「こんなに刺激的で実用的な研修は初めて」参加者が絶賛するチームビルディングプログラムは、LACIQUE(ラシク)黒野代表の原体験から生まれた「仕事を楽しく人生を豊かにする方法」


株式会社ラシク 代表取締役 黒野 正和 KURONO MASAKAZU

「仕事は人を成長させてくれるものであって、苦しめるものではない」

過去の実体験から仕事の在り方について深く追求し、現在ポジティブ心理学セミナーやウェルビーイング人財育成プログラム™研修などで、組織のチームビルディングのお手伝いをしている株式会社ラシク。今までキャリアや独立のきっかけと、参加者やクライアントから大好評を得ている人財育成プログラムについて、黒野代表にお話を伺いました。

安定を求めて日本郵政公社に転職するも「仕事の在り方」について深く考えた結果、独立を決意

まずは、これまでの人生についてお伺いしたいです。子供の頃や学生時代は、どのように過ごされていましたか?

黒野さん:子供の頃は、漠然と「人の役に立ちたい」と思うくらいで、将来の夢とかは特になかったですね。大学も高校から内部進学だったので、将来を見据えた受験勉強をしておらず、なんとなく内容が面白そうだった社会学部を選びました。

今振り返れば、この頃から人の心や行動に興味があったのかもしれませんが、当時は「心理テストって占いみたいで面白そう」くらいのレベルでした。

特に意識はなかったものの、人の心や行動への興味は今に繋がるのかもしれないですね。大学卒業後は、どのようなキャリアに進まれたのですか?

新卒は、京都の呉服の専門商社に就職しました。元々アパレルが好きだったので、就活ではアパレル業界にエントリーシートを手当たり次第に出し、家から近い会社に就職をしました。この会社には1年半ほど勤めたのですが、取り扱っている商品が高級品ばかりのため、現実離れした世界で、少し距離感を感じていました。もっと身近で距離の近いお客様と接し、なおかつ安定感のある仕事がいいなと思うようになりました。

ちょうどその頃、数年後に郵便局が民営化することが決定し、その助走期間に入ると知り、「面白そうだな」と思いました。民営化するとはいえ、一般企業より当時はまだ国家公務員だった郵政という大きな組織のほうが安定性が高いと考え、転職を決めました。

日本郵政公社に転職されてからは、どのような仕事をされていたのですか?

最初の配属は、町の郵便局の窓口業務で、郵便物の引受や切手の販売をしていました。念願の安定した仕事ではあったものの、毎日同じような仕事を定年まで続けるのかと考えたら、将来に希望を失った感覚になりました。

そう思っていた頃、郵政の近畿支社の募集を知りました。近畿支社は、近畿エリアの郵便局を管轄する組織で、入るには登用試験に受かる必要があります。そこでチャレンジしてみたらたまたま受かり、3年目から支社配属になりました。

支社配属当初は人事関係の仕事をしていましたが、民営化後は主にゆうパックの品質管理の仕事をしていました。その中で、「全社を巻き込んで盛り上げる取り組みをしたい」と思い、接遇マナーコンテスト近畿大会を企画・実施したり、ゆうパックマイスター制度など社内で全国的に広がる取り組みにも参画したりしました。振り返ってみると、何かしらの目標を持ち、楽しみながら仕事をしてほしいという思いは、現在のビジネスに通じているのかもしれません。

今までのお話を聞くと、郵政でのキャリアはとても充実しているように思えます。そこからどのような変化があり退職、独立に至ったのでしょうか?

私がいた職場は、昔ながらのピラミッド型のヒエラルキーがあり、実は結構ギスギスした部分もありました。仲間内で助け合うというよりは、足を引っ張る人も中にはいて、メンタルの不調で休職する人も見かけました。私自身もこのままだと心や体がダメになってしまうかもと感じる経験があり、「仕事って何のためにあるんだろう」と考えるようになりました。

ちょうどその頃、キャリアコンサルタントという資格があることを知ったんです。世間には仕事で苦しんでいる人が沢山いて、その人たちの役に立つ仕事がしたいと思うようになり、キャリアコンサルタントを目指すことにしました。

退職して資格取得を目指すことは思い切った決断だったと感じます。そこに対して恐怖を感じたりブレーキをかけたりすることはなかったのでしょうか?

実は、30代前半頃から参加していたコミュニティがあり、そこには起業家や社長さんがたくさんいらっしゃったのですが、話をする中で自分もゆくゆくは起業したいと漠然と思っていました。

そのコミュニティは、職場近くの中華料理屋さんの店長さんと仲良くなったことがきっかけなんです。その店長さんは中国から日本に帰化された方で、中国から来日し起業している社長さんたちが集まるコミュニティを持っていました。ある年末に年賀はがきの営業に行ったら、「今度私が主催するコミュニティの集まりがあるからそこに営業に来なさい」と言われ、それを機にコミュニティに関わるようになりました。

運命のような出会いですね!コミュニティに参加することで、どのような気持ちの変化がありましたか?

