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「ARだけ作っても仕方ない」市民が城下町を知らなかった山梨県都留市の、ポイ活を組み込んだ仕掛け

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山梨県都留市の知られざる魅力を掘り起こす!今回は、都留市観光協会の石丸なつみさんと、デジタルプロモーションを手掛けシC-Table株式会社の本田久仁子さんをゲストに迎え、都留市を舞台にした「つるのルーツ」プロジェクトについて深掘り!

山梨県都留市は、城下町だった

今回のゲストは2人。都留市観光協会の石丸なつみさんと、C-Table株式会社の本田久仁子さんです。C-Tableは都留市に拠点を置くIT企業で、デジタル技術の実装面を担当しています。

山梨県都留市の場所は、特急が停まる大月市の隣。富士山の手前にあたるため、よく通り過ぎられてしまう土地でもあります。

そしてこの街には、あまり知られていない歴史がありました。

江戸時代、都留は城下町だった。山梨県内で城があったのは、甲府と都留だけ。

市民アンケートで分かった課題

プロジェクト「都留のルーツ」は2023年5月にスタートし、構想自体は2022年から始まっていました。

きっかけは、2022年の観光戦略・観光振興計画の改訂に伴う市民アンケートでした。そこで浮かび上がったのが、次の2点です。

  • 特に若い世代が都留が城下町だったことを知らない
  • 都留に対する愛着が薄れている
  • だから、まず市民に知ってもらう。そのうえで市外や観光客に魅力を発信していく――それが出発点でした。

    「ARだけ作っても仕方ない」と、受注側が言った

    この回でいちばん興味深いのが、プロジェクトの中身が依頼内容から変わっていった過程です。

    本田さんによれば、当初の依頼はシンプルなものでした。

    今は残っていない城を、ARで再現してほしい。

    「都留のルーツ」というプロジェクト名すら、まだありませんでした。

    ところが本田さんは、先ほどの市民アンケートの結果を知って懸念を持ちます。

    市民ですら自分の街を城下町だと認識していない。それなのに、市外の人を呼び込むためにARを作っても仕方ないのではないか。

    もう一つ、予算の使い方についての懸念もありました。

    予算を全部ARの構築に突っ込んだら、結局数十ダウンロードで終わってしまうのではないか。

    そこで本田さんが提案したのが、市民が楽しみながら城下町について学べる仕組みを取り入れることでした。ARは実装しつつコストを抑え、その代わりに市民にインセンティブを与える仕組みを作る。

    その結果、今の形になりました。

    「都留のルーツ」でできること

    石丸さんによる説明を整理すると、コンテンツは大きく4つです。

    • AR――かつてその山にあった城が再現され、イメージできる
    • クイズと記事――月に定期配信。城下町の歴史や都留の魅力を知ることができる
    • チェックイン機能(都留の城下巡り)――市内のスポットを巡ってポイントを獲得
    • 城下町ポイント――貯めると市内加盟店で使える電子クーポンになる
    • 石丸さんの言葉でまとめると、こうなります。

      楽しく学びながら、生涯学習のコンテンツとしても楽しめて、ポイ活にもなる。

      ポイントはお金をかけなくても貯まる――コンテンツを楽しむことで貯まっていく設計です。

      「何のメリットもないのに、自分から城下町を学びには行かない」

      なぜポイ活を組み込んだのか。本田さんの説明が、この施策の設計思想そのものでした。

      観光戦略のなかにはシビックプライド――市民が街を愛すること――の醸成という目的がありました。ただ、現実はこうです。

      何のメリットもないのに、自分から城下町のことを学びには行かない。

      だから目指したのは、この状態でした。

      仕掛け通りにやっていたら、なんとなく城下町のことを知って、なんとなく好きになっている。

      きっかけは、石丸さんの前任担当者の「何かポイントの仕組みを作れないか」という一言。それをC-Tableが実装した、という流れでした。

      なお、仕組みはLINE公式アカウントと紐づいています。そのため全国どこの人でもポイントを貯められるのが特徴です。2週間に一度配信されるクイズや記事を読むことでも貯まるので、都留に来られなくても参加できます。

      40スポットの「城下巡り」と、お城山からの絶景

      石丸さんの推しは、チェックイン機能の都留の城下巡りです。

      4つのエリアに10スポットずつ、計40か所。都留は富士山のような分かりやすい観光地ではないため、選ばれているのはディープなスポットです。

      例として挙がったのが、道の駅周辺エリアにある江戸時代に作られた水路普通なら絶対にたどり着かない、市民でも知らない人が多いかもしれない場所だそうです。

      一方、本田さんの推しは勝山城跡――通称お城山です。ARを構築したのも、この山の頂上でした。

      おすすめの理由は、景色です。頂上からの眺めがものすごく良く、富士山も見える。春は桜、秋は紅葉がきれい。

      しかもハードルが低い。30分もあれば登れる山で、市内の小学生が散歩や市内巡りで使うほどだといいます。

      「ランキングを出さないでくれ」と言われるほどのコアファン

      成果についても、具体的に語られました。

      プロジェクト開始から1年後に再度アンケートを取ったところ、城下町だと知らなかった人が多かった一方で、一定の愛着を持つようになったという結果が出たそうです。イメージも少しずつ定着してきている、と本田さんは見ています。

