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成田空港圏×工業団地×職住近接──人口減少時代に挑む佐倉市の企業誘致戦略

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「持続可能なまち佐倉の実現が、私たちの目標です」
そう語るのは、千葉県佐倉市 企画政策課 企業誘致・公民連携推進室 室長の小田賢治さん。人口減少・少子高齢化が進む中、佐倉市は第5次総合計画 中期基本計画(計画期間:令和6〜9年度)に基づき、令和6年度に企業誘致の専門部署を新設し、企業立地の促進に向けて、本格的に取り組んでいます。

柱となる取り組みは、「佐倉市企業立地マッチング事業」と「佐倉市企業誘致・再投資促進助成金」。 

成田空港圏という地理的優位性と、城下町としての都市基盤を背景に、製造業・研究拠点・物流系企業にとって“現実的に検討できる都市”としての姿を提示しています。本記事では、その制度設計と戦略の全体像を立体的に整理します。  
今回は石塚直樹がナビゲーターとなり、 
小田賢治さん(室長)、 
前川龍之助さん(主任主事)、 
岩井涼也さん(主任主事)に、佐倉市の企業誘致戦略について伺いました。

なぜ今、企業誘致なのか──人口減少への構造的回答

石塚:
なぜ今、専門部署を新設してまで企業誘致に力を入れているのでしょうか。

小田さん:
最大の背景は人口減少と少子高齢化です。税収や地域経済の縮小を前提とせず、持続可能な都市構造を維持するには、雇用創出と経済基盤の強化が不可欠です。

令和6年度からは企業立地に向けた伴走型支援を開始し、相談から候補地探索、関係機関との連携まで切れ目なく支援できる体制を整えました。

石塚:
つまり「待ち」の姿勢ではなく、戦略的に動く体制ということですね。

小田さん:
はい。まずは情報交換から始める。その姿勢を明確にしています。

城下町の構造と産業の蓄積

佐倉市は江戸期の城下町として整備され、行政・教育・医療機能が早期に集積しました。

現在の産業構成を見ると、

  • 食料品
  • 医薬品
  • 金属・プラスチック加工

など、製造業を中心に集積しています。近年は工業団地や研究開発拠点が立地し、ちばリサーチパーク(佐倉市・千葉市にまたがる、全体計画約190ha)も都市の産業ポテンシャルを支えています。

立地における佐倉市の「5つの魅力」

佐倉市には、企業が立地を決めるにあたり、5つの魅力があります。

1. 物流動線

  • 東関東自動車道・佐倉IC至近
  • 都心・空港双方への好アクセス
  • 国内配送と輸出入の両立が可能

製造・物流拠点として合理的な場所です。

2. 人材確保

  • 鉄道網の充実(京成線5駅、JR線1駅)
  • 千葉市、四街道市等からの通勤圏

市内外からの人材確保が期待できます。

3. コストと制度

  • 千葉県内において安価な土地価格
  • 助成金制度による固定資産税等の還付(最大7年)
  • 立地後の再投資も助成金の対象

土地・家屋は原則最長5年、本社立地企業は最長7年、償却資産は最長3年が目安です。

4. 工業用地

  • 佐倉第一・第二・熊野堂工業団地(96.8ha)
  • 佐倉第三工業団地(114.4ha)
  • ちばリサーチパーク(佐倉市区画47.0ha)

製造・研究・物流機能の立地環境が整備されています(空き状況は変動するため個別確認が必要)。

5. 行政の伴走力

  • ワンストップ窓口
  • 意思決定前段階から相談可能
  • 土地探索における企業名非開示照会対応

情報の取り扱いに十分配慮しつつ、お気軽にご相談いただけます。

佐倉市企業立地マッチング事業

石塚:
この制度の特徴を教えてください。

岩井さん:
市が窓口となり、「全日本不動産協会 千葉県本部」および「千葉県宅地建物取引業協会 印旛支部」と連携し、企業の立地希望条件に合う土地情報を収集・紹介します。

事業の特徴は次のとおりです。

  • 両協会に属する会員に対して一度に土地情報の照会が可能
  • メールでの申請可能
  • 申請における代表者押印は不要
  • 代理申請可能(デベロッパーや金融機関等、幅広い主体が活用可能)
  • 企業名非開示

石塚:
意思決定前段階でも相談できますか。

岩井さん:
はい。伴走型支援として、初期の情報交換段階から支援します。
企業立地マッチング事業についてはこちら

佐倉市企業誘致・再投資促進助成金

石塚:
助成金制度について教えてください。

前川さん:
主な支援内容として、次のものがあります。(R8.3.1現在)