当時の私は、郵便局の現場から支社での仕事に移り、いわゆる出世コースに乗ったため、世間一般からみれば恵まれているともいえます。ただそれは、良くも悪くもポジションや給与の流れが年齢でほぼ決まっていて、上限も見えているんです。

一方で、コミュニティ内の起業家や社長の方の話を聞くと、業績の上下の波はもちろんありますが、そちらの方が面白そうと感じるようになりました。

ポジティブ心理学のセミナーを機に研修講師に転身し、2年間のプロジェクトにも参画

郵政を退職して独立されたとのことですが、現在のビジネス立ち上げまでの経緯を教えていただけますか?

2016年に退社し、まず1年目はキャリアコンサルタントの養成講座に通い、2017年の10月に資格を取得しました。取得当初は、キャリアコンサルタントの受験生向け試験対策講座をしていたのですが、なかなか収益につながらず、どうしようかと考えていました。

ちょうどその頃、キャリアコンサルタント養成講座で勉強した『ポジティブ心理学』の創始者であるセリグマンさんが来日するにあたり、公式ファシリテーター養成トレーニングをやるとSNSで知りました。「教科書の人が来る!」と養成トレーニングにエントリーしたのをきっかけに、来日の度に公式ファシリテーターとしてセミナーに参加するなど、運営側で携わるようになりました。

その流れで、セリグマンさんの来日セミナーを企画した組織と関わるようになり、そこで実施していたポジティブ心理学のトレーナー養成講座にもチャレンジし、ポジティブ心理学の認定トレーナーになりました。

ポジティブ心理学のワークショップや運営アシスタントで学んだことを生かし、大阪のコワーキングスペースなどで小規模のオープンセミナーも2年くらい開催していました。

受験対策から研修講師にシフトしていったのですね!そこから現在のメイン事業であるチームビルディングのプログラムに発展していく際に、どのようなきっかけがありましたか?

当初は、半日や1日など単発の研修が多かったのですが、様々な研修をするうちに体系的なプログラムを見据えられるようになってきました。

そんな中、キャリアコンサルタントの養成講座の同期から、滋賀県老人福祉施設協議会のプロジェクトの実行委員の方を紹介されたんです。滋賀県老人福祉施設協議会には、老人ホームやグループホームなどの会員施設が所属しており、お話をするうちに「ぜひ協議会の会員向けに研修プログラムをやってほしい」と言われたんです。そこで、会員施設の職員向け人材育成プロジェクトである「福祉のキラビトプロジェクト」に取り組むことが決まりました。

研修前の会員企業の抱える問題点はどのようなものだったのでしょうか?

大きく3つありました。1つ目はなかなか人材が入ってこないこと、2つ目は入ってきても定着しないこと、そして3つ目は人材育成するノウハウや担当する人がいないことでした。

これらはどこから手を付けていいのかわからないような難しい問題に思えるのですが、どのように取り組みをスタートしたのですか?

まず実施したのは、心理的安全性の確保です。プログラムには12人の参加者がいたのですが、学び始める前に自己紹介ではなくお互いにインタビューして紹介しあう他己紹介をしてもらいました。すると、みなさん無意識に相手のいいところを見つけて紹介しようとするんですね。後から、無意識にいいところを見つけようとしたのではないか、とタネあかしをしつつ、でも普段は相手をどう見ているか、問いかけます。すると、あら探しみたいな目で見たり、揚げ足をとったりしてしまうこともある、という意見がでました。

自分の意識を相手にどう向けるかによって、見え方が全く違ってきますし、自分自身や相手の強みや価値を見つけていくと多様性を学んでいくことができます。みんな違うのが当たり前で、違うことがむしろチームの強みになることを知っていただきました。

とても興味深いですね!そこから2年間でどのようなプロセスでプロジェクトを進められたのですか?

プログラムとしては、主にスタンスや姿勢など「マインド」についてと、どこに行っても通用する「コミュニケーションスキル」を中心に研修を行いました。

まずマインドについては、心理的安全性からスタートし、ポジティブ心理学の視点、強みや価値について学んでいただきました。次に仕事の目標と目的、仕事の意味づけであるジョブクラフティングについてです。仕事はただの「作業」ではなく、意味があることを認識していただくような内容です。

マインドを整えた後に、コミュニケーションスキルやコーチング*のほか、レジリエンス**について学んでいただき、最後に今後の未来について考えるという流れで進めました。

*コーチング…目標達成や成果のための自発的な行動を促進するコミュニケーションのこと

**レジリエンス…ストレスフルな環境下や逆境に直面した際に立ち直ろうとする力のこと

期待する効果としては、ワークを通じて多様性の理解を深め、理念を浸透させ、コミュニケーションや傾聴スキルを学ぶことで共感力があがること等があげられます。最終的には、チームビルディング力も高まり、自走型の組織になっていく、という流れです。

2年間かかった理由の一つは、学んだことを自分の職場で実施して、その結果を共有する機会がほしい、他施設の取り組み事例も聞きたいという意見があり、隔月で発表の時間を設けたからです。

実は、今まで施設同士の横のつながりがあまりなかったらしく、他の施設の取り組みを知る機会がなかったそうなんです。例えば、「シーツ交換の際、かぶせるだけのボックスシーツにしたらすごく楽になりました」と共有頂いたんですが、他にこのシーツを使っている施設は少なかったらしく、「早速とりいれました!」という施設が複数あり、施設間の情報共有にも役立っているようでした。横のつながりの価値と喜びを知った皆さんは、定期的に懇親会を開き、お互いの施設を訪問するクロス訪問も積極的にされています。

プロジェクトを超えたつながりも生まれているんですね!2年間のプロジェクトの中で印象的な事はありましたか?

