創業までの経緯を教えてください
もともとは税理士を目指して税理士法人に入り、24年間勤めていました。大学時代から会計を専攻し、税理士試験にも挑戦していたのですが、実際に現場に入ると「利益を出している企業は全体の3割」という現実に直面しました。
残りの7割の経営者が本当に知りたいのは「どうやって売上を伸ばすか」ということ。しかし、税務の勉強だけでは答えられません。そこで、中小企業診断士の資格を取得し、経営コンサルティングを本格的に始めました。
やがて事業承継コンサルティングを行うにあたり、当代だけの対応だけでは本質的な解決にならないと思い、「100年続く企業にしませんか」という提案を行いました。そのために京都の老舗に学ぶ研究会を立ち上げ、活動を始めました。参加者も国内外に広がり、ツアー形式での需要も生まれたことから、独立して株式会社センチュリークリエイティブを設立しました。
経営の中で苦労したことや印象に残っているストーリーを教えてください
事業承継の現場では、親子や兄弟など親族間の関係が複雑で、スムーズに進まないことも多くありました。その間に立って調整するのは大変でしたが、承継が成功したときの達成感は大きかったです。
ただ、そのたびに「次の代でまた同じ問題が起こるのでは」と危機感を覚えました。だからこそ前述の通り「会社自体を100年続く体質に変える必要がある」という発想に至ったのです。
老舗研究会を立ち上げた当初は、一社一社紹介者を通じて老舗の社長を紹介していただき、地道に話を聞きに行きました。時には居留守をつかわれることもあり、一見さんお断りの老舗様との交渉は大変な道のりでしたが、そこから得たネットワークが今の事業の核となっています。

あなたが思う御社事業の魅力を教えてください
2つの柱があります。
ひとつは、中小企業診断士としての経営コンサルティング。経営者のパートナーとして課題を見つけ、解決に伴走するスタイルです。
もうひとつは、京都100年企業研究・ツーリズム事業です。京都の老舗企業を訪問し、経営者の話を直接聞く老舗研究ツーリズムを企画・運営しています。伝統工芸企業のネットワークを活用し、海外展開や販売支援にもつなげています。
この2つを通じて「学び」と「実践」を行き来できるのが、弊社の大きな強みだと思います。

お客様や参加者からはどのような評価をいただいていますか?
経営者の方々からは「自社を長く続けたい」「後継者に学ばせたい」という声を多くいただいています。京都100年企業研究会、老舗研究ツーリズムでは、実際に社長の思いを聞くことで、事業承継や経営に対する考え方が大きく変わったと好評です。
また、伝統工芸の支援活動では、海外のバイヤーや消費者から「本物の背景を知ることで商品の価値が何倍にも感じられる」といった声をいただいています。
御社事業が素晴らしいと思う理由を教えてください
素晴らしいかどうかはお客様が決めることなので私が言うことではありませんが、お客様の声を聴くと、単に経営ノウハウを学べるだけではなく、老舗の知恵を現代にどう活かすかが学べる点とのことです。まさに温故知新の現代版です。
商品の販売にしても、経営者や職人の歴史や哲学を一緒に届けることで価値が高まり、持続可能な仕組みに近づけます。さらに「支援型老舗M&A」という新しい形を通じて、職人技術を未来に残す試みにも挑戦しています。
地域との関わりで意識していることを教えてください
京都100年企業研究会や老舗研究ツーリズムを通じて、地域企業の知恵や魅力を広く伝えることを重視しています。特に伝統工芸の分野では、国内市場が縮小する中で、海外への販路拡大や後継者・職人育成が重要です。
「地域に文化をつくる」という老舗の姿勢に倣い、私自身も地域や社会に貢献できる事業でありたいと考えています。
今後のビジョンを教えてください
今後は次の3つを軸に展開していきます。
- 老舗の学びを国内外に広めること
研究会や老舗研究ツーリズムを通じて、100年企業の知恵を国内外に関わらず、若い経営者や起業家に届けたいです。 - 経営者の伴走支援を深めること
コンサルティングを通じて、中小企業が持続的に成長できるようサポートします。 - 伝統工芸の未来を守ること
海外展開の推進や支援型老舗M&Aによって、技術と文化を次世代につなげたいです。
究極的には「日本の伝統工芸を守りたい」という思いが根底にあります。そのために、老舗の知恵とネットワークを活かしながら、社会に価値を届けていきたいと考えています。