Do It Ourselvesの精神でステージに立ち続ける二人のアーティストが、起業し拓いてきた多彩な道。
D・I・Oエンターテインメント合同会社
山切 修二・川渕かおり
やまきり しゅうじ・かわぶち かおり

山切修二さん・川渕かおりさん。2012年に音楽ユニットKAO=Sで世界的フェスSXSWに初出演したお二人は、“Do It Ourselves(自分たちの手でやる)”の理念で会社を立ち上げ、表現活動を続けてきました。音楽のみならず、演舞・ゲーム・アニメ・舞台・演出など、多彩なフィールドで、国内外で独自の道を切り拓いています。起業の原点、これまでの軌跡、AI時代での変化、各々のツアー活動やと目指すスタイルまで、お二人に語って頂きました。
目次
二人のアーティストが横断する音楽・剣舞・舞台・アニメ・ゲーム・演出のフィールド。
Q1. ご自身と御社事業の紹介をお願いします
山切:
私は長らくシンガーとして音楽活動をしてきましたが、2011年に川渕かおり(剣舞師/シンガー)と結成した音楽ユニットKAO=S(カオス)では、ギタリストを務めています。そのKAO=Sのマネジメントとして会社を設立して以降は、川渕の多分野での活躍に伴い、様々な芸能エンタメ関連の業務もしています。
川渕:
私は剣舞師として、ショーや式典など様々な場面で演舞をさせて頂いてます。
アニメやゲームのCGキャラクターの動きを担うモーションアクターの仕事も長くやらせて頂いており、RPG『FINAL FANTASY』シリーズや『NieR:Automata』、NETFLIXアニメ『攻殻機動隊SAC_2045』などの作品に携わってきました。一昨年、アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』では声優のお仕事もさせて頂きました。
女優としても舞台や映画に出演してきましたが、この数年は、舞台の脚本作り・演出・制作にもかなり力を入れています。
山切:
二人で運営しており、現在の事業は、芸能活動全般のマネジメント、音楽出版、ライブや舞台の制作・演出、演者や奏者の派遣、ゲームやアニメ制作現場へのモーションアクターの派遣などで、国内外で案件を受注しています。
剣舞師としての川渕は、LADY SAMURAIという呼称でSNS認知と評価も高く、邪を断ち福を呼び込む〝破邪剣舞〟は海外からのオファーも多いです。
ステージの総合演出とキャスティングを毎年担当させて頂いているドイツの日本フェスMAIN MATSURIが、一昨年、外務大臣表彰を拝受しました。同年8 月に東京で開催されたABAC(APECビジネス諮問委員会)国際会議の21カ国のご来賓向けのショウの総合演出も担当させて頂くなど、国際的な案件にも携わらせて頂きました。



出会いと、音楽ユニットKAO=Sの結成。アメリカのフェス出演が契機の世界進出。
Q2. お二人の出会いや、会社の母体であるユニット結成の経緯について、お伺いできますか。
山切:
私は22歳で上京して、バンドや弾き語りで歌ってきました。30代半ばの頃にソロシンガーとして出演したライブ会場に、川渕かおりが、別のシンガーを観に来ていました。
そのシンガーを観終えて帰ろうとしてた彼女を、私は廊下で引き留めて、自分のライブを観てもらいました。
私のライブを気に入ってくれて話すうちに、彼女が女優やモーションアクター、ボーカリストや剣舞師など多方面で活動している事を知りました。
数日後、彼女の剣舞ステージを観て大変感激しまして、彼女の剣舞の為の曲「桜の鬼」をギターで作りました。 その曲を二人でライブでやった時の反響に大きな手応えを感じて、翌年ユニットKAO=S(カオス)を結成しました。
カリスマ性に満ちた川渕がリードシンガー兼パフォーマーを担い、私がギタリストでリーダーという立ち位置が、自然に決まりました。
Q3. 海外へ踏み出したきっかけはなんだったのでしょうか?
山切:
KAO=Sを結成したのは東日本大震災直後で、国内はカオスな状況でしたが、世界に日本の強いアートや音楽を提示したいと考え、毎年アメリカで開催される世界最大音楽見本市のサウス・バイ・サウスウェストに「桜の鬼」で応募しました。合格して出演したそのフェスは凄く大規模で、私達のライブは大喝采でした。

