第5話:【ブライダル業界密着】フォトグラファーの現場──“一度きりの撮影”を成功させる緊張感と工夫(モリノブライズ)

モリノブライズ株式会社
フォトグラファー

楠倉 美希

MIKI KUSUKURA

神奈川県

「カメラマンになるには、まず専門学校で技術を学ばなければいけないのでは」「未経験からいきなり結婚式や前撮りの撮影を任されるなんて、責任が重すぎるのでは」——ウェディングフォトグラファーという仕事に興味を持ちながらも、そんな不安から一歩を踏み出せずにいる方は少なくないのではないでしょうか。今回、横浜のブライダルフォトスタジオで働くカメラマンに密着し、実際の撮影現場と本音を取材させてもらいました。そこから見えてきたのは、経験の有無よりもずっと大切な、ある一つの資質でした。

「お姉さんの前撮り」から始まった、ある1日

取材当日、カメラマンが担当したのは、なんと自身のお姉さんの前撮り撮影でした。もともとお姉さんから「前撮りの撮影がしたい」と相談を受けていたことがきっかけで、「じゃあぜひ私に撮らせてよ」という流れで予約が決まったといいます。撮影場所の相談に乗ったり、この日は和装2着(白無垢と色打掛)での撮影を提案したりと、家族だからこその距離の近さと、プロとしての提案力の両方が垣間見える一幕でした。

身内の撮影を任せてもらえるという事実そのものが、社内での信頼関係の厚さを物語っています。気心の知れた家族の晴れ姿を、自分の腕で残せるというのは、この仕事ならではの特別な喜びと言えるでしえます。

受付からお見送り、編集納品まで。カメラマンの仕事は撮影だけじゃない

ウェディングフォトグラファーの仕事というと、「シャッターを切ること」だけをイメージする方が多いかもしれません。しかし実際の業務は、それよりもずっと幅広いものでした。

お客様が来店してから撮影が終わるまでの接客、撮影後の写真の編集、そして納品までの一連の流れをすべて担当するといいます。さらに通常業務としては、撮影業務に加えて、メール対応や電話対応、撮影で使用した小物の準備や片付けといった裏方の仕事も並行してこなしているそうです。

取材した日は紅葉のシーズンにあたる土日で、周辺は多くの人で賑わっていたといいます。他のお客様が写り込まないタイミングを見計らいながら撮影するため、お客様を待たせてしまう時間も長くなりがちだったそうですが、それでも「秋らしい紅葉の写真をしっかり撮ることができた」と、カメラマンは満足げに振り返っていました。「光がちょうどいいタイミングで差し込んでくれた」という瞬間を捉えられたときの表情には、写真を撮ることそのものへの純粋な楽しさが感じられました。

スタジオ撮影は「決まりがない」からこそ、実力が試される

屋外でのロケーション撮影がある一方で、スタジオでの撮影も日々の業務の大きな柱です。スタジオ撮影について尋ねると、興味深い答えが返ってきました。

「スタジオ撮影は、基本的に特に決まった内容は何もないんです。カメラマン次第、お客様次第というところになります」

納品する枚数は100枚と決まっているものの、そこに至るまでに何カットでも、何パターンでも撮影して構わないといいます。表情重視で撮る一枚、振り向きざまの一瞬を狙う一枚——現場では、カメラマンとお客様が「こっちの方がいいと思う」「これも可愛いよね」と会話を重ねながら、その場で構図やポーズを作り上げていく様子が見られました。

決まったフォーマットがないということは、裏を返せば、カメラマン自身の工夫やセンスがそのまま写真の仕上がりに反映されるということです。

「ブライダルだと、自分の実力が発揮されるじゃないですけど。ただ淡々と撮れば誰でも撮れると思うんですけど、1個の工夫で写真ってぐっと変わってくる。それでお客さんに喜んでもらえたら嬉しいですし、技術を磨いていく部分としても、それがまた面白いなと思います」

お客様自身が「こういう写真が欲しい」という希望を持って来店することも多いといいます。その期待に応えるためには、自分の実力をそのまま見せる必要があり、簡単に妥協はできません。だからこそ、日々の撮影一つひとつが、技術を磨く機会にもなっているのです。

「ミスは許されない仕事」という、静かな覚悟

華やかな撮影の裏側には、カメラマンとしての強い責任感がありました。

「正直、ミスは許されない仕事なんです。自分たちにとっては何度もある撮影かもしれないけど、来てくれるお客様にとっては、一生に一回の撮影になってくるので」

この言葉には、繰り返しのきかない一瞬にシャッターを切る仕事の重みが凝縮されています。着物の乱れなど、お客様が気にする点があれば、それを無視して撮影を進めることは絶対にしない。だからこそ、常に一定の緊張感を持って撮影に臨む必要があるといいます。

