株式会社LDKプロジェクト-生田博之


株式会社LDKプロジェクト 代表取締役 生田博之 IKUTA HIROYUKI

なぜ安定した会社員生活を手放し、独立を選んだのですか?

私はもともと基幹システムの営業をしていました。大手企業に数千万円規模のシステムを導入するような仕事で、やりがいはありましたが、とにかく激務で。働き詰めという環境で、「このまま会社員人生を続けていいのか」と疑問を抱くようになったんです。

そこで副業として不動産投資を始めました。ところが、家賃収入だけでは限界があり、どうしても事業としての面白みを感じられなかった。もっと自分の力で伸ばせる事業はないかと模索していたとき、出会ったのが民泊でした。

最初の民泊はどんな挑戦で、何を学んだのですか?

最初は大阪・西成のワンルームでした。小さな部屋ですが、壁紙を張り替え、家具を配置して整えてみたんです。すると、想像以上に予約が入り、売上が一気に伸びました。デザインや間取りの工夫で収益が倍以上変わることに驚きましたね。

一方で、当時の民泊業界には不正業者も多く、外国人ゲストが「予約したのに泊まれない」と途方に暮れている姿を目にしました。私はその人たちを助けるうちに、「日本の民泊を信頼できる存在にしたい」という気持ちが強くなったんです。結局、10年勤めた会社を辞め、2016年に民泊を本業とする会社を立ち上げました。

利用者に選ばれる宿づくりの秘密は何ですか?

一番大事にしているのは「利用者目線」です。予約を決めるのはトップ写真ですから、まずは写真映えを意識した空間づくりを徹底しています。アクセントクロスや家具の配置、照明の角度まで細かくこだわります。

「利便性」「清潔感」も欠かせません。スマホを充電できるUSBポートを随所に設置したり、小さなお子さんがいても安心できるよう安全カバーを取り入れたり。建材も高級感を演出しながらローコストに抑え、収益性とのバランスを取っています。清掃も自社スタッフで行い、ホテルと同等の衛生基準を保っています。こうした工夫が口コミで広がり、営業活動をしなくても案件をいただけるようになりました。

宿泊施設を「観光の目的地」に変えるにはどうしていますか?

滋賀県大津市や高島市、大阪の千早赤阪村では、一棟貸しの民泊やグランピング施設を展開しています。琵琶湖のそばに建てた施設は、相場を大きく上回る単価と稼働率を実現しました。観光地でなくても、宿泊そのものを目的に人が訪れてくれるんです。

私は「宿泊施設自体を観光にする」ことを意識しています。そこに泊まるために地域を訪れ、結果的に地元の飲食店や体験サービスを利用する。そうやって地域経済に波及効果が広がるのが理想ですね。

IZA 近江舞子

オーバーツーリズムの時代に、どんな未来を描いていますか?

日本はオーバーツーリズムの問題に直面しています。京都や大阪に観光客が集中してしまう。でも私は、宿泊体験を地方に広げることで、その解決につながると思っています。

現在は関西を中心に展開し、京都・奈良・和歌山・三重・淡路島へと広げています。これからは江の島、河口湖、軽井沢など関東エリア、さらに九州や沖縄にも進出を考えています。都市型ブランドとリゾート型ブランドを両輪にして、全国に「泊まること自体が目的地になる宿」を増やしていきたいです。

IZA GLAMPING 千早赤阪村

あなたが本当に実現したい民泊の姿とは何ですか?

私が目指しているのは「民泊のイメージを変えること」です。まだまだ日本では「安いけれど質は低い」という印象が根強い。しかし本来、民泊はもっと安心で、もっと独自の魅力を発揮できるはずなんです。だからこそ、私はデザインや利便性、衛生面に徹底してこだわり、ゲストが「ここに泊まってよかった」と心から思える体験を提供したい。

そのうえで大切にしているのは、宿泊者だけでなく地域の人々も一緒に豊かさを感じられることです。宿に人が集まることで、地元の飲食店や体験サービスが利用され、地域経済が循環していく。そこにこそ民泊の意義があると考えています。

最終的には「この施設に泊まりたいからこの地域へ行く」と言ってもらえるような存在にしたい。宿泊そのものが目的地となり、地域を元気にする。そんな民泊の姿を、日本各地で実現していくことが、私の今も変わらない目標です。

Profile

株式会社LDKプロジェクト 代表取締役

生田博之 IKUTA HIROYUKI