      そして、ユーザー数は収録時点で2,000人ちょっと。そのなかに、かなり熱心な層がいました。

      ポイントを貯める活動を競い合っていて、2週間に一度ランキングが発表されます。そこで届いた声が、この施策の熱量を物語っていました。

      「これを見るとムキになってポイントを取りに行っちゃうから、ちょっと出さないでくれ」

      「都留の人」を紹介する記事

      記事の配信は月に一回、第4金曜日。歴史だけでなく、都留で熱い思いを持って活動している人のインタビューも掲載しています。

      登場するのは、都留で100年以上続いているお店や、100年以上続くわさび園など。

      石丸さんは、取材のたびに感動することが多いといいます。

      地元を良くしたい、地域の魅力を発信したい、そのために自分が力になりたい――そう思っている方が多い。

      歴史があって、その流れの先に今こういう人がいる。人もまた都留の魅力だ、というのが記事に人物インタビューを入れている理由でした。

      ふるさと時代祭り――農民たちの大名行列

      都留市最大のイベントが、9月に開催されるふるさと時代祭りです。2日間で3万人ほどが訪れます。

      このお祭りも、江戸時代の城下町の歴史から生まれたものでした。由来がなかなか面白いのです。

      当時、都留を治めていた殿様が移動になった際、大名行列の道具が置いていかれました。その道具を使って農民たちが大名行列を再現したのが始まりだといいます。

      現在は120〜130人の行列が市街を練り歩きます。

      もう一つの目玉が八朔祭の屋台(山車)。京都の山車をイメージすると分かりやすいそうです。そして、この山車には驚きの言い伝えがありました。

      飾り幕が、葛飾北斎の絵だと伝わっている。

      石丸さん自身、それを聞いたときは驚いたそうです。宵祭りの夜には打ち上げ花火も上がります。

      つるアルプスと、冬にしか買えない「水かけ菜」

      都留市は山が多い土地です。ただし高すぎないので初心者でも登りやすい山が多い

      そこで整備されているのがつるアルプス――標高500〜650メートルほどの山が続くトレイルコースです。都内から近く、日帰りで来やすいのも特徴だといいます。

      そして、食で紹介されたのが水かけ菜という青菜でした。

      12月から2月ごろまでしか手に入らない、冬の貴重な青菜。

      作り方に、この土地ならではの条件が効いています。

      都留には富士山の湧水が豊富に湧きます。その流水を水田に引っ張り、水をかけ流しながら育てるのが水かけ菜です。

      都留は寒く、冬は凍ってしまうため作物が育ちにくい。それでも温度が一定の湧水が流れてくるおかげで育つ。地元ではお正月のお雑煮に入れる冬の風物詩だそうです。道の駅や農産物直売所、一部のスーパーで手に入ります。

      本田さんの食べた印象は「ほうれん草ではないけれど、おひたし系に近いかな」とのことでした。

      よそ者を受け入れる街

      興味深いことに、この2人はどちらも都留の出身ではありません。

      石丸さんは都留文科大学への進学がきっかけで都留に来ました。学生時代に地域の方と関わる授業が多く、地元の熱い人たちに出会う機会が多かったといいます。

      都留の人たちは本当に優しい。この人たちに恩返しができないか。

      そう思って都留に残りました。そして「都留のルーツ」に関わったことで、改めて感じたことがあります。

      都留にはこれだけ魅力があるのに、みんなあまり認識していない。この魅力を市民自身が発信していくことが大事だ。

      本田さんは東京から山梨に通っており、自らを「完全なよそ者のプロジェクトマネージャー」と表現します。そのうえで、こう感じているそうです。

      外から来た人をすごく受け入れる、受容する要素がある。そういうところが、城下町という歴史を受け継いでいるのではないか。

      最後に語られた願いも、その延長線上にありました。城下町への思いが、今は認識の薄い若い世代へ引き継がれ、その歴史を温かく残していってほしい――と。

      石丸さんのメッセージは、もっと軽やかでした。

      「富士山に行くなら、ついでに行ってみるか、でもいいので」

      ※本記事は、ラジオ番組でお話しいただいた内容をShikisai編集部が記事としてまとめたものです。発言は趣旨を損なわない範囲で整理しています。イベント日程・数値・サービス内容は収録時点のものです。

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ご紹介

Profile

石丸 なつみ

都留市観光協会

石丸 なつみ

いしまる

都留市内の大学に進学し、地域の熱意ある方々と関わったことをきっかけに、卒業後、都留市役所に入庁。現在8年目。 都留市観光協会事務局として、ホームページやパンフレット等での情報発信、イベント等での観光PRなどに携わる。 「学生時代たくさんお世話になった都留市に恩返しがしたい!」という思いで、都留の魅力を発信しようと日々力を注いでいる。

本田 久仁子

C-Table株式会社

本田 久仁子

ほんだ くにこ

大阪府出身。都内のデジタル関連企業でプロジェクトマネジメントおよびディレクションを担当し、UXデザインやデザイン思考を実務で活用。2020年9月には、CSR活動の一環として山梨県都留市で地域課題解決ワークショップの企画・設計・ファシリテーションを実施。これを契機に地方の社会課題解決に関心を持ち、2021年にC-table株式会社へ転職。以降、企業向けの組織開発ワークショップや、地域住民と自治体職員が協働して課題を発見・解決する官民共創型ワークショップの企画設計とファシリテーションを行う。これには、シビックテックに関する住民参加型のワークショップ、官民連携による包括連携協定に基づくプロジェクト、高校生を対象としたものづくりワークショップなどが含まれる。異なる立場の人々が対話を通じて理解を深め、共に目的に向かって創り上げる関係構築を支援を通じて、人生と社会に笑いを増やす取り組みを実践している。好きな麺は「酸辣湯麺」。口癖は「世直し」。

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