創業or社長就任の経緯を教えてください。
世界で起こる紛争や戦争がなぜなくならないのか?私は学生の時から考えるようになりました。その原因の多くが、人種・国籍・宗教・文化などのアイデンティティの違いから生じるコンフリクト(葛藤・摩擦)であると理解しました。そこで、「違い」を超えた共通のアイデンティティを持つことができるようにファシリテートしたり、共通の課題解決のために協働しながら信頼に基づいた人間関係を築くことが平和構築に役立つと考えました。米国で同じ志を持つ人たちが集まって2009年に設立したのが国際NPOのグローバル・ピース・ファウンデーション(GPF)です。私は世界の20カ国以上の活動をスーパーバイズする上級副会長に就任しました。2012年には日本でも事業を始めることになり、私が代表理事として一般社団法人グローバル・ピース・ファウンデーション・ジャパンを設立しました。
経営の中で苦労したことや嬉しかったことなど、印象に残っているストーリーを教えてください。
文化や言葉の違いがある中でのコミュニケーションは様々な難しさをもたらします。たとえば、フィリピンで国際会議等の準備をしていた時、私のような外国人に対する現地スタッフの対応が、事実とは違う”模範回答”を伝えてくることがよくありました。ですから、本当の課題や実際の実現可能性について見出すためには、信頼関係を築いた人から真実を聞きだす努力が必要でした。あと時間を守る概念が日本人のものとはまるで違うのでメンタル的につらいものがありました。そういう様々な困難を克服して、最終的に成功裡に終えた時には、現地のスタッフやボランティアとともに成功を祝う瞬間が一番嬉しい瞬間です。GPFの活動が展開する国々でそのような経験と人間関係があることが私の人生の宝になっています。
あなたが思う御社の事業の魅力を教えてください。
地域社会や国がかかえている課題の本質を見出して、それを解決するアプローチを提示していることが一番の魅力だと思います。そのアプローチの中心軸になっているのが、すべての人々は、人種、国籍、宗教、文化を超えて一つの家族である、という平和のビジョンです。精神的(スピリチュアル)につながった家族のような人間関係を大切にしています。
御社の事業は周りの方からどのような評価をいただいていますか?
日本では「多文化おもてなしフェスティバル」を2015年から毎年開催していますが、外国にルーツをもつ人たちと実行委員会を作って、毎月企画会議を実施してきました。フィリピン、バングラディシュ、インドネシア、ボリビア、ブラジル等出身の実行委員は、ワンファミリーの文化を経験することができ、その文化を発信し、拡大することができる充実した機会となっていると高い評価を頂いています。
海外の例ですが、米国のGPFが実施している暴力・テロリズム防止のプログラムは米連邦政府の国土安全保障省から資金を頂いています。また、アフリカの活動は、国連開発計画や米国国務省などの資金を受けて運営しています。アジア諸国の活動にも数多くの企業がスポンサーとして高い評価をくださっています。
御社の事業が素晴らしいと思う理由を教えてください。
人が幸福を感じる瞬間は、新しい人との出会いや、豊かな人間関係の中にあります。私たちはその瞬間をたくさん作り出す事業をしているといえます。北朝鮮の人権問題に対する事業など、深刻な課題について取り組むときは困難もありますが、その作業を通して得られる人間関係も貴重な資産となっています。
地域との関わりで意識していることを教えてください。
日本は高齢化と少子化の中で、実際的に外国人の数が増加してきています。大きな工場がある地方の町では、その傾向は特に顕著です。私たちは日本の中で起こっている多文化との共生に対して前向きに取り組んでいかなくてはいけません。アイデンティティの違いに起因するコンフリクトは他国の問題ではなく、日本でも潜在的に抱えている課題であります。私たちが推進しているワンファミリーの文化は、今後より重要な観点になってくると感じています。
今後のビジョンを教えてください。
日本の隣の朝鮮半島は、世界で唯一の分断国家です。同じ民族で同じ言語を使用する人々でありながら、戦後の米ソ冷戦の影響下で南北に分断してしまったのです。南北で一千万人以上の離散家族がいます。この分断の背景に、日本も無関係ではなく、問題解決に重要な役割を担うべきだと思います。日本人は、人と人との絆:和を大切にし、利他的な精神性も高いです。さらに、世界が一家族になる理想に同意する人も多いです。そのような強みを活かして、分断されている隣国が、一つになりたいという夢を実現することを支援できる日本になってほしいと考えています。