「相続って誰に聞いたらいいの?」「税理士に相談ってハードル高そう…」そんな悩みをやさしく解決してくれるのが、税理士・村田累実(むらたるみ)さんによる2つの取り組みです。
「相続まるっとお助け隊」は、突然訪れる相続の不安に、弁護士や司法書士、葬儀社まで含めた横断的サポートで応える総合窓口。
「ちょこっと税理士オンライン」は、副業・フリーランスなどに向けた税務相談のハードルをグッと下げ、必要なときだけ気軽に使える仕組みを提供しています。
両者に共通するのは、“困ったらまずここへ”と頼れる存在でありたいという想い。
「プロに頼るのって高そう」「何から相談すれば…」そんな壁を軽やかに飛び越え、誰でも一歩を踏み出せる仕組みづくりに挑む村田さんの実践と想いを、ぜひお聴きください。
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目次
「相続まるっとお助け隊」とは
村田累実さんは税理士です。税理士事務所としての仕事と並行して、2つのサービスを運営しています。
1つが相続まるっとお助け隊。2022年から、東京の西多摩地域――福生、瑞穂、日の出町、あきる野、青梅、羽村、奥多摩、檜原村あたりで活動しています。
名前の通り、相続が起きて困ったときに「まるっと」お助けするという発想でつくられたものです。
村田さんが繰り返し聞いてきた声は、たいていこれだそうです。
まず何から手をつけたらいいのか分からない。何が問題なのかも分からない。
いざ相続という出来事が起きると、問題は一つではありません。村田さんの表現では「パンドラの箱を開けちゃったみたいな感じで、次から次へと問題が出てくる」。
そして次の壁が来ます。その問題をどの専門家に相談すればいいのか。そもそも専門家をどう探せばいいのか。
だから、何でもいいから困ったことを相談できる総合窓口があって、そこがそれぞれの専門家への架け橋になればいい――そう考えて作られたのがこの仕組みです。
士業だけではないメンバー構成
「お助け隊」のメンバーは、いわゆる士業だけではありません。
- 士業――弁護士、司法書士、税理士、行政書士など
- 葬儀屋
- 遺品整理・引っ越しの片付け
- 空き家の管理
- 不動産、保険
- 思い出ランキング――学生時代の思い出、初めての仕事、挑戦してきたことをランキング形式で書く
- これからやりたいことをやり切るために――紙に書き出し、優先順位をつけ、そのために何をすればいいかまで落とし込む(家族旅行なら、まず家族と予定を合わせる、など)。完了したらスタンプを押す
- 私の宝物――大事にしているもの、もらって嬉しかったもの、誰に使ってもらいたいかを書き出す
どんな相談でも受けられる万全の体制を目指している、というのが村田さんの説明です。
相続は「1年で片付けば早いほう」
この回でいちばん実感を持って語られたのが、相続にかかる時間の話でした。
一度相続が起きると、1年で片付けば早いほう。
理由は、期限と作業量の組み合わせにあります。
まず相続税の申告期限が10か月。それだけで10か月が経ちます。その間にやることは山ほどある。しかも最初の四十九日までは息つく間もないほど忙しい。あっという間に一周忌が来てしまう。
そこで終わりではありません。実家が空き家になった、誰も使わない――となれば、片付けをして売るのか貸すのか、不動産の処分を考えることになる。
結果として2年、3年があっという間に経ってしまう。
そして、それを担うのは相続人の誰かです。普段の仕事や生活がある中で進めなければならないため、精神的にも体力的にも重い。その部分を、解決まで伴走してサポートしたい――というのがこの事業の動機でした。
エンディングノートが書けないのは、当たり前
お助け隊では、オリジナルのハンドブックを作成しています。サブタイトルは「私の未来メッセージノート」。全24ページほどの二部構成です。
ポイントは、村田さんがはっきりこう言っていることです。
これはエンディングノートではありません。
エンディングノート自体は書店にたくさんあり、大きさも文字の濃さもさまざまなので、自分に合うものを選べばいい。ただ、こういう声をよく聞くのだそうです。
