大阪市東区で昭和31年から印刷業を営むセントウェル印刷株式会社。今回はその代表取締役である中井利夫様にお話を伺いました。地域に根付いて長年印刷業を続けてこれた秘訣や、仕事に対するこだわりを語っていただきました。
ー本日はありがとうございます。まずは中井社長がどのようにして今のお仕事をするようになったか、これまでのご経歴を教えていただけますでしょうか?
中井社長 もともとシャープに勤めていました。同期はみんな本社の部署を希望する中、私は営業を希望していたのですが、私だけ本部の広報部に配属になりまして、その頃は何も知らないのに経団連に行って記者発表をしてこいと言われたり、大変な思いをしましたが、今思えば本当に良い経験をさせてもらいました。そこから家電不況というのが始まって、本部から営業に異動する人事が増えて、ようやく営業の現場に出させてもらえたんです。その頃は秋葉原に行って電卓の店頭販売なんかをしていました。それが面白かったですね。
ー営業のどのあたりが面白いと感じていたのでしょうか?
中井社長 私はどうもオフィスでじっと座っているのが苦手で、それより車に乗ってあっち行ったりこっち行ったりして、人と喋ってそれが仕事になるんだったらそんな楽しいことはないなと思っていました。
ーそこで営業を経験してから家業を継ぐようになったということですね。
中井社長 そうですね、父がこの印刷会社を母と合わせて2〜3人でやっているような状況でした。私にとっては自宅=仕事場だったので、最初は大手で地元から離れられるならどこでもいいと思ってシャープに就職したんですよね。ただ、父と母と弟が家業をやっていて、どうもうまくいっていないようだと分かって、それでも知らん顔して東京で働いていたんですが、やっぱりこれは放っておいたら後悔すると思ったんです。大手でずっと働いていると、そこの働き方に慣れてやめるにやめられなくなる気もしていましたので、3年で切りをつけて実家に戻ろうと。それでダメなら会社を畳んで、またいくらでも再就職すればいいという気持ちで家に戻ったんです。
ー会社はお父様が創業されたと伺っていますが、最初なぜ印刷業を始められたのでしょうか?
中井社長 遡ると、もともとは祖父が明治時代から印刷業をやっていたんです。その頃は結構大きい会社をやっていたんですね。当時は印刷の需要が多くて儲かる仕事だったようです。ただ戦争で全部焼けてしまって。それで父が再興するという思いで印刷会社をまた始めたようです。その後、私が代表になるタイミングで社名変更をしています。私が「中井」なので、中央の「center」と、井戸の「well」でセントウェル(笑)
ー社長の苗字が社名の由来なんですね(笑)。会社を継がれてから苦労されたことはありますか?
中井社長 まあ最初はお金もないし、自分の給料をもらえないから他にバイトしに行ったりしていましたよ。ただ私、営業が好きだったので、徐々に色んなところに顔を出しているうちに少しずつ仕事が増えてきて、バブルのころなんかは一時期ものすごく仕事が増えました。当時の不動産のバブルに乗ったような印刷の仕事がたくさん回ってきて潤ったんですが、それでバブルが崩壊すると不渡手形掴まされたりね(笑)。また苦労するようになりましたね。その頃は、広告代理店と付き合って、そこから仕事をもらっていたんですけど、バブルの教訓としてはとにかく直取引が大事だと思って営業方針を変えたりしました。
マーケティングと中小企業家同友会との出会いが転換点
ーなるほど、そこからターニングポイントみたいなものはあったのでしょうか?
中井社長 1つは「神田昌典」という人の本を読んだことですね。そこには「営業をしないでも人を集める」というようなことが書いてあるのですが、要はマーケティングですね。今まで営業ばかり考えていたので斬新な考えでした。そこから電話帳に広告を出したり、ファックスDMを出したり、色々試行錯誤をして、うまくいくものをどんどん残していくというのをやりました。うちはファックスDMがすごくうまく行ったんですよね。嬉しかったのが、お客様から問い合わせをいただいてオフィスに伺ったら、半年前に送ったDMを壁に貼っていてくれて「今度仕事があったら頼もうと思って貼っておいたんだよ」と言ってもらったり。そうこうしているうちに、今度はインターネットでホームページというものが出てきた。当時、印刷会社でホームページを持っている会社なんて全くなかったので、これも結構当たりました。そこからずっとホームページを運用させてもらっていて、いまはもうこちらから営業するということはほとんどなくて、全部ホームページから問い合わせをいただいてお仕事ができているんです。
もう1つは中小企業家同友会に入ったことですね。取引先からの紹介で入ることになったんですが、もともと勤めていたシャープでは、ダメだったら配置換えして人を入れ替えてということをやっていたので、自然とそういう人の使い方をしてしまっていたんですが、同友会で学んだのは「人を育てることによって、会社を大きくする」ということです。はじめは私も反発していたんですが、だんだん分かってる来るようになると会社組織がうまく回るようになって、そこから経営も安定してきたと実感しています。
ーマーケティングと人材育成で会社が育っていったということですね。今後の会社のビジョンなどはございますか?
中井社長 実は数年前、会社をM&Aで売ろうかと考えたこともあったんです。ですが、大手企業に勤めていた息子がちょっとずつ会社に興味を持ち始めてきて。私としては「苦労するからやめておけ」と言ったんですが、本人の意思が強くて結局3年前から一緒に仕事しているんです。M&Aで売ろうとしていたときは、不採算事業なんかを整理して縮小傾向で考えていたんですが、今は30年40年先のことを見据えて積極的に投資をしていかないといけないと思っています。うちの強みは、デザインから一緒に相談できる印刷会社としてやっていて、最近の印刷だけするような会社さんとは差別化できるポイントです。現在、東京と神戸に支店を出していて、そこからも仕事が少しずつ頂けるようになっています。こういった強みを踏まえて、マーケティングを主体とした印刷業の未来を、息子の手で広げていってもらいたいなと思っています。
ーありがとうございます。最後に、明治時代からご祖父様が創業されて、ずっと地域に根付いてご商売をされていると思いますが、地域との関わりの中で、今後どのように会社を経営してきたいですか?
中井社長 そうですね、やはり大阪で長年やってきていますから、地域のお客様の割合は多いです。これまで顔を合わせて一緒にデザインを作ってやってきたからこそ、うちの会社も成長できたわけですから、地域のお客様には大変感謝しています。私にとって地域との関わりは、同友会を通したものが多いのですが、同友会が活性化して、地域の企業が元気になることにも貢献していきたいですね。また、今はインターネットでのマーケティングが中心ですから、大阪の会社ですけれども、全国的に広げていって、色々なお客様に貢献していくのが大事だと思っています。
編集後記
着実かつ誠実に仕事をこなしながら、新しいマーケティングにも果敢に取り組んで会社を拡大させてきた中井社長。自社で自ら実践してきたマーケティングのノウハウがあるからこそ、お客様の販促ニーズを的確に捉え、有効な販促物の制作をしてこれたのだと感じました。今後、次世代が会社を担うことで、更なる拡大ができそうです。デザインからお任せでチラシなどの相談をしたい方は、ぜひセントウェル印刷にお問い合わせをしてみて下さい。