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パリミキ流、お金との向き合い方|スイスファミリーオフィスから学んだこと/株式会社パリミキホールディングス・多根幹雄

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眼鏡事業で知られるパリミキホールディングス。その歩みを辿ると、事業の表側とは別に、長く向き合ってきた「お金の運用」というテーマが浮かび上がる。
本対談では、代表取締役会長・多根氏に、香港・スイスでの経験を起点として、金融との距離感、プライベートバンクやファミリーオフィスという考え方に触れてもらった。
語られるのは、利回りや商品論ではない。お金をどう増やすかではなく、どのように運用し、どのように活かすべきか。
その判断の背景にあった問いと経験の積み重ねが、静かに言葉として現れていく。

事業の裏側で続いていた「お金の運用」というテーマ

石塚:
パリミキというと、多くの方はまず眼鏡の会社という印象を持たれると思います。
今日はアセットマネジメントのお話ですが、まずは、こうしたテーマに向き合うようになった背景から伺ってもよいでしょうか。

多根:
そうですね。確かに表から見ると眼鏡の会社です。
ただ、会社としては昔から「時代の変化の中でお客様が何に困り、我々に何が出来るか」を強く意識してきました。
父の代からずっと言われてきたのは、事業そのものよりも、その前提となるお客様の変化をどう読むか、ということでした。

石塚:
その考え方は、入社当初から意識されていたものだったんですか。

多根:
そうです。私が入社した当初は、もちろん店舗に配属されて現場を経験しました。
ただ、会社としては常に「次に何が求められるか」を考えていて、その流れの中で、「お金の運用」というテーマが自然と浮かび上がってきたんです。

現場から始まった経営感覚
──「次の時代」を読むという視点

石塚:
金融との距離が縮まったきっかけとして、香港勤務があったと伺っています。

多根:
はい。今から40年ほど前になりますが、香港に配属されました。
当時すでに香港は金融の拠点で、街全体にそうした空気がありました。
金融センターのビルの一室を借りて、ロイターモニターを置き、資産運用をしていたのを覚えています。

石塚:
当時の経験は、事業資金の扱い方にも影響しましたか。

多根:
そうですね。事業を進める以上、資金は常に動いています。
使うまでの間、どう運用するか。
単に口座に預けておくのか、それとも何らかの形で運用するのか。
その判断が、その後の結果に影響することは、現場にいるとよく分かりました。

石塚:
金融というより、経営判断の一部として向き合っていた感覚でしょうか。

多根:
まさにその通りです。金融というより、「資金管理」の話だったと思います。』

スイスで出会った、もう一つの金融の姿
──投資における情報の価値

石塚:
その後、ヨーロッパ展開の中でスイスに赴任されます。

多根:
はい。ヨーロッパ展開を考える中で、スイスが拠点になりました。
ヨーロッパは眼鏡店が非常に多く、日本と同じように一店舗ずつ出す戦略は現実的ではなかった。
そこで、小規模チェーンへの出資という形を取りました。

石塚:
出資という形になると、資金管理の重要性も変わってきますね。

多根:
その通りです。そこで出会ったのがプライベートバンクでした。
最初は正直、遠い世界だと思っていましたが、付き合ってみると、日本の銀行とは考え方がまったく違うことに気づきました。

石塚:
紹介された12行すべてに口座を開いた、というエピソードがあると伺いましたが。

多根:
ええ。普通は一番条件のいい銀行を選ぶと思いますが、社長は「全部に口座を開け」と言いました。
理由は明確で、「投資で一番大事なのは情報だから」です。

石塚:
実際、情報の入り方は違いましたか。

多根:
そうです。為替に強い人、中国市場に強い人、コモディティに詳しい人、それぞれ違う。
複数の窓口を持つことで、見えてくる世界が大きく変わりました。

ファミリーオフィスという思想
── 資産を守り引き継ぐための仕組み

石塚:
その過程で、ファミリーオフィスという考え方に出会われたということでしょうか?

多根:
はい。スイスで印象的だったのは、プライベートバンクで働く人たちの背景です。
彼ら自身が資産家の家系出身で、自分の家の資産運用を学ぶために銀行で働いているケースが多かった。

石塚:
日本の金融の現場とは、かなり違う風景ですね。

多根:
そうですね。そこで初めて、ファミリーオフィスという存在を知りました。
ファミリーオフィスとは、超富裕層一族の資産管理・運用・活用全般を担うと同時に、ファミリーとしての文化を継承する仕組みです。
ヨーロッパでは自然に根付いています。

石塚:
実際に触れてみて、どの点に特徴を感じましたか。

多根:
増やすためというより、守り、引き継ぎ、活かすための仕組みですね。
世代を超えて資産をどう扱うか。そのための合理的な仕組みだと感じました。

「あなた自身は、どこで運用しているのか?」

石塚:
海外のファンドマネージャーと会う中で、印象に残っているやり取りはありますか?