まず研修当初は、皆さん自信がなかったのに、どんどん自信を持ち、発言も力強くなったのは印象的でしたね。そこで大事にしていたことは、ありきたりかもしれませんが、相手を否定をしないで受け入れること、皆さん一人一人に価値があることを伝えていました。

次第に、「この仲間だったらこんなこともできるかも」と、やりたいことのアイデアがどんどん出るようになり、施設自慢や愛社精神が強くなった印象もありました。

変化という点では、仕事の意味を考えるジョブクラフティングの回が記憶に残っています。まず「あなたの仕事はなんですか?」と問いかけをするのですが、みなさん最初は「福祉の仕事をしています」「デイサービスで利用者さんのお世話をしています」と言われます。でも、研修後に改めて聞くと「この地域に暮らしてよかったと思ってもらえる仕事」「関係者全員が幸せになること」「心温まる施設にすること」などに変化し、仕事の価値や使命に気づいて頂けました。

また、このプロジェクト自体が離職防止につながったと思うこともありました。

参加者の一人の方は、プロジェクト参加中に結婚し、家庭と仕事の両立が難しく、疲れきってしまい、退職を考えていたそうです。でも、プロジェクトで学んだ考え方を思い出し、雇用形態をパート社員に変えてでも働き続ける決断をしたそうで、「このプロジェクトに参加していなかったら多分辞めていた」とおっしゃっていました。

2年間のプロジェクトが終了した後のアンケートをみると、「強みを相手に伝えられるようになった」「感謝を口に出すことが増えた」「今まで一人で頑張っていたが、人に頼ることもできるようになった」などマインド面の変化はもちろん、「相手に対して、出来なかった理由を責めるのではなく、どうしたらいいのか聞けるようになった」など行動や言動にも大きな変化があったようです。

参加を同僚にすすめたいかというアンケート項目には、12人全員が「もちろんすすめたい!」と回答頂きました。

プロジェクト参加者アンケートには、熱いメッセージがぎっしり!

熱いコメントばかりですね!このプロジェクトは今後も継続していくのですか?

福祉のキラビトプロジェクトは、6月から第2期が始まります。また、新たに大津市社会福祉協議会でも実施が決まりました。こちらでは、高齢者以外に児童や障がい者福祉施設も含まれているので、プロジェクトでどのような化学反応が起きるのかとても楽しみです。

誰もが「仕事が楽しい」と思える社会をつくる

今後の株式会社ラシクの事業展開について、お聞かせいただけますか?

滋賀県の老人福祉施設協議会で実施した「福祉のキラビトプロジェクト」をベースに、民間企業向けに「ウェルビーイング人財育成プログラム™」という長期研修コンテンツを作り、実は大手企業でも導入が決まっています。

ウェルビーイングは、企業が実施する取り組みの中でも重要課題の一つだと考えています。ウェルビーイング人財育成プログラム™を実施することで、生産性が上がったり、離職率も減ったりしますし、このような取り組みをしている企業は就活中の学生からも注目されるので、採用にも効果があります。

このウェルビーイング人財育成プログラム™は、弊社で講師養成講座も開催しており、既に認定講師が数社でこのプログラムを展開しています。私たちの取り組みが少しずつ広がり、福祉のキラビトプロジェクト参加者のような体験をされる方が加速的に増えていったらいいなと思っています。

すごく興味が湧いてきました!最後に黒野さん自身の働く意味(ジョブクラフティング)について教えていただけますか?

「仕事って楽しい!」と誰もが思う社会の実現ですね。

私が過去に仕事で苦しんだこと、苦しんでいる人をたくさん見てきたことから、仕事の意味について深く考えてきて、その行きついたのが現在の事業です。仕事は「大変な部分もあるけれど、楽しい部分もある」と思う人を一人でも増やしていきたいですね。

編集後記

インタビューの中で印象的だったのが、たびたび出てくる「面白そう」「たまたま」というワード。

黒野さんは、その「面白そう」で「たまたま」のチャンスを確実につかみ、さらにチャレンジをしていった結果、「仕事をもっと楽しくする方法」について、多くの人々に伝えています。それはご自身の経験はもちろんのこと、子供のころから「人の役に立つことをしたい」という思いがあったからなのかもしれません。

「仕事が楽しい」と思える人を一人でも増やしていく取り組みを、あなたの周りにも取り入れてみてはいかがでしょうか。

Profile

株式会社ラシク 代表取締役

黒野 正和 KURONO MASAKAZU