書きたいけれど、何から書いていいか分からない。一人じゃ書けない。腰が重い。
村田さんは、それを「そうだと思います」と受け止めます。理由が明快でした。
エンディングノートは自分が亡くなった後のこと。今日も生きているし、明日も来年も再来年も10年後も生きているのに、自分がいなくなった後のことを急に書かなければいけないのは、すごく気が重い。
そこで作られたのが、これまでを振り返り、これからの未来をどう生きるかを整理しながら書くものでした。だから「未来メッセージ」なのです。
前半は書き込み、後半は読み物
前半のがっつり書く部分は、こんな構成です。
3つ目については、パーソナリティが「残された家族の判断材料にもなりますね」と反応していました。村田さんもそれを認めつつ、軸はぶらしません。「家族の人も嬉しい。ですけど、あくまでも自分自身のために書くものですから」。
後半は読み物です。今できることは人それぞれという視点で並べられています。
旅行に行く、お出かけする、友人と会う――といった軽いものから、次の住処を考える、ビデオレターを作る、そしてエンディングノートや遺言書を書く、贈与をする、と徐々に重くなっていく順番です。
この並び順に、村田さんの終活観が表れていました。
いきなり遺言書を書くのが終活ではない。終活とは「この後どう生きるか、その後どうしたいか」だと思っている。
認知症になると「できなくなること」
ハンドブック後半には、後見制度や認知症についての解説も入っています。ここでパーソナリティが驚いていた点が、知っておく価値のある話でした。
認知症の症状として一般に知られているのは、同じものを何度も買ってしまう、迷子になる、使えていた家電の使い方が分からなくなる――といった日常生活の場面です。
しかし、それだけではありません。
認知症になると、家を売ることも、遺言書を書くこともできなくなる。
「法的なところでもできなくなることがあるんですね」というのが、聞き手の率直な反応でした。
贈与契約書・遺言書・遺産分割協議書のサンプル
もう一つ、実務的な工夫が入っています。
「贈与」「相続」という言葉だけでも難しいのに、贈与契約書、遺言書、遺産分割協議書となると、いつ誰が書くものなのか分からない。そこでハンドブックには、この代表的な3つの書式サンプルが載せてあります。
村田さんが例に挙げたのは、よくある相談でした。
「これから毎年100万円を孫にあげていきたい」
この場合、契約書を作ったほうが絶対にいい。理由は「あげたお金だと分かるようにするため」、そしてもらった側も「もらったよ」と意思表示ができるようにするためです。貸したお金ではない、という区別がつく。
サンプルがあるので、専門家に頼んだり検索したりしなくても、その通りに作れば大丈夫だといいます。
「冷蔵庫の横に貼っておいてほしい」
このハンドブックは村田さんが自分で作り、印刷しているもので、西多摩地域の市役所・町役場や社会福祉協議会などに置いてもらっています。ホームページや電話でのリクエストも受け付けているそうです。
そして村田さんには、はっきりした目標があります。
西多摩地域に約11万人いるという65歳以上の方の手元に、届けたい。
相続は、そうそう起こっては困るものです。だからこそ、いざ困ったときにどこに問い合わせていいかも分からないところから始まるのは大変すぎる。
村田さんが想像しているのは、こんな場面でした。
本人が入院して、家族が着替えを取りに家へ行く。そのときに冷蔵庫の横に貼ってあるハンドブックが目に入る。「おばあちゃん、こういうのも考えてたのね」と気づいて、頼ってもらえるかもしれない。
まずは何をするか、ではなく。まずはこれが家にあったらいい。
あわせて、お助け隊の存在を知ってもらうための相続セミナーも西多摩地域を回りながら定期開催しています。収録時点で7回目を迎えており、内容は遺言と遺産分割の話(司法書士)や、身元保証サービス――おひとりさまの方、あるいは家族に頼りたくない方が病院や施設に入るときに保証してくれる人の話――など。