多根:
はい。投資仲間がファンドマネージャーに対して必ず聞いていた質問があります。

「あなた自身の資産は、どこで運用していますか?」と。

海外では、ほぼ100%「自分のファンドです」という答えでした。
一方、日本に戻って同じ質問をすると、「自分のお金は入れていない」というケースがほぼ100%でした。

石塚:
その差は、かなり印象に残りましたか。

多根:
ええ。眼鏡屋なのに誰も眼鏡をかけていない、車屋なのに誰も車に乗っていない。
その違和感と近い感覚でしたね。

お金から自由になるという発想
──増やす先にある「お金との向き合い方」

石塚:
ここまで伺ってきたお話を踏まえると、多根さんが運用に求めているものは、単にお金を増やすこととは少し違うように感じます。

多根:
そうですね。運用の目的は、単にお金を増やすことではありません。
一番大きいのは、「お金から自由になる」ための運用だと思っています。

石塚:
「お金から自由になる」という言葉は印象的ですが、どういう状態を指しているのでしょうか。

多根:
多くの方は、若い頃からずっとお金の心配をしていますよね。
働いている間もそうですし、年を取ってからは年金の心配もある。
人生のどこかで、常にお金の不安がつきまとっている。

石塚:
確かに、多くの人に共通する感覚だと思います。

多根:
だからこそ、ある程度納得できる資産ができれば、
本来はそこから解放されるはずなんです。
「もう大丈夫だ」と思える状態になる。

石塚:
ところが、現実にはそうならないケースも多いですよね。

多根:
そうなんです。運用がうまくいくと、今度は別の問題が出てきます。
失いたくない、もっと増やしたい、という気持ちが強くなる。
その結果、お金に縛られてしまう人を、私は何人も見てきました。

石塚:
お金が増えたことで、逆に不自由になってしまうということですね。

多根:
はい。本来は自由になるためのはずなのに、いつの間にか、お金そのものが目的になってしまう。
これは非常に怖いことだと思っています。

石塚:
その状態を避けるために、必要な視点は何だと考えていますか。

多根:
一つは、充分なお金ができたときに、それをどう使うかを考えておくことです。
自分や家族に必要な分は当然確保します。
ただ、それ以上の部分をどう社会に還元していくのか。
その発想を、実はお金のない時から持っておくことが大切だと思っています。

石塚:
お金を持ってから考えるのではなく、前から考えておくということですね。

多根:
そうです。そうしておかないと、お金が増えた瞬間に執着が生まれてしまう。
結果的に、せっかく充分なお金があっても、心は自由にならない。

石塚:
お金との距離感をどう保つか、という話でもありますね。

多根:
まさにそうです。
お金の運用というのは、数字の問題だけではなくて、
その人がどう生きたいか、どう社会と関わりたいか、
そういう部分と切り離せないものだと思っています。

儲かるかではなく、意味があるかどうか
──運用の機会という見えにくい格差

石塚:
ここまでのお話を聞いていると、考え方としては一貫している一方で、
実際の選択としては、かなり“常識外れ”に見える部分もあります。

多根:
そうかもしれませんね。
特に「1万円から投資できる」という点は、
海外の仲間からすると、ほとんど理解されませんでした。

石塚:
どんな反応があったのでしょうか。

多根:
はっきり言われましたよ。
「そんなことをして、何の意味があるんだ」
「ビジネスとして成立しないだろう」と。

石塚:
プライベートバンクの世界から見れば、かなり非合理な選択に映りますね。

多根:
そうですね。向こうのプライベートバンクでは、
最低でも数億円、一般的には10億円以上が前提になります。
1万円ずつ集めて運用するなんて、効率が悪すぎると思われても仕方がない。

石塚:
それでも、その形を選んだ。

多根:
はい。理由はシンプルで、本当に必要としている人には、
運用の機会そのものが届いていないと感じていたからです。

石塚:
情報や選択肢の格差、ということですね。

多根:
そうです。
お金を持っている人には、良い話が自然と集まってくる。
でも、そうでない人には、なかなか機会がない。
それは、ずっと現場を見てきて感じていたことでした。

多根:
だから、「儲かるかどうか」より「意味があるかどうか」を基準にしました。
ビジネスとして効率がいいかどうかではなく、
この仕組みが、誰の役に立つのか。
そこを一番大事にしたかった。