技術を磨く楽しさと、一瞬たりとも気を抜けない緊張感。この両方を併せ持ちながら仕事に向き合う姿勢こそが、プロのフォトグラファーとしての誇りなのだと感じさせられる言葉でした。

未経験でもいい。大切なのは「撮りたい」という気持ち

そして今回の取材で、最も印象的だったのがこの言葉です。

「カメラマンだから、カメラを触っていないといけないとか、詳しくないといけないっていうのは、私は全くもっていらないところだと思っていて」

実はこのカメラマン自身、入社してからカメラに触れるようになったといいます。趣味として写真を撮っていたわけでも、専門的な技術を最初から持っていたわけでもない。それでも今、こうして現場に立ち、お客様の特別な一日を任されるまでになっています。

「素直に写真を撮ってみたいとか、撮るのが楽しいとか、お客さんの笑顔を見ることが楽しいとか。何か一つひとつのことに楽しさを見出せる人であれば、技術は後々ついてきますし、教えることもできます。とにかく、お客さんが笑顔になるのを撮るのが好き、見るのが好きっていう方に入ってきてもらえたらいいなと思っています」

この言葉は、ウェディングフォトグラファーという仕事に興味はあるけれど、専門的な技術がないからと諦めかけている人にとって、大きな後押しになるのではないでしょうか。技術は、入社後の実践の中で確実に身についていきます。むしろ大切なのは、その土台となる「撮ることが好き」「人の笑顔を見るのが好き」という、ごくシンプルな気持ちなのです。

現場からの声:指示の分かりやすさが安心につながる

この日撮影を受けたお客様(カメラマンのお姉さん)からも、率直な感想を聞くことができました。

「指示が分かりやすくて、それはすごくありがたかったです。手はあっちに、こっちで、とか、顔はこっちで、とか。いい場所も選んでもらえて、綺麗に撮ってもらえて満足という感じです」

技術的な巧拙以前に、お客様が安心して身を委ねられる「分かりやすい指示」ができるかどうかも、フォトグラファーにとって重要な資質であることがうかがえます。これもまた、専門知識よりも、お客様に寄り添うコミュニケーション力が問われる場面と言えるでしょう。

編集後記

第5話では、フォトグラファーの仕事が、撮影当日の一瞬だけでなく、
場所選び、タイミング判断、編集、納品まで含めた長い工程で成り立っていることが描かれています。

「お客様にとっては一生に一度」という意識を持ち続けることで、
一瞬の表情や空気感を写真として残す責任を果たしています。

まとめ:カメラの前にあるのは、技術よりも人への想い

ウェディングフォトグラファーという仕事は、専門的な技術がなければ務まらない特別な仕事だと思われがちです。しかし今回の取材から見えてきたのは、その前提を覆す現場のリアルでした。カメラの扱いに慣れていなくても、写真を撮ることへの純粋な楽しさと、お客様の笑顔を見たいという気持ちさえあれば、技術は入社後にしっかりと身につけていくことができます。

一方で、ミスの許されない一瞬に向き合う緊張感や、決まった正解のない中で自分なりの工夫を積み重ねていく粘り強さも求められる、決して簡単ではない仕事でもあります。だからこそ、「撮ることが好き」「人の笑顔を見るのが好き」という原点を持ち続けられる人にとっては、これ以上ないやりがいを感じられる仕事なのかもしれません。

カメラに詳しくないから、経験がないからと諦める必要はありません。ウェディングフォトグラファーという仕事の扉は、あなたが思っているよりもずっと開かれています。

本シリーズを通して

本シリーズでは、社長の案内から始まり、社員一人ひとりの仕事に密着しながら、モリノブライズがどのように人生の節目に向き合っているのかを追ってきました。
衣装、ヘアメイク、撮影と役割は異なりますが、共通しているのは「お客様にとっては一生に一度」という意識を持ち、現場での判断や調整を積み重ねている点です。

一つの写真や一日の体験は、個人の技術だけで完成するものではありません。
チームとして関わり続けることで初めて形になっていることが、全5話を通して見えてきました。

モリノブライズは、衣装・美容・撮影を通じて、その瞬間を最後まで責任を持って支える会社だと感じました。

ご紹介

Profile

 楠倉 美希

モリノブライズ株式会社
フォトグラファー

楠倉 美希

MIKI KUSUKURA

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ブライダル撮影を中心にロケーション撮影から編集・納品までを担当。

撮影は「お客様にとっては一生に一度」という意識を大切にし、表情や光、タイミングを見極めながら進めている。

技術だけに頼らず、お客様の希望を汲み取り、安心して撮影に臨んでもらうことを重視している。

「公式サイトはこちら」 モリノブライズへのお問い合わせはこちら

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