可能な限りアピールしようと現地でストリートライブをやったところ、それが新聞記事になり、更にその記事がきっかけで 米CNN番組が来日取材をしてくれて、その番組出演を機に、一気に海外からのオファーが増えました。SNSよりも、ライブを観た人がオファーをくださる形がずっと続いています。

会社設立とDo It Ourselves の意志、事業の変遷
Q4. 会社を設立された理由やきっかけと、事業の変遷について教えてください。
山切:
いまは誰でもやってる形ですが、初めて渡米してSXSWに出演した際に、世界各国のアーティスト達が自分達の活動をコントロールして、自由に表現活動する姿勢を目の当たりにして刺激を受けました。海外からKAO=Sにオファーも増え始め、社会にきちんと存在して活動したく、2014年に事務所を立ち上げました。 “Do It Ourselves”の精神を反映させた社名をつけましたが、長くて記載が面倒だということに登記後に気付きました(笑)
川渕:
法人でないとエントリーや契約ができなかったりするケースもあるので、活動を拡げる上でも会社設立は可能性が広がると思いました。実際、色んな業界と会社として関わることになっていきました。
山切:
剣舞師LADY SAMURAIとして川渕かおりの認知が拡大した事に伴い、国内外で破邪剣舞やCM、映画出演などのオファーが増え、川渕のマネジメント業務もするようになりました。
二人それぞれの案件も合わせると20カ国くらいでお仕事させて頂きました。川渕はモーションアクターとしてのキャリアも長く、近年もRPGやアニメの大ヒット作キャラクターの演技を担当させて頂いており、そういったお仕事も会社として受けるようになりました。
私自身は、KAO=Sを軸に、大所帯メンバーの和風のショウを国内外でやり始めてからは、演出家として大きな案件に関わらせて頂くようになりました。


困難から生み出す未来
Q5. アーティストでありながら会社を経営する上で、大変だった事や困難はありますか?
山切:
業務は増えました。ニーズがないと成立しませんし、知識も資金繰りも必要です。予想外の海外案件トラブル、人手不足による機会損失、人的トラブル、契約書、保険や決算など、ステージ以外で対処しなくてはいけない事も多々あります。フリーランスの方々への発注も多いので、インボイス制度導入時は対応にも苦労しました。
表舞台と裏方の両方の責務を学び、経験を積んできた感じです。
2018年には、川渕が左膝前十字靭帯を断裂する事故に遭ったことがありました。
川渕:
舞台本番で左膝の靭帯を完全断裂してしまったんです。その舞台は何とかやり切ったのですが、翌週にKAO=Sでニュージーランドのフェス出演がありました。
山切はキャンセルを提案したのですが、私は “この状態だからこそできるステージ”を考えて出演しようと言いました。松葉杖でステージにあがり、片脚で立って剣舞もやりました。
山切:ライブは大喝采で、その時の松葉杖ステージ写真が、そのフェスのSNSで国際女性デーのキービジュアルに採用されました(笑)
川渕:
帰国後は手術して、しばらく仕事できず松葉杖や車椅子の生活になりましたが、目標が大事なので、復帰公演のホール会場を予約してリハビリに勤しんでたところ、SNSで話題になり、BS番組が復帰公演までのドキュメンタリーとして取材・放送してくださいました。
できない前提ではなく、その状況で何をやれるかを考える。そこに新しい表現と道が生まれると思ってます。
山切:
いま思えば、川渕はその怪我で動く仕事ができなかった頃に「ストーリーを書く」というもう一つの扉を開いて、翌年から、自分で脚本を書いた舞台作品を演出・制作するようになりましたね。川渕が作・演出の舞台公演も、年々評価と規模がどんどん大きくなっています