石塚:
結果として、それはファミリーオフィスの思想とも重なっていくということですね。

多根:
そう思います。
ファミリーオフィスの本質は、富裕層のための特別な仕組みではなくて、
お金とどう向き合うかという姿勢そのものです。

ファミリーオフィスは特別な人の話ではない
──次の循環を生むために

石塚:
ここまで伺ってきた考え方は、
資産家だけでなく、もっと広い層にも関係する話だと感じます。

多根:
はい。
ファミリーオフィスというと、超富裕層だけの話だと思われがちですが、
本質的な考え方は、一般の家庭にも当てはまります。

石塚:
例えば、どんな点でしょうか。

多根:
まず一つは、優秀な人に分散してお金の運用を任せること。
これは資産の大小に関係なくできます。
それから、お金の話を家族できちんとすること。

石塚:
日本では、家族間でお金の話をする機会は多くないですね。

多根:
そうなんです。お金の話はタブーですからね。
そして最後に、どう活かすのかを話し合うことが、とても大切です。

石塚:
お金が増えた後の話も、あらかじめ共有しておく。

多根:
はい。そうしておかないと、
お金が増えた瞬間に執着が生まれてしまう。
結果的に、お金に縛られる人生になってしまう人を、私は何人も見てきました。

石塚:
最後に、日本の資産家層に対して、期待していることはありますか。

多根:
あります。
日本にも、事業を成功させた方、2代目、3代目として資産を引き継いでいる方は多い。
そうした方々には、ぜひ運用を「任せる側」だけでなく、
「担う側」になってほしいと思っています。

石塚:
その為にもファミリーオフィスのように、自らの資産運用のノウハウを磨いていく必要がありますね。

多根:
そうです。
その自らの資産運用の経験を一般の人たちにも運用会社を作って還元してほしいのです。

そうした循環が生まれれば、日本の金融のあり方も、
少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

編集後記

多根会長の話は、終始、数字や成果の話に大きく寄ることなく進んでいった。
語られていたのは、お金をどう増やしたかではなく、なぜその判断を選んだのか、どの局面で立ち止まり、どのように距離を取ってきたのかという経験の積み重ねだった。

香港やスイスで触れてきた金融の現場は、日本で一般的に想像されるそれとは、少し異なる輪郭を持っている。プライベートバンクやファミリーオフィスという仕組みの背景には、お金を「管理する対象」ではなく、「預かり続けるもの」として扱う姿勢があった。そこでは、運用の巧みさ以上に、判断を引き受ける覚悟が問われているように見えた。

印象的だったのは、「お金から自由になる」という言葉が、理想論として語られていなかった点である。資産が増えた後に、かえって不自由になっていく人の姿を見てきたという実感が、その言葉の背後にあった。増やすことそのものよりも、増えた後にどう振る舞うのか。その問いは、資産の大小を問わず、誰にとっても無関係ではない。

1万円から投資できる仕組みを選んだ理由も、効率や合理性の話ではなかった。運用の機会が届いていない人がいるという現実を前に、何を優先するかを考えた結果として、その選択があった。ファミリーオフィスの思想が、特定の層のためのものではなく、お金との向き合い方そのものを指していることが、そこから見えてくる。

お金は、増やした瞬間に意味を持つわけではない。
どのように預かり、どのように生かし、どこで手放すのか。
その一つひとつの判断が、時間をかけて積み重なっていく。

本稿に残された言葉は、お金とどう向き合うのかという問いを、あらためて読者の前に置いている。

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ご紹介

Profile

多根 幹雄

株式会社パリミキホールディングス
代表取締役会長

多根 幹雄

たね みきお

1959年生まれ。1998年より9年間、スイスにてM&Aとグループ企業の資産運用に従事。帰国後の2013年から12年間、投資運用会社の経営に携わり、顧客との信頼をベースとした本格的な長期投資を推進。旗艦ファンドである「コドモファンド」は「一億人の投信大賞」を3年連続受賞(2016年、2017年 外国株式部門第一位、2018年 国内株式部門第二位)。
2017年より現・株式会社パリミキホールディングスの会長に就任。「トキメキ」と「あんしん」をテーマに、企業の再編と新しい事業展開に取り組んでいる。
また、公益財団法人奥出雲多根自然博物館の理事長として、島根県奥出雲町を中心に「暮らせる博物館」構想を推進中。
著書に『スイス人が教えてくれた「がらくた」ではなく「ヴィンテージ」になれる生き方』(2016年 主婦の友インフォス情報社)、『あいのり投資』(2018年 集英社)がある。

パリミキアセットマネジメント 公式サイト パリミキホールディングス 公式サイト
石塚 直樹

株式会社ウェブリカ
代表取締役

石塚 直樹

いしづか なおき

X(旧:Twitter)

新卒でメガバンクに入社し、国土交通省、投資銀行を経て独立。
腕時計ブランド日本法人の立ち上げを行い、その後当社を創業。
地域経済に当事者意識を持って関わりながら、様々な企業の利益改善や資金調達を、デジタルや金融の知見を持ってサポートしています。

「Shikisai」立ち上げの背景とは? ウェブリカ公式HP

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