサルティング会社、小規模管理会社で経験を積む。2006年にマンション管理士「㈱メルすみごこち事務所」として独立起業、代表に就任。
株式会社ウェブリカ
代表取締役
新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。■編集長インタビュー「メディア「地域色彩」立ち上げの背景とは?株式会社ウェブリカ・石塚直樹が語る地域企業活性化のビジョン」https://chiiki-shikisai.com/webrica-ishizukanaoki/