AI時代の現在地:効率化と、“人間だからできる事”
Q6. AIの進歩は、事業や働き方をどう変えましたか?
川渕:
自分達のような一から企画・制作してステージにも立つ立場からすれば、ステージの準備や設計にかける時間や行程がAI導入によって削減されたので、 舞台の現場やライブに、より熱量や時間を割けるようになりました。
山切:
世の中の作品作りは、どんどんAIに取って代わられるでしょう。一方で、AIでは代替できない、“直接会っての人とのつながり”や、“ステージで目の前で起こる事”の価値は際立ってきたとも感じてます。自分達のやっている事に照らして未来を考えた時に、人間同士の表現と感受で成立するライブや舞台の需要はなくならないと思います。
「やりたい事をやる」「 “ライブで拓いてきた道」、二人それぞれの旅の先。
Q7. お二人の最近の表現活動についてお聞かせください。
山切:
ずっと止めていたソロシンガーの活動をやり直したく、去年50歳になったのを機に、一年かけて全都道府県を一人で歌ってまわりました。
旅の締めに、ソロとしては初のホールコンサートをやりました。日本中での最初の種蒔きを経て、自分自身のソロ活動を事業にするヒントも得たので、経験値に立脚した活動を目指します。
川渕:
今年の2月から、剣舞師として和太鼓チーム鼓宮舞 (KOKUBU) さんのドイツツアーのうち、26公演に帯同してきました。昨年ドイツでコラボレートさせて頂いたのがきっかけでした。
5月21日からは、私が作・演出の舞台「最果ての花」が吉祥寺シアターで上演されます。私が主宰する殺陣チーム”偉伝或~IDEAL~”の舞台公演としては、過去最大規模の47人のキャストでお贈りします。

これから:二人の“Do It Ourselves”は続く
Q8. これからの展望をお聞かせください。
山切:
新たな事業としては、ステージを有する都内の店舗と提携して、弊社制作のインバウンド向けのショウを、旅行代理店と提携して稼働させるプロジェクト準備中です。独自性を活かして、関係者の皆さんと共に協力して動かして成功させたいです。
アーティストとしてやりたい事だらけで、その活動に時間を割きたいので、業務をAIや外部リソースに任せる仕組みの構築が課題です。演者としてより活発に2人とも動いてみる先に起こる未来を楽しみにしてます。
川渕:
私自身は、常に複数の仕事や表現活動に関わってます。LADY SAMURAIという呼称は剣舞師の活動の中でついたものですが、生き方や姿勢そのものがそう呼ばれるように、感謝を忘れず、一つ一つしっかり向き合って生き尽くしたいです。 Do It Ourselvesの姿勢は情熱そのものです。 表現者としてやりたい事を実現する為に、自分達でコントロールするという基本姿勢を忘れずに、ステージを創り、立ち続けていきます。

今後の予定
<舞台>
川渕かおり作・演出・出演舞台
「最果ての花」
日時:2026年5月21日(木) 〜25日(月)
会場:吉祥寺シアター
https://www.ideal-samurai.net/saihatenohana
<ライブ>
山切修二 講演会+ライブ
日時:2026年7月4日(土)
会場:Electric Cafe
https://www.dio-entertainment.com/yamagirishuji-top
<演出>
山切修二 総合演出&出演
MAIN MATSURI JAPAN FESTIVAL
日時:2026年8月14日(金)〜16日(日)
会場:Busin Park(ドイツ、オッフェンバッハ)
🔹D・I・Oエンターテインメント合同会社
https://www.dio-entertainment.com/
編集後記
今回のインタビューで印象的だったのは、お二人が常にポジティブなモチベーションでピンチをチャンスに変える力を持ち続けていらっしゃることです。それは自分たちのステージに誇りと自信を持ち、剣舞と音楽で自らの強みを表現していくことで、唯一無二のエンターテイメントを日々成長させているのだと感じます。
また、川渕さんは女性としての力強さとしなやかさを体現する存在で、これからの社会を生き抜く女性たちにとってロールモデルになるような存在だとも思いました。
多くの方に、お2人が作るエンターテイメントを見て知っていただきたいです。
ご紹介
Profile
D・I・Oエンターテインメント合同会社
ロックユニットのKAO=S(カオス)の海外展開を機に起業したアーティスト・山切修二&川渕かおり。
二人が運営するD・I・Oエンターテインメント合同会社では、各々の能力を活かし、音楽のみならず、演舞・舞台・ゲームなど多分野で表現や事業を展開。
山切は、国際案件の演出・制作にも携わり、川渕は剣舞師「LADY SAMURAI」としての演舞に加え、『FINAL FANTASY』シリーズや『NieR:Automata』などのモーションアクターを務める他、女優や舞台の作演出家としても活躍の幅を拡げる。
Do It Ourselvesを理念とするセルフマネジメント体制で、アーティストとして国内外で様々なフィールドで表現活動を行なっている。