創業or社長就任の経緯を教えてください。
最初は私の夫や明石漁協の現役の漁師の有志が集まって、明石海苔や鯛、蛸のPRのためにみんなでお店を出したんです。明石は海産が主力の産業でしたので明石市や兵庫県のバックアップもいただき、「現役の漁師が経営するお店・おにぎり屋さん」としてメディアによく取り上げてもらいました。しかし、漁師さんは9月1日から4月の末までのりの養殖に出なければいけないんですね。のりの養殖は工程がとても長く、のりを刈り取って製品になる前の準備段階からすごく大変で10時間程海の上にいるんです。他にも、グループのメンバーがみんな同じ会社で働いていたわけではなく、それぞれの工場でのりの生産をしていた若手メンバーで集まっていたので忙しく、続けるのが難しくなってしまったんです。当時、そのお店の運営と並行して水産品の加工販売もしていたので、そこを全部引き継いで私が担当することになり、明石蛸仙人としては15年になりました。水産の面白さ、難しさは知っていますので、今でも漁師さんの思いを大事に汲み取りながらやっています。
あなたが思う御社の商品・サービスの魅力を教えてください。
「明石の魚は美味しい」というプライドですね。展示会などを見てみると、聞いたことのない産地で聞いたことのない魚はやはり売るのが難しいんです。ですが明石産はメジャーで、高級というイメージがあるので商談や展示会で全くの空振りということはあまりないんです。漁師さんは自分たちで獲ったものが一番という自負があります。明石の海は、潮の流れが速く餌も豊富です。さらに、明石浦のセリがかなり特殊で、生きたまま売り、生きたまま仲買人さんは持って帰ります。このセリのやり方は他ではないので、新鮮さがまるで変わってくるんです。。海域的にも良質な魚が獲れやすく、セリも工夫しているので、料理人さんのお手元に届く時のクオリティが全然違うと昔から評判を頂いています。これが漁師さんの自慢ポイントですね。そんな素材を、添加物もなく昔ながらの浜の味付けで提供しているのが、明石蛸仙人の商品の特徴です。「浜の味」というのは漁師さんがよく口にする言葉で、自分たちが昔から慣れ親しんだシンプルな味が一番だと思っています。素材がいいのでそのままシンプルで、余分な物は入れないということにこだわっています。なので、うちの商品の裏ラベルには添加物のカタカナ表示がないんですよ!漁師さんは魚を生きたまま持って帰って、漁協自体がおおきな生け簀になってるのでそのプールにつけて、そこから生きたままセリ台に上げます。とても新鮮な状態で出荷できます。そして競り落とされた後には神経締め、血抜きなどの工程を丁寧に施します。この作業によって5日後の魚の状態が全然違うと料理人さんからかなり定評を頂いています。関東の料理人さんには、1週間や10日程魚を熟成のために寝かせる方がよくいらっしゃるのですが、その時のクオリティが全然違うそうですよ。これは我々の魚を扱う技のおかげです
御社の商品・サービスが素晴らしいと思う理由を教えてください。
商品の9割が蛸商品で「明石だこの柔らか煮」が一番売れていますね。ですが4年くらい前から不漁続きで、旬の時期は10トンくらい取れていたのが4トンぐらいまでしか手に入らない状態になってしまいました。決定的な理由は分からないですが、水温の変化や水が綺麗になりすぎていることだったり、昔と比べて漁の道具が良くなっているせいで獲りすぎてしまったりしているんだと思います。たこだけでなく色んな魚種でも問題が起きていますね。
地域との関わりで意識していることを教えてください。
水が綺麗になりすぎると魚が栄養不足になると言われているんです。そこで明石浦漁協の取り組みの1つとして、海の底を機械で耕しています。海の底に沈澱したから栄養微生物をかき上げているんです。そうすることで、魚が泳ぐ深さに栄養が取り戻せるんですね。他にも農家さんと協力して、農地から流す水を直接海に流したりという取り組みなどもあります。。
今後のビジョンを教えてください。
明石は魚以外にあまりイメージが無いと思います。だからこそ、「明石っておいしいじゃん」と、明石の海の幸の魅力に気づいてもらい、実際に来てもらうということを最終的な目標にしています。そのためにも、我々の新鮮な明石産の魚のPRにも力を入れていきたいです。24時間エアと海水を回して生かしたままセリに上がるというのは、それを知った方は「すごい」と思ってくれるかもしれませんが、一般の購入者の方やお寿司屋さんで我々の魚を食べられる方は、そこまで手をかけていることを知らないと思うので、多くの方に明石の取り組みを知っていただいて、魅力を伝えていけたらと思っています。