シフォン専門店として愛され続けて20年。鎌倉しふぉんの秘密とは?


鎌倉しふぉん 店主 青井 聡子 AOI SATOKO

独学でシフォンケーキの研究を重ね、2003年に鎌倉市農協連即売所内にシフォンケーキの専門店「市場のケーキ屋さん 鎌倉しふぉん」をオープン。無着色、無添加にこだわり素材の味を活かすシフォン作りに注力し、「鎌倉らしさを感じさせる商品」としてかまくら推奨品にも認定されました。特に季節を取り入れたメニューが人気で、現在雑誌やテレビなどさまざまなメディアで取り上げられています。今回はそんな鎌倉しふぉん店主青井聡子様からお話を伺いました。

‐まず初めに「鎌倉しふぉん」について簡単にお聞かせください。
2000年にオープンした「Cafe あおい」が「鎌倉しふぉん」の前身になり、当時お店で出していたシフォンケーキが評判になりました。そこからシフォンの研究を独学で重ね、シフォンケーキ専門店として「鎌倉しふぉん」をオープンしました。2024年6月19日で21周年を迎えます。現在フレーバーは30種類以上あり、試作も含めると100種類以上作成しています。一番人気はプレーンシフォンケーキ、その次は紅茶味で、ロイヤルミルクティーとアールグレイの二種類があります。

ベーキングパウダーを使わずに、素材だけで作る。

-試作段階で100種類、お店には30種類以上となるとかなり厳選して販売しているんですね。新商品や試作品のアイディアはどこから生まれるのでしょうか?
普段スーパーに買い物に行き、旬のフルーツやお菓子などを見ていいなと思ったものをすべて試作してみます。シフォンは水分量さえ決まればどんな素材でもできるのですが、やはり合わないものもあります。なのでそれを商品化する基準として、「その素材をシフォンにしてみて、素材単体で食べるよりもおいしくなるか」を設けています。例えばフルーツのラフランスはシフォンにすると味が淡泊すぎて、卵と混ぜると味が消されてしまうんですね。またいちごもシフォンにしようとすると卵の黄色と混ざってしまい色が灰色になっててしまうんです。イチゴの色素が赤いのは外側だけで仲は白いですよね、なので商品化するとなると着色料を使用しないといけません。着色料を入れてまで商品化をしなくて良いかと思い、うちではいちご味を販売しておりません。

-着色料を入れず無添加にこだわっているんですね。
素材の味を味わっていただきたいので、私たちのシフォンもパウンドケーキもベーキングパウダーを入れずに卵の力だけで泡立てて作っています。昔趣味でシフォンを作っていた時、料理本通りにベーキングパウダーを使用していましたが、1缶一度開けてしまうと何年かそのまま使わずに保管してあり、ある時もう古くなってしまったと思い、ベーキングパウダーを入れずに作ってみたんです。するとちゃんと膨らんだんです!通常シフォンにベーキングパウダーを入れると、膨らむのと同時にキメも整い形がきれいになるのですが、ごまかしのふくらみのようで口に入れると空気が抜けてすぐにつぶれてしまうような感覚がするんですよね。ですが、ベーキングパウダーを使わず素材だけで作ると、やわらかいのに弾力があるしっかりとしたシフォンを楽しんでいただけます。

「うちはシフォン屋」だから。

-ベーキングパウダーを使わないことで柔らかい、でもしっかりとした触感のシフォンを楽しめるんですね。是非食べてみたいです。
では次に、今までお店を経営してきて大変だったことをお聞かせください。
よくインタビューで苦労したことを聞かれるんですけど、すぐに忘れちゃうんですよね(笑)。
商売はうまくいくときとうまくいかないときがあると思うんですが、私のお店もメディアの取材があると売り上げが上がって、なくなると下がってという時期があります。売り上げが下がった時、いろいろ周りの方から違うアイディアやシフォンだけじゃない商品も作ってみたらどうかと意見を頂きます。ですが私はやっぱり「うちはシフォン屋だから」という信念があります。違うことを始めていたらシフォンがおろそかになってしまうと思うので、何があってもシフォンで勝負していきたいという思いがあります。どんなにどん底に落ちたとしても今まで上がってきました。「決めたらそれ一本」です。これからも日々変わらない味を提供したいです。
こうして今振り返ってみると、毎日同じことを同じように同じ味でというのが一番難しいことなのかもしれません。

お客さん、スタッフ、みんながおいしいと思えるものを。

-レシピブックの発売やお菓子教室の開催などで青井さまの技術を伝えていく機会が多いですね。
レシピブックもお菓子教室も最初は教えてほしいと言われたのがきっかけで始めました。シフォンは材料も少なく手順も少ないので、逆にごまかしがきかず奥が深いんです。そこで壁にぶつかり、どうしたらいいかわからないという方が多いんです。
生徒さんがお菓子教室に通っておいしいシフォンを完成させることができると、すごくうれしそうなんです。家族や友達に作ったシフォンを食べてもらい「おいしいと喜んでもらえました!」と私に伝えて来てくださるときや生徒さんの笑顔を見た時に、私も一緒にうれしくなります。お菓子教室に参加した方が「私シフォン上手に焼けるのよ」と自慢できることは、一生の財産になるのではないかなと思っていますのでやりがいを感じます。

-生徒さんの笑顔がモチベーションになっているんですね。では、お店を経営していくうえでの原動力はなんでしょうか?
うちのスタッフはオープン当時から一緒に20年以上やってきて私よりも鎌倉しふぉん愛が強いくらいなんです。そんなスタッフに働く場をしっかり提供して、鎌倉しふぉんで働いていることを誇りに思ってもらえるように、鎌倉しふぉんの名を恥じないように、仕事をしていきたいんです。お客さん、スタッフ、そして店主である私のみんながおいしいと思えるものを提供したいという思いが、日々の仕事のモチベーションになっています。おいしいだけを追求するとスタッフの負担になってしまうのでバランスを考えながらお店を経営しています。

-効率や売上だけでなく、スタッフさんも大切にされているんですね。
では最後に今後の展望についてついてお聞かせください。

今あるものの品質を落とさず、これからもおなじ味で商品を提供し続けていきたいです。また現在レシピ本を2冊出しているのですが、3冊目にシフォンロールを題材にした本を今秋出版する予定です。なのでその本をきっかけにシフォンを作ってみたい!と思う方がもっと増えたらいいなと思っています。

編集後記

添加物を加えず素材そのものの味で20年以上シフォン作りを続けてきた鎌倉しふぉん。「うちはシフォン屋である」というブレない軸を持って経営しています。おすすめ商品は1番人気のプレーンのシフォンと、約2週間おきに発売される季節限定シフォンです!素材の味、旬の味を是非楽しんでみてはいかがでしょうか?また、お菓子教室も開催しており本番のシフォン作りを学ぶことができますので是非この機会に足を運んでみてください!

Profile

鎌倉しふぉん 店主

青井 聡子 AOI SATOKO