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心を映す“鏡”でありたい。訪問とオンラインで広げる心理カウンセリングのかたち / SILIM 代表・横田 純一

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「誰かの心を映す“鏡”でありたい」。兵庫県西宮市を拠点に心理カウンセリングを行う SILIM(シリム)代表・横田 純一 さんは、自身の不登校経験をきっかけに心理学の道へ進みました。大学で福祉と臨床心理を学び、児童福祉の現場で多くの子どもや保護者と関わるなかで、「人が自分を理解する時間の大切さ」を実感。現在は、訪問型オンライン(顔出しなしでも可)という新しいスタイルで、年齢や立場を問わず多くの人々の心に寄り添っています。

今回はナビゲーターの福野理恵が、心理カウンセラーとして活動する横田さんにお話を伺いました。ご自身の経験を出発点に、“話すことで自分を知る”というテーマを追い続ける横田さん。活動の背景にある想いと、カウンセリングを通じて届けたい価値を語っていただきました。

不登校の経験が導いた「心を支える道」

福野:
まず、SILIMの活動について教えてください。

横田:
SILIMでは、心理カウンセリングを中心に、個人・家族・企業など幅広い方のご相談を受けています。「話すことで自分を理解していく」──そんな時間を一緒に作るのが私の役割です。

福野:
“SILIM”という名前には、どんな意味が込められているんですか?

横田:
最後の“M”は、英語の“Mirror(鏡)”から取りました。カウンセリングは、鏡を通して自分の姿を見つめるような行為。その鏡をそっと支える存在でありたいと思い、この名前をつけました。

福野:
カウンセラーを目指したきっかけは?

横田:
私自身、不登校を経験しました。そのとき、自分の気持ちをどう表現していいかわからず、誰にも言えない時間がありました。その経験が、心の仕組みを学びたいという気持ちにつながりました。

学びの中で出会った“チームで支える”という考え方

福野:
大学ではどんなことを学ばれたんですか?

横田:
福祉学と臨床心理学を専攻していました。心理学の技術だけでなく、「人の心とは何か」「支援とはどうあるべきか」を幅広く学びました。中でも印象に残っているのは、“チームで支える”という考え方です。カウンセラーだけでなく、先生や支援員、保護者が連携して一人の子どもを支える。その協力体制があってこそ、心のサポートは成り立つのだと感じました。

カナダ留学で得た「自分の意見を伝える力」

福野:
学生時代には留学もされたとか。

横田:
はい、カナダに語学留学しました。最初は心理学を英語で学ぼうと思っていたのですが、まずは語学力を磨くことに専念しました。現地では、自分の意見を言わないと何も始まらない環境。日本ではあまり発言しなかった自分が、少しずつ変わっていくのを感じました。帰国後、友人から「イエスマンじゃなくなったね」と言われたのを覚えています(笑)。

児童福祉の現場で見つめた“行動の奥の感情”

福野:
卒業後は児童福祉の分野に進まれたそうですね。

横田:
はい。放課後等デイサービスで「心理機能訓練担当職員」として働いていました。心理検査の結果を参考に、保護者や支援員と一緒に子どもの支援方針を考えたり、日々の関わりをサポートしたりしていました。たとえば、怒りを我慢できずに物を投げてしまう子がいたとします。その行動を「ダメ」と叱るのではなく、“どう伝えたかったのか”を一緒に考えるんです。そして、我慢できた瞬間を見逃さずに認めてあげる。そうした積み重ねが、少しずつ信頼につながっていきます。

SILIMの誕生──訪問とオンラインで「話しやすい場」を届ける

福野:
2023年末には独立されました。

横田:
はい。大学時代からの夢を形にしました。ただ、実際にやってみると、やりたいことだけではなく、経営や広報など、考えなければいけないことが本当に多いと実感しました(笑)。

福野:
訪問型のカウンセリングというのは珍しいですね。

横田:
そうですね。カウンセリングルームを持たず、西宮を拠点に兵庫・大阪・京都・滋賀などに伺っています。ご自宅やカフェなど、「その人が一番安心できる場所」でお話をしてもらえるようにしています。また、オンラインでは顔を出さずに受けられる形も取り入れました。「話したいけど勇気が出ない」という方に、少しでも一歩を踏み出してほしいと思っています。

カウンセリングとは「自己理解の時間」。人と社会をつなぐために

福野:
横田さんにとって、カウンセリングとは何でしょうか。

横田:
私にとってカウンセリングは「自己理解の時間」です。話すことで気づきが生まれ、気づくことで自分を受け止められるようになる。その繰り返しが、人が前に進む力になると思っています。また、産業カウンセラーの資格も活かして、企業で働く方の相談も行っています。職場の中にも、安心して話せる場を増やしていきたいですね。

福野:
最後に、ご覧いただいている皆さんへメッセージをお願いします。

横田:
「あなたはひとりじゃない」ということを伝えたいです。苦しいとき、誰かに話すだけで少し心が軽くなることがあります。もししんどいなと思ったら、その気持ちを誰かに預けてみてください。その選択肢のひとつとして、SILIMを思い出してもらえたら嬉しいです。

編集後記

横田さんの話を聞きながら印象に残ったのは、「話すことを通して“自分を知る”時間をつくる」という言葉でした。カウンセリングというと、どこか専門的で敷居が高い印象がありますが、横田さんの話には、人と人が自然に向き合う温かさがあります。

児童福祉で培った「禁止ではなく代替を探す」という考え方も、子どもだけでなく大人にも当てはまるもの。つい感情を押し込めてしまう私たちにとって、“言葉にしていい”と思える時間は、何よりの支えになるのかもしれません。

訪問やオンラインという柔軟な形で、心のケアをもっと身近にしていく。SILIMの取り組みは、これからの社会に必要な“安心できる場所づくり”そのものだと感じます。

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Profile

横田 純一

SILIM
代表

横田 純一

よこた じゅんいち

Instagram X(旧:Twitter)

大学在学中に臨床心理学を専攻し、カナダ・カルガリー大学への語学留学を経験。
心理学的知見を基盤に、多機能型児童通所施設で約5年間勤務し、子どもや保護者への支援に携わる。
これまでに300名以上のSNS相談を担当し、オンライン・オフライン双方でのカウンセリング実績を持ちます。
資格は、産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会)や認定心理士(日本心理学会)をはじめ、チャイルドカウンセラー、二級心理カウンセラー、SNSカウンセラーなど多岐にわたり、幅広い年代・背景の方々に寄り添う専門性を備えています。
プライベートでは海でのアクティビティや登山、カフェ巡り、旅行、料理を楽しみ、自然と人の温かさに触れながら心の豊かさを大切にしています。

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福野 理恵

福野 理恵

ふくの りえ

兵庫県出身。学生時代からDJ、テレビ出演、イベント司会などを経験。神戸大学大学院(美術教育論)修了。
NHKキャスターやFM徳島ラジオDJ、神戸にある国際語学学院の職員を経て2009年渡米。NYで主人と出会って2011年西海岸へ移住し結婚。
De Anza Collegeで映画/テレビの資格を取得後、カリフォルニア州立大学サンノゼ校大学院にてジャーナリズム・マスコミ修士取得。
修了制作のドキュメンタリーはBest Short国際映画祭で優秀賞を受賞。その後は子育て&IT企業で4年ほど働き、現在はラジオと男児2人の子育てに専念。
趣味はハイキング・写真・カフェでお喋り・息子とお菓子作り。

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