■新規立地(企業誘致促進助成金) 
  土地・家屋:固定資産税+都市計画税相当額を最長5年(本社立地企業は最長7年) 
  償却資産:固定資産税+都市計画税相当額を最長3年 
■再投資(再投資促進助成金) 
  土地・家屋:最長5年/償却資産:最長3年 
■賃貸型立地・情報機器、緑化、地元雇用促進など、複数の加算・併用メニューを用意(上限・期間あり)。 

暮らしと働く環境

佐倉市は職住近接が可能な都市です。

京成線5駅+JR線1駅が結ぶ通勤動線に加え、駅周辺の商業、里山・印旛沼などの自然、国立歴史民俗博物館や佐倉市立美術館等の文化施設が職住近接のライフスタイルを支えています。 

今は「仕込み期」

石塚:
現在はどのフェーズだとお考えですか。

小田さん: 
今は『仕込み期』と考えています。

成田空港機能の拡張や、首都圏製造業の再配置、BCP需要など環境変化の潮流を捉え、成功事例を着実に積み上げていきたいと考えています。 

企業へのメッセージ

小田さん: 
まずは情報交換からでも歓迎です。 
企業誘致・公民連携推進室(直通)
TEL:043-484-6017
Mail:yuchi@city.sakura.lg.jp

候補地の一つとして、佐倉市を検討いただければ幸いです。

編集後記

今回の取材で強く感じたのは、佐倉市の企業誘致が単なる補助金支援だけではなく都市構造そのものを再設計する取り組みであるという点です。
行政が情報ハブとして機能し、不動産関連団体や金融機関などの民間団体と連携しながら、企業側の探索コストを徹底的に下げていく。押印不要の手続きや代理申請の導入といった細部の制度設計からも、その“本気度”が読み取れます。

加えて、成田空港圏という地理的優位性そして城下町として受け継がれてきた都市基盤という二つの資源が、産業集積のポテンシャルを下支えしています。
今はまだ「仕込み期」にあるからこそ、産業特性に応じた受け皿形成や、立地企業との関係構築など、検討の余地は大きい。

企業にとっての合理性と、都市の持続性。佐倉市の企業誘致は、その交点を丁寧に探りながら設計された施策であると感じました。

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ご紹介

Profile

小田 賢治

千葉県佐倉市 企画政策課 企業誘致・公民連携推進室
室長

小田 賢治

おだ けんじ

企画部門および地域自治分野を主軸に、総合計画や地域政策の立案・実行に長年携わる。
令和6年度の企業誘致・公民連携推進室の設立時からメンバーとして参加し、企業立地の伴走支援を統括。
歴史・自然・文化という佐倉市の都市資源を活かしながら、経済基盤の強化と持続可能なまちづくりの両立を目指している。

前川 龍之助

千葉県佐倉市 企画政策課 企業誘致・公民連携推進室
主任主事

前川 龍之助

まえかわ りゅうのすけ

民間企業勤務を経て佐倉市役所に入庁。在職9年目。
入庁後はファシリティマネジメント関連部署に7年間在籍し、公共施設の維持管理や資産活用に関する実務に従事。昨年度は千葉県へ出向し、広域行政の視点も経験。
企業誘致・公民連携推進室では、企業立地マッチング事業の実務運営や関係団体との連携調整を担当。企業のスピード感に応える制度運用と、現実的な土地探索支援を重視。
行政と民間双方の視点を踏まえ、実務的かつ柔軟な対応が強み。

岩井 涼也

千葉県佐倉市 企画政策課 企業誘致・公民連携推進室
主任主事

岩井 涼也

いわい りょうや

金融機関での民間経験を経て佐倉市役所に入庁。在職6年目。
入庁後は財政部で税の徴収業務を担当し、市財政の基礎部分に携わる。その後、企画政策課にて総合計画関連業務に従事。政策立案と財政の両面を経験。
企業誘致・公民連携推進室では、立ち上げメンバーとして企業立地マッチング事業の制度設計や運用の実務を担当。企業の投資判断に資する支援制度の整備と、持続可能な都市経営の視点を両立させる役割を担っている。
総合的な企画政策・財政への知見を活かし、実行可能性の高い産業政策の推進に取り組んでいる。

佐倉市のHPはこちら 企画政策課へのお問い合わせはこちら 企業立地マッチング事業についてはこちら
石塚 直樹

株式会社ウェブリカ
代表取締役

石塚 直樹

いしづか なおき

X(旧:Twitter)

新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。
腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。
地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。

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