Baleine Pilates(バレンピラティス)|韓国発ピラティスマシンブランドを日本へ―品質と誠実さで築く“架け橋”
「サービス最適化で“選ばれる理由”をつくる」ピラティスマシンブランド Baleine Pilates(バレンピラティス) を日本で展開する 株式会社MK貿易 代表のキムさんは、静かにそう語る。来日後に事業を立ち上げ、飛び込み営業からスタート。今では関東を中心に導入スタジオが200店舗を超える。
Modern/Classic/Edition(鉄素材) の3系統を展開し、高級木材+特殊コーティングによる耐久性、ワンタッチ調整の操作性、直輸入~搬入・設置・廃材回収までの一気通貫というサービス品質で支持を集めている。日本と韓国を「運動」でつなぐという個人の原体験と、製品づくりへの誠実な姿勢が重なる軌跡を辿る。
今回は早川千鶴がナビゲーターとなり、株式会社MK貿易 代表取締役・キムさんに、Baleine Pilatesの事業構造とブランド理念、そして日韓をつなぐ未来への展望について伺いました。
目次
挑戦の原点―なぜ日本で、なぜピラティスか
早川: まず、日本で事業を始められたきっかけから伺えますか。
キムさん: 5年前にワーキングホリデーで来日しました。当初は短期滞在のつもりでしたが、日本の企業での勤務を経て、ピラティスマシンを扱う事業を立ち上げました。韓国では10年以上前からピラティスが普及していて、良質なマシンや教育プログラムを日本に持ち込めると考えたんです。
早川: 起業の決め手は何でしたか。
キムさん: 運動や身体づくりが好きでしたし、日本ではここ数年でピラティスが急速に広がっていました。韓国の成熟した製品を日本のスタジオに届けることが、自分にできる貢献だと思いました。
立ち上げの現実―顧客獲得の試行錯誤
早川: 最初に苦労されたのはどんな部分でしたか。
キムさん: 顧客をどう見つけるかでした。広告の出し方も分からず、最初は関西のスタジオを一軒ずつ訪問してカタログを配っていました。InstagramのDMで案内したこともありますが、既にマシンを導入しているスタジオが多く、なかなか成果は出ませんでした。
早川: そこからどう突破口を見出されたのですか。
キムさん: ターゲットを「既に運営しているスタジオ」から「これから開業する層」に切り替えました。ホームページを整え、広告導線を設計したことで、問い合わせが安定して増えていきました。現在は、納品が追いつかないほどご注文をいただいています。
早川: 日本市場特有の難しさもあったのでは。
キムさん: ありますね。韓国では直接営業が一般的ですが、日本では突然の訪問やDMを好まない方も多い。営業よりも、信頼できる情報発信と問い合わせのしやすさを優先しました。
プロダクト哲学――耐久性と操作性の両立
早川: 製品のこだわりを教えてください。
キムさん: まず耐久性です。Baleine Pilatesでは木材・レザーなどの素材選定にこだわり、木材には特殊コーティングを施しています。湿気の多い日本環境でも劣化しにくく、10年以上使い続けても安定した品質を保てます。
早川: 操作性にも工夫があるそうですね。
キムさん: 身長や体格に応じた調整をワンタッチで行える構造を採用しています。従来のマシンではレバーを何度も回す必要がありましたが、当社製品では即座に長さや角度を変えられます。使用者が快適に運動に集中できるよう意識しています。
早川: 製品ラインはどう構成されていますか。
キムさん: 「Modern」「Classic」「Edition(鉄素材)」の3系統です。クラシカルモデルは、創始期の設計を忠実に再現したピラティスマシンで、長年クラシカルで学んだ指導者の方々から特に支持されています。
サービスモデル――直輸入から設置まで一気通貫
早川: Baleine Pilatesの特徴は、製品だけでなくサービスにもありますね。
キムさん: そうですね。お客様が発注してから韓国で製造し、日本の倉庫に届くまで約1〜1.5か月です。その後、検品を経て納品スケジュールを調整します。搬入・設置・調整・廃材処理まで自社で対応します。
早川: すべて自社対応なんですね。
キムさん: はい。スタジオ運営者の多くは女性で、大型マシンの搬入や設置は負担になります。だからこそ、“買った瞬間に使える状態”まで責任を持つことを大切にしています。
早川: 市場での価格帯はどのあたりでしょう。
キムさん: 高価格帯の欧米ブランドと、低価格帯の中国製ブランドの中間です。品質とサポートのバランスを重視しています。導入後に品質問題で他社から乗り換えるお客様も多いです。
市場での広がり――展示会・教育との連携
早川: イベントにも積極的に出展されていますね。
キムさん: 2024年は「スポルテック」や「ピラティスフェスタ」など大型イベントに出展しました。韓国の有名インストラクターと連携したワークショップも開催し、教育分野との関係も広がっています。
早川: 文化や契約の違いもあったのでは。
キムさん: はい。韓国から講師を招くにはビザや契約条件などの調整が必要で、難しさもありましたが、日本と韓国のスタジオ・指導者・メーカーの三者が連携できた貴重な経験になりました。
次の展望――日韓をつなぐ“運動の架け橋”に
早川: 今後の展開を教えてください。
キムさん: 木製モデルに加えて、鉄素材を採用した「Edition」シリーズを本格展開します。耐久性が高く、白や黒を基調にしたモダンなデザインで、スタジオ空間の印象も引き締まります。
早川: 将来的なビジョンはありますか。
キムさん: 韓国ではピラティスとジムを併設する施設が増えています。日本でも同じように、健康・美容・運動を一体で支援できる環境をつくりたい。個人としては、柔道指導者だった父の影響もあり、スポーツを通じて国を越えて人をつなぐことを目指しています。ピラティスを、その“架け橋”にしたいと思っています。
編集後記
Baleine Pilatesの印象的な点は、「現場の不安を解消する構造」にあると感じました。
素材や構造、導線のすべてが、使い手の手間を最小限にし、安心して導入できるように設計されています。製品ラインを“Modern/Classic/Edition”と明確に分けることで、目的や理念に合わせて選べる柔軟さもあります。さらに、直輸入から設置までを一貫して対応する姿勢には、「ものを売る」というよりも「環境を整える」という誠実な思想が感じられました。
韓国のスピード感と日本の丁寧さ。その両方を融合させながら、Baleine Pilatesは確実に日本市場で信頼を築いています。スポーツとデザイン、文化と事業が交差する場所に、静かな熱が宿っていました。これからもその“架け橋”として、ブランドがどのように発展していくのか、注目していきます。
ご紹介
Profile
株式会社MK貿易
代表取締役
韓国出身。ワーキングホリデーをきっかけに来日し、日本企業での勤務を経て独立。韓国で培われたピラティス文化と技術を日本へ広めるべく、株式会社MK貿易を設立。
ピラティスマシンブランド「Baleine Pilates」を立ち上げ、製造・輸入・設置・アフターサポートまで一貫したサービス体制を確立した。
製品の耐久性と操作性を追求しながら、クラシカル/モダン/エディションの3系統を展開。日本と韓国の架け橋となることを目指し、スポーツを通じた文化交流にも意欲を注いでいる。
埼玉県川越市出身の早稲田大学創造理工学部在学中の学生。
ミスユニバーシティ2024埼玉代表として注目を集める一方、「ACTRESS PRESS」や「NEWSポストセブン」などで取材・発信活動を行い、言葉の力で人の心を動かすことを目指している。
理工学分野を学びながら、防災士の資格も取得。
趣味はアニメやカラオケ、特技は書道とイラスト。
座右の銘は「明日は明日の風が吹く」。