月5,500円、入退会自由の「ちょこっと税理士オンライン」
もう一つの事業がちょこっと税理士オンライン。収録の1年ほど前に始めた会員制サービスです。
狙いは、固定観念を外すことでした。
税理士=顧問契約、というイメージがある。そうではなく、困ったときに気軽に相談してもらえる形にしたい。
会費は月5,500円。しかも入会金なし、入退会自由、休会も再開も自由です。理由は村田さんらしいものでした。
「私、縛りが嫌いなもので」
実際、確定申告の時期だけ利用して、その後は休会している方が多いそうです。相談はZoomが中心で、一度もリアルで会ったことがないまま決算をお手伝いし、決算書を作成するケースもあります。
サービスは税務相談だけではありません。月に一度、1時間のオンラインクラスを開いています。
テーマは、事業をやってみて初めて困ることです。源泉所得税とは何か、納付の時期、年末調整。ある回では事業計画書を自分で作れるようにという内容を扱いました。
その狙いも実利的でした。決算書の仕組みは簡単なので、それを理解して事業計画書が作れれば、いちいち専門家に頼らなくても、融資を受けるときにも補助金をもらうときにも役立つ。
相談できる時間帯も現実に合わせています。フリーランスや個人事業主は日中働いていて、会計業務は夕方以降になる。相続も同じで、普段仕事をしている方が相続に直面する。だから土日も平日の夜も働くことになる、と。
「日中なんて相談できないと思うので、それ以外の時間でも利用してもらえたらいい」
「お金の計算のできない税理士です」
ここまで動き続ける原動力は何か、と問われた村田さんの答えは、あっさりしたものでした。
「わかんない。やってみたいと思ったことをやらないと気が済まない性格なのかもしれない」
相続セミナーは無料です。会場費などはかかっている。「もっとビジネスチックに考えれば」と言いながら、村田さんはこう自嘲していました。
「お金の計算のできない税理士です」
そして、お助け隊が生まれた理由も語られました。村田さんは青梅に移住しています。そこで地域の人たちに触れるなかで考えたことが、そのまま事業になりました。
この地域の人たちのために、私ができることって何かな。
※本記事は、ラジオ番組でお話しいただいた内容をShikisai編集部が記事としてまとめたものです。発言は趣旨を損なわない範囲で整理しています。制度・料金・開催予定は収録時点のものであり、実際のご判断は税理士等の専門家にご相談ください。
ご紹介
Profile
相続まるっとお助け隊
ちょこっと税理士オンライン
総合芸術高等学校音楽科を卒業後、ハンガリー・リスト音楽院に留学。帰国後、都内大手ダイビング会社にて5年間の営業職を経験後、コールセンター事業部の立ち上げに携わり、年間営業成績No.1の実績を残す。 転職後、会計業界に約15年間従事。医療法人、IT関連会社、建設業等100社を超える企業の税務顧問、相続税申告業務を行っている。 趣味は、自転車、登山、剣道、ダイビング、音楽
大学卒業後は東北地方のフジテレビ系列のテレビ局でアナウンサーとしてキャリアをスタート。報道のアナウンサーとしてニュース番組に出演しながら、政治・経済・医療担当の記者業も兼務。ディレクターとして、月に1本7分間の特集も制作。ネタ探し、取材、原稿作成、編集、ナレーション収録など一連の制作業務をこなす。 退社後はフリーアナウンサー、通訳/翻訳として独立。 日経CNBC経済キャスター、ラジオ日本ニュースアナウンサー、プロ野球中継リポーター、スポーツキャスター、NHK WORLD-JAPANで記者兼リポーターなど日本語と英語で主に報道とスポーツの分野で活躍。 2020年からはアナウンサーと並行して、国際機関でのキャリアも築き始める。2020年から2022年までは国連専門機関で国際金融機関でもある「国際農業開発基金」でコミュニケーションコンサルタントとパートナーシップコンサルタントを務めた。2023年に「教育のためのグローバルパートナーシップ」、2024年には世界保健機関に移籍。コミュニケーションスペシャリストとしてさらなるキャリアを積んでいる。

