有限会社イルフェジュール-宍戸 哉夫


有限会社イルフェジュール 代表取締役 オーナーシェフ 宍戸 哉夫 SHISHIDO CHIKAO

創業or社長就任の経緯を教えてください。

実は、全然パティシエになる気はありませんでした。高校生の時にラグビーをやっていて、スカウトで大学にも入ったので学生時代はラグビーばっかりでした。勉強を全然してこなかったので、普通のサラリーマンになっても得はないだろう…と思い、親がやっていた道の方がいいのかな、くらいな簡単なイメージでパティシエの道に進みました。私は専門学校も出ていないので、4大卒してその後は初めから下働きで現場に入り、最初は銀座、その後2年間は喫茶やサロン、レストランなどで修行しそれから厨房に入りました。

経営の中で苦労したことや嬉しかったことなど、印象に残っているストーリーを教えてください。

支配人をやっていた方が父の知り合いでしたので、幸運にも知り合いづてに働かせていただいていました。4大卒で入っているのは自分くらいなもので、専門学校を卒業した年齢が下の子たちが先輩で…その中敬語使いながら…大変でした…(笑)ただ、完全に実力主義の現場なので、苦労も多かったです。ただ私は今まで体育会系でやってきて、人付き合いは得意だったのでその点についてはシェフから引き上げてもらったり、体育会系のノリで周りとうまくやりながら乗り越えられました。下働きについては2年で合計3年半くらいになります。そこからカリスマシェフと言われる、7人のカリスマのうち1人のシェフの下で3年働き、次のところではシェフになりました。その期間でシェフになるのは、正直、異例の速さだと思います。6年半でシェフになる人はなかなかいませんでした。普通は10年はかかるかなと。100人くらい部下がいる大きいところでところでいきなりシェフをやりました。都内でシェフをやってみて、シェフになれると言うことは一握りなんですが、父から名前を変えて、土地もあるしやってみたらどうだといってもらい、開店する事になりました。スタートしてからは自分のやり方でやりはじめました。ですが元々は父がやっていた洋菓子店なので、父がやっていた頃の顧客と、私自身が培ってきたものは全く違うもので、父が作り上げて来た物を求める声が思ったより多く、苦労しました。思うように売り上げは伸びなかったです。スタートからチョコレートのホールケーキを出していました。カリスマパティシエは「クラシックショコラ、ガトーショコラが私のスペシャリティです。」とよく言うんです。ただうまいと思ったことがなかった、逆にまずいなぁと思っていたんです(笑)そこで”美味しく変えられないかな”と思いました。皆さんココアを普通使うところを、自分なりに考えチョコレートに変えたらすごく美味しくなり、「コレだ!」と思ったんです。それでも初めは思うように売り上げは伸びなかったんです。ちょうどその時期にネット販売の会社から依頼を受けていて、通販用のプリンを作ったり色々している中で、たまたま出会った銀座の宝石会社の人から「うちでも販売して欲しいんだが、御社で作っている商品を一口サイズで売ってくれないか」と依頼を受けたんです、結局、2年かけてやっと完成させました。一口サイズは需要があったのか、百貨店の企画に出て販売したら一日300個くらいずつ売れたんです。ただ、その銀座のお店がEC事業から撤退してしまい、商品だけを引き継ぎました。引き継いでから当初はなかなか売れませんでしたが、バレンタインの2週間前にコックコートを着て試食を店頭で配ってみたら毎日毎日50個、100個、200個と販売数が増えていき、バレンタイン当日には3万個売れました。翌年のバレンタインには6万個売れて…バレンタインヒット商品No.1になりました。そこから一気に転換した、という感じです。今はバレンタインの2週間で14万個売れています。

あなたが思う御社の商品・サービスの魅力を教えてください。

ケーキ屋さんの普通の考え方としては、卵白は泡立てメレンゲにするのが普通なんです。日本のお菓子はふわっと軽くするというセオリーがありますが、それをやると爆発してしまい商品にならなくて…。そこをどうしたらいいか試行錯誤したところ、卵白とチョコレートを乳化する、ということに成功しまして。日経に載った時に某大手に真似されそうになったが、特許を出願し回避しました。

地域との関わりで意識していることを教えてください。

川崎市の広報活動など取り組ませていただいています。それと去年からは地産地消です。川崎市のJAの方々から頂く”柿”、”川崎なし”、”宮前メロン”、などを使ってアイスなどの商品を作っています。こういった取り組みは増やしていきたいです。また、イルフェジュールという看板商品がありまして、、生のオレンジを使うのですが、オレンジの皮を自家製でオレンジピールにし、本来捨ててしまうところも蒸ショコラのオレンジ味として美味しく仕上げています。そういった点でSDGsなども意識しています。あとは包材を去年から有料化しました。有料化するだけだと心苦しいのですが、ケーキを丸から四角に変えました。四角にするだけでデッドスペースが減るので箱使用を30%減らせます。そのことで包材費が半分くらい減りました。

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宍戸 哉夫 SHISHIDO